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始祖鳥のさえずり


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[過去のさえずり(タイトル一覧)]

始祖鳥のさえずり(第一期)▲

#1『我らがビッグ・ファイアのために』 1999年6月6日(日)
#2『きわものメカ強化週間』 1999年6月9日(水)
#3『バットマンフォーエバー』 1999年6月12日(土)
#4『図鑑における絵的真実について』 1999年7月10日(土)
#5『ロード・ファクター』 1999年8月1日(日)
#6『アリューシャンに立つ影』 1999年9月2日(木)
#7『食文化よ、永遠(とわ)に』 1999年9月10日(金)
#8『オナガの謎』 2000年3月27日(月)
#9『もっとも危険な台本』 2000年3月28日(火)
#10『鳥人追求の道』 2000年3月29日(水)
#11『4月12日では遅すぎる』 2000年4月12日(水)
#12『近況』 2000年4月29日(土)
#13『ウグイスの歌』 2000年4月30日(日)
#14『コリバ・ラブラブ団の陰謀』 2000年5月2日(火)
#15『電話プラス1』 2000年5月14日(日)
#16『気象学講座開始』 2000年5月16日(水)
#17『コンコルド飛来』 2000年5月19日(金)
#18『雲高500フィート』 2000年5月21日(日)
#18『野鳥観察とキャラ萌え』 2001年5月30日(日)
#19『鳥類 対 哺乳類(1)』 2001年9月2日(日)
#20『空の安全に』 2001年9月12日(水)
#21『新型機導入』 2001年9月29日(土)


[目次]
『新型機導入』
2001年9月29日執筆

買ってしまいました。


本来11月末までだった日本の仕事の契約期間が3ヶ月伸びて2月末になったこともあり、思いきって買ってしまいました。フロントフォークのインナーチューブの交換などをおこなうため、実際に乗ることにのなるのはNSRを北海道に持っていったあと、つまり来月の8日になりますが、今日購入を
もちろんニュージーランドに持っていきます。飛行学校との往復に使うのが主目的ですが、来年のグレイマウスの公道レースに投入することを企んでいます。
しかし、これで負けたら恥ずかしいかも。(^v^;

Greymouth Motorcycle Street Racing



300km/hメーター付き(^v^;

というわけで、冬になる前の10月6日~8日までの3連休に、NSRを北海道の秘密格納庫に持っていきます。NSRには日本での足として今後も活躍してもらうのですが、しばらくのお別れです。


今乗っているNSR-RL('90式)




[目次]
『空の安全に』
2001年9月12日執筆

WTCとペンタゴンに中型双発旅客機が突入した事件を今朝知りました。
 今回亡くなられた方々の御冥福と、傷を負われたかたの御快復をお祈りします。
 また、今後2度と飛行機がこのようなことに使われることがありませんように、空の安全が保たれますように。

 そして、今回の事件がテロリストを勇気づける結果になりませんように、目的達成のためにテロリズムが効果的であるということを証明する結果にならないように願っています。

2機目が突入する映像を見たところ、突入後に機体が主翼端まで含めてWTCビルに貫入、そのまま建物の内部で爆発しているようです。このことからわかることが2つあります。

(1)大陸を横断できるほどの推進剤(灯油)の爆発力が建物の内部に集中した
(2)機体の持っていたほとんどすべての運動エネルギーがWTCビルの構造に吸収された

 突入時の速度は、見た感じで300ノットくらいでしょうか。(B767の全長は50メートルですから、記録映像を元にすれば、衝突時の速度をかなりの精度で判断できるはずです。)
 おそらくこれより速ければ建物を貫通しますから、衝撃はむしろ少なくなり爆発力も分散します。かといって、これより遅ければ破壊力が落ちることを考えると、突入時の速度が緻密に計算されていたと考えるべきだと思います。

2機目の衝突を後ろから撮影した映像がありましたが、最終的に左に約60度傾いた、もはや旅客機のバンクとは思えない姿勢で、建物の右側に激突しています。
 最初にこの映像を見たときは、この深いバンク角は右に拠りすぎた突入経路を無理に補正した結果ではないかと思いました。しかし、考えてみるとこの姿勢ならば燃料タンクのある主翼が丸ごと建物に入りますし、事実そうなっています。

 舵の効きが鈍く、動力のレスポンスがリニアではないタービン旅客機でこれを意図して行なえるのは、それ相応の訓練を積んだ操縦者ではないかと思います。もし衝突した機体をテロリストが操縦していたとするのなら、この技術を別のなにかに活かすことはできなかったのでしょうか。飛行機をこのようなことに使われるのはつらいです。



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『鳥類 対 哺乳類(1)』
2001年9月2日執筆

お久しぶりです。
 今世紀に入ってから、当生息地は、ZIDNEYさん作の透ける付箋紙『ZMemo』関連を重点として活動してきました。いや、重点というより、それ以外何もやっていなかったと言うほうが正しいです。もうしわけありません。

【やってたこと】
・『Z-Assistant』をはじめとする7種類のアプリケーションの開発とメインテナンス
・ZMemo上で動くサンプルスクリプト『ジェームズ』の作成
・ドキュメントの作成

 しかしアプリケーションは一段落、『ジェームズ』は先行公開の手はずが整いました。というわけで、止まったままになっている、デスクトップアドベンチャー『ひたき』の第1話をなんとかしたいです。

そういうわけでひさしぶりに、始祖鳥生息地らしい話をしたいと思います。
 今日の題目は鳥類と哺乳類の耳の構造についてです。

哺乳類の耳の構造は複雑です。聴覚器と鼓膜をつなぐために、3つの骨を組み合わせています。ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨です。
 ツチ骨とキヌタ骨は拳銃のトリガー部品のような形状で、アブミ骨は――ノート型PCのキーボードのキートップを外すとパンタグラフ風の部品があらわれますが、ちょうどあのような形です。これらの3つが組み合わさって、要はてこの原理で、ヒトの場合、中域で最大1.3倍に感度をあげることに成功しているとのことです。

 これに対して鳥類はどうでしょうか。鳥類の聴覚器と鼓膜は1個の骨(耳小柱)でつながっているだけで、ハードウェアとしてみる限り、実際、両生類の耳とたいして違うようには見えません。耳小柱についた筋肉で感度を調節する(弱める)ことができること程度です。(※1)
 しかし鳥類の聴力が哺乳類に劣るかと言えばそんなことはなく、匹敵さえします。それに、音によるコミュニケーションを重視しているのはむしろ鳥類のほうです。
 では、複雑な哺乳類方式にいったいどんなメリットがあるのでしょうか。

それは、可聴域の広さです。

さえずり鳴く鳥の可聴域はおよそ 500Hz~6kHz
ヒトの場合が 50Hz~20KHz

 コウモリの耳に至っては100kHzを超える超音波を捉えることができますが、これについても基本構造は他の哺乳類と一緒で、特別な機構がついているわけではないことを思うと、哺乳類型の耳の構造には高い潜在能力があることは間違いありません。(※1)

しかし、聴覚それ自体をうまく運用しているのは、コウモリやクジラなどの特殊な例を除けば(※3)、一般的には哺乳類よりも鳥類のような気がします。
鳥は音域の狭い歌手(1KHz以下の声では鳴かないので低域は必要ない)なので、聞き取れる帯域もそれで不自由はないといえばたしかにその通りなのですが、音を使って複雑なコミュニケーションをおこなう鳴禽よりも、哺乳類のほうが複雑な聴覚器を持っているのはどうも気に入りません。(笑)
 鳥類びいきが過ぎるでしょうか。

【注釈】
※1 耳の構造の複雑さとさえずりの多様性の関係
 テレビ放送の恐竜特集で『恐竜は耳の構造が哺乳類よりも単純なので、声で相手を威嚇したり、複雑な鳴きかたをすることはなかっただろう』という発言をした、古脊椎動物を専門とされている著名な古生物学者さんがいました。
 この主張に沿うのならば、『耳の構造が単純』な現生の鳥は決してさえずってはいけないことになります。(^^;

※2 マルチリンク
 哺乳類の3つの耳骨の連鎖は、単車のマルチリンクサスペンションを思わせます。プロリンクとかフルフローターとユニトラックとかモノクロスと呼ばれていたこれらのサスペンションが、幅広い速度域における路面への高い追従性でライダーを魅了したようなものでしょうか。例えがアレですが。

※3 MPEG Layer-3 for BIRDS
 鳥向けのデジタル音声データがあるとすると、周波数帯域が狭くても良いので圧縮率を高くとれるはずです。

※4 反響定位
 実は例外があって、鳥の中にも反響定位で飛行可能な種類がいます。これがヒマラヤアナツバメ(Collocalia brevirostris)で、真っ暗闇の中でもエコーロケーションで飛行可能なのだそうです。




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『野鳥観察とキャラ萌え』
2001年5月30日執筆

挑発されています。

 悔しいので更新。(笑)

今日の発見:趣味の自然観察とキャラ萌えは、密接な相関関係にある。
 わたしはキャラ萌えで作品を楽しむ傾向があります。それゆえ冒険小説ではジャック・ヒギンズの作品が大好きです。キャラクターが魅力的に描けていれば、多少物語そのものや世界観が破綻していても文句は言いません。
 これはわたしだけの特性といえばそうでもないらしい。わたしの周りの鳥好き達を見るかぎり、キャラクターを通して物語を楽しむ読書傾向を持っているようです。
 あるいは、

 鳥見を楽しめるひと≒対象に感情移入して世界をとらえるひと

 という式が成り立つのではないかしらと思う今日この頃。



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『雲高500フィート』
2000年5月21日執筆

朝起きて外を見た瞬間、泣きそうになりました。
 空は低い雲でびっしりと覆われ、雨が降っています。
 じつは今日、飛行時間確保と個人的楽しみを兼ねたクロスカントリー飛行を計画していたのです。カイコウラまで飛んで、休息中のマッコウクジラを空中から からかったあと(嘘です。そんなことはしません。(^^;)そのまま山脈を超えて西海岸に飛行してタズマン海を一望し、そのままクライストチャーチに戻るという計画でした。せっかくの休日を楽しみにしていたのに、機内で食べようと弁当まで買って置いたのに、あんまりです。

なかばあきらめつつ、とりあえず空港に向かいました。  飛行学校の無線機をオンにしてみます。ATISは雲高500ft-1500ftと言っていました。普通だったら飛べない天候です。パッセンジャー(旅客)として乗ってもらう予定だった校長にその旨をつたえたところ、予想外の返事が返ってきました。
 『――いや、飛ぼう。』
 驚愕するわたし。
 西海岸は絶望的だがカイコウラならいけるかもしれない、そろそろわたしも悪条件下でのクロスカントリーを経験しておくべきである、というのが校長の言でした。
 言われてみれば、たしかにそのとおりです。教官を別にすれば、現役のベテラン商業用パイロットが横に乗っていてくれるチャンスというのもなかなかありません。
 飛ぶことにしたわたしは、飛行計画の計算を終え、旅客として校長を乗せてクライストチャーチ国際空港を離陸、北に針路を取りました。

雲より低く飛ぶため、高度500ft(約150メートル)で北に向かいます。これは飛行機の飛ぶ高度というよりは、鳥が飛ぶ高度です。低空飛行訓練をのぞけば、こんなに低く飛んだことはありません。ときどき下方向にせりだしている雲をよけながら、迷路をくぐるように飛びました。
 北に向かうにつれてだんだん雲が低くなり、地面がせりあがってきます。ワイパラ北東3マイルの峠道上空で飛行続行は不可能と判断、来た道をそのままひきかえすことにしました。
 帰り道の途中、ランギオラ飛行場でタッチ・アンド・ゴーの訓練をおこないます。雲と霧のために、いつものようなリファレンスがとれないので、フレアをかける高度の判断がうまくいきません。3回サーキットしたあと、クライストチャーチ国際空港に戻ることにします。

 ランギオラ飛行場3マイル南の地点でタワーにクリアランスを要求したところ、Special VFRのオーダーが出ました。地平線も水平線も山並みも見えないので、水平飛行を保つのに神経をつかいます。

空港まで3マイルの地点に達したとき、タワーから滑走路が見えるかどうか確認されました。真っ白でほとんどなにも見えません。かろうじてTバージスのライトが見える程度でした。そう伝えると、ファイナル・レグからランウェイ11への着陸許可が出ました。追い風で着陸せよという指示を聞いたのは初めてです。わたしが滑走路を見失うことを心配してくれたのでしょうか。タワーの指示にしたがい、西風の吹くなか、ランウェイ11に追い風で着陸しました。
 いままでに220時間飛んでいますが、実際にSVFR(Special VFR)で飛んだのは今回がはじめての経験です。
 今日の飛行はとても良い経験でしたが、すこし疲れました。(^^;

これで週末も終わり、明日は気象学の小テストです。これから勉強します。



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『コンコルド飛来』
2000年5月19日執筆

コンコルドはマッハ2.2で巡航する。定期航空路に就航している民間機のなかでは最高のものである。隔絶しているといったほうが正しい。もちろんジェット戦闘機のなかにはこれより速く飛べるものもあるが、それらは通常は亜音速で巡航するものだ。超音速で飛ぶのはごく短時間に限られる。だが、コンコルドは違う。数時間に渡ってマッハ2.2を維持したまま巡航できるのだ。その違いはたいへんに大きい。
 わたしがなぜこんなことを書いているのか、それには理由がある。

 それがクライストチャーチ空港に飛来したのだ。

それは午後3時の少し前、気象学の講義時間であった。コンコルド飛来の知らせに講義はそこで中断され、講師も学生も一列にベランダに並んだ。このあたりはいかにも航空学校らしい。残念なことにデジタル・エイトは持って来ていなかった。こういう社交場にはちょいと大きすぎるのだ。
 クラスメートが空の一点を指差した。眼をこらす。ベース・レグからファイナル・レグに入るあたりに、機影が見えた。はじめは点にしか見えなかったそれは不自然なほどの速度で大きくなり、すぐにはっきりとその姿を見て取ることができるまでになった。

 それがコンコルドであった。


コンコルドは鼻先を前方に折り曲げた状態で、デルタ翼機特有のとんでもない迎え角で接地、スラスト・リバーサーを効かせる。轟音がひびきわたった。
 怪鳥は3分の2を越したあたりでゆっくりとした動きとなり、そのまま滑るようにターミナルへと向きを変えた。



 明治時代の日本人には蒸気機関車を神とあがめた人々がいたという。5分前ならわたしはこれを笑ったかもしれないが、今はかれらの気持ちが理解できる。
 もはやこれはわたしが知っている『飛行機』ではない。未来からやってきた別世界の乗り物である。宇宙からきた謎の飛行物体か、口から超音波と称するドーナツ状の光線を発射する怪鳥か、とにかくそういった分類に属するものなのだ。

 コンコルドは、禍々しくも美しい。


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『気象学講座開始』
2000年5月17日執筆

昨日から『鳥の穴』の『気象学』の講義が始まりました。まだ2日目ということで基礎的な知識の段階なので、今のところはなんとかついていけています。さきほど今日の分の宿題を終え、この日記を書いているところです。

スーパーマーケットで買い物をしていたところ、ジャガイモが10キログラムで2ドル49セント(NZ$1≒53円)で売られているのを発見、買ってしまいました。当分のあいだは夕食は毎日マッシュドポテトと肉類(ソーセージ、ラムステーキ)という組み合わせになることは間違いありません。
 マッシュド・ポテトは作りおきができるうえに、材料も安く(ニュージーランドでは牛乳とバターは安価です)、なによりも後片付けの手間が少なくて済む点がお気に入りです。
 朝食はといえば、いつもロールド・オッツに干しぶどうをのせ、牛乳をかけて食べています。火を使わずにすみますし、ものの数秒でできあがりますし、安価ですし、食器は皿一枚洗うだけで済みます。(^-^)

 わたしは毎日同じものを食べていても平気ですし、食事ごときに手間と時間をかけたくないというのが基本的な考え方なのです。

一歩さん日記からの話題です。

 惑星『日記共同体』の自転周期は24時間だったとは知りませんでした。しかし、出発時刻に遅れてしまっても結局車掌さんは待っていてくれるというのがあの作品のお約束ですから、1週間程度は許容範囲でしょう。

 なんと、一歩さんはペルソナ『ムンドゥムグ・コリバ』の一般公開をご所望ですか。ンガイの導きのもとに真のキクユ族への道を着々と歩まれているようで、わたしは大変満足しています。
 しかし、残念なことにコリバはアハメドとともにマルサビット山に旅立ってしまったようなので、現在別のペルソナを開発中です。もっとも、これは方向性としてお笑い冒険活劇を目指すものなので、これ以上なく真剣につくった『ムンドゥムグ・コリバ』とは製作コンセプトが違います。



[目次]
『電話プラス1』
2000年5月14日執筆

火曜日に受けた2教科の試験についてAviation Services Limitedのウェブサイトで結果を調べたところ、両方とも不合格でした。
 弁解したい点もないわけではないのですが、結局はわたしの不勉強ゆえの結果です。難しいといわれている航空力学と航空工学に合格したことで天狗になっていたわたしには、たいへんいい薬だと思っています。もし今回合格していたら『こういうものか』と思ってしまい、いずれは痛い目にあっていたでしょう。
 明後日から『鳥の穴』の第二期が始まります。今度は気象学です。PPLのときよりもはるかに専門的な講義についていけるかどうか不安ですが、ドロップアウトしないように頑張ります。予習・復習をしっかりしなければなりませんね。(^^;

先の5月12日に、当地のトップページカウンタが10000の大台に到達しました。
 9999カウントの佐渡屋さん、10000カウントの楡岡 輝山さん、ご報告をいただきありがとうございます。楡岡 輝山さんには画面のハードコピーもいただきました。これについても、たいへん感謝しています。


 先月11日に『Yahoo! JAPAN』地球科学ディレクトリで紹介していただいて以来、カウンタの回転が早くなっていますが、この原因は、『Yahoo! JAPAN』からのお客さんが、かならずトップページを経由してくれるためでしょうね。
 でも、日記や掲示板など、当地の特定の記事だけにリンクして読んでいただけるのも、もちろん嬉しいです。

 日頃より当地をご愛顧くださっている読者のみなさま、今後とも『始祖鳥生息地』を、どうぞよろしくおねがいします。

どうやら現在、掲示板のサーバーがダウンしているようですね。わたしの最後の発言までは過去ログに退避しましたので、復旧まではこちらをご覧ください。

昼食をとっている間に、わたしの留守電にメッセージが入っていた。聞いてみる。感嘆符や間投詞が2、3秒つづいて、電話は切れていた。

 わたしは首をかしげた。日本人女性であることは判断できたが、わたしにわかったのはそれだけであった。質がいいとはいえないわたしの携帯の音声では、個人の判別どころか、若いのか年配なのかもわからない。いや、もうひとつわかっていることがある。ダイアル元が表示されないところを見ると、海外――おそらく日本――からかかってきたのであろう。もしかすると、日本語を予想していたところに英語のアナウンスが流れてきたことで面食らい、あわてて電話を切ったのであろうか。確かにここはニュージーランド、留守番電話の標準設定のアナウンスは英語なのである。

 ここで読者諸氏は、なぜわたしが留守番アナウンスを標準設定のままにしているのかと怪訝に思われるかもしれない。自分自身で英語と日本語の両方で録音しなおせば、それで済むことだと。

 しかし弁解させて頂けば、わたしは以前から、留守電のアナウンスを自分で録音するということに抵抗を感じる性癖をもっている。もしもわたしが若山弦蔵のようなしぶい美声の持ち主であったならばよろこんで録音するのだが、実際のわたしの声は、どちらかというとドナルドダックやクマのプーさんに近い種類のものなのである。たいへんに格好わるい。いっそ開き直って得意のルパン3世のものまねをするのも悪くないかもしれない。しかしながら、わたしあての電話の9割5分は英語でかかってくるのだ。ニュージーランド人にルパン3世のものまねは通じまい。結局、わたしの留守番電話アナウンスは標準状態のままとなる。

 話がそれてしまった。つまり、日本語を予想していたところに英語のアナウンスが流れてきたことで面食らい、あわてて電話を切ったのではないかという仮説が有力であろうというところまで話が進んでいたのであった。
 しかし、すくなくともわたしの知人には英語の留守電アナウンスをきいて動揺するような日本人女性はいない。だいたいそういう人は、そもそも国際電話などかけないだろう。
 もしや実家の母からの緊急の連絡ではなかろうかと思い、電話をかけてみる。違っていた。よく考えたら母の場合は、自分で電話をかけてくることはありえない。必要があれば妹にかけさせるに違いないのだ。

 いったいだれが電話をかけてきたのか、ついにそれは謎のままであった。時計を見た。真夜中を14時間30分過ぎていた。前面の山道は果てしない暗いトンネルのようであった。

(完)



[目次]
『コリバ・ラブラブ団の陰謀』
2000年5月2日執筆

楡岡輝山さんの4月25日の日記からの話題です。
 『今の人類が出会う別の惑星文明』の可能性については、その確率を求める計算式を、カール・セーガンの著作でわたしは見たような気がします。『銀河系にある星の数』や『文明の継続期間』などのパラメータをかけ合わせていくもので、思いのほかシンプルな公式でした。
 『別々の生命がそれぞれの文明の発展期に出会う可能性』は興味深いです。
 可能性のありそうな動物を候補としてあげると、類人猿、ハクジラ類、カラス、番外として頭足類あたりが筆頭にあがるのでしょうか。
 わたしはこのなかで文明化する可能性がもっとも高いのは、カラスではないかと思っています。ニューカレドニアのカラスの道具作成能力は、旧石器時代のヒトに匹敵するという報告もありますし、文明化のファクターとして道具の加工・利用を重視するなら、カラスが一番ではないかと思います。
 しかし、文明化には相互コミュニケート手段がもっとも重要だと考えるのならハクジラ類、自己認識能力に着目するのなら類人猿(類人猿は鏡に映った自分自身をそれと認識できる点でそれ以外のサルと異なる)が筆頭にあがりますから、ものさしのあてかたで結果がまるで変わってしまいます。(^^;

一歩さんの4月23日の日記で話題となっていた『ペルソナ』を試してみました。
 なるほど、彼のいうとおりのソフトです。(^-^) わたしがこういうものを見て、思うことはひとつしかありません。
 さっそく開発キット(PDK)をダウンロードし、第1作『ムンドゥムグ・コリバ』(※1)(※2)を完成させ、一歩さんのところにメール添付で送りました。これはきっと彼ならば洒落を理解してくれるのではないかと思ったからであり、決して反コリバ派の同氏をペルソナによって懐柔し骨抜きにせんとするコリバ・ラブラブ団の陰謀ではありません。

さて、『ムンドゥムグ・コリバ』開発の過程で、『ペルソナ』にはなにができて、なにができないかが、おおむねわかってきました。
 まずは、わたしが興味深いと思った点です。

(1)ファイルの配信に使える
 ペルソナは、配信定義ファイル『index.fet』によって配信するファイルを定義しています。要は、『index.fet』にファイル名が書かれてさえいれば、ペルソナ自体の構成ファイルでないファイルでも、ユーザのもとに配信されるということでもあります。
 さらに注目すべき点は、ペルソナ自身が『どこまで送ったか』を覚えている点です。これは、プログラムや辞書、データベースのような『積み重ね的』性質を持つファイルの配信をおこなう場合には特に重要です。このようなケースならば、差分だけを送ればいいわけですから、ネットワーク・トラフィックの点で非常に効率が良いのです。
 また、項目(3)の機能と組み合わせれば、解凍ファイルの入手先など、配信したファイルについて必要な情報を有機的に取得するための一助にもなるかもしれません。
(2)マルチメディアファイルを実行できる
 ペルソナの作成言語は、WAV, MID, AVI, MOV を実行する関数を持っています。前項(1)と組み合わせることで、これらのマルチメディアファイルを各ユーザに配信するためのシステムとして使える可能性があります。
(3)クリッカブルURLを使用できる
 ネットサーファー向けの動的ブックマークとして可能性を秘めているかもしれません。内容が自動で更新されますし、ペルソナの選択メニューをうまく利用すれば階層化による絞りこみも可能ですから、ホームページ紹介型のメールマガジン以上に有効なブックマークになりえるはずです。
(4)ブラウザを直接開くことができる
 つまり、検索エンジンを固定キーワードで開き、情報を探す手助けをするということも可能です。
 また、前項(1)の機能によってHTMLファイルを配信し、ブラウザ経由でローカルHTML内のJavaスクリプトを実行することもできます。HTMLには文字入力ボックスなどのオブジェクト類も用意されていますし、Javaスクリプトは浮動小数点演算も可能な多機能言語ですから、使いかたしだいでかなり複雑なことができるようになるでしょう。
 わたしが特に興味をひかれているのは(1)と(4)を組み合わせた場合です。(3)の機能もなかなかおもしろいですね。これらをうまく利用すれば、今までにないような種類のペルソナを作ることができそうです。

 つぎに、残念に思った点です。

(1)言語仕様としてディレクトリを取得する関数を持たない
 わたしがもっとも残念に思っているのがこの点です。
 『pelsona.exe』のディレクトリが取得できれば、ローカル『DAT』ディレクトリ内のHTMLを自動起動できることになり、ブラウザのJavaScriptを使った高度な処理も可能になるのですが、現状ではユーザにPathを入力してもらうほかにありません。
(2)台詞に対して『コピー(C)』が働かない
 WINDOW上に表示されるテキストデータでありながら画面ハードコピー以外の方法で記録をとれないという点は理不尽に感じます。
(3)言語仕様として整数しか扱えない
 C言語でいうところの符号付長整数型のみです。このため、おこなえる計算は四則演算と論理演算に限定され、小数点を含む計算は何らかの特別な仕掛けを使わない限りおこなえません。平方根や対数、eやπなどを使えないのは痛いところです。
(4)言語仕様として文字入力ボックスを持たない
 文字入力ボックスを持たないため、何らかの文字入力が必要な場合は『ユーザ登録情報ダイアログ』で代用しなければなりません。
 また、言語仕様としてキャラクターコード取得関数を持っていないのも残念な点です。『スクリーンセーバーを起動する関数』や『壁紙を設定する関数』が存在するのに、こういう基本的な関数がないことには疑問があります。
 つまり、『メールの代筆をしてくれるペルソナ』や『単位の換算をしてくれるペルソナ』は単体では難しいということですね。(^^;

しまった、一歩さんの『ハード生物SF』に言及せずに終わってしまいました。

【注釈】
※1 コリバ
 キクユ族のためのユートピア小惑星、『キリンヤガ』の祈祷師(ムンドゥムグ)で、楽園の理念を守らんとする正義の老人です。(笑)
 詳しくは『キリンヤガ』(マイク・レズニック 内田昌之訳 ハヤカワ文庫)をお読みください。

※2 ペルソナ『ムンドゥムグ・コリバ』
 いくつかの理由により、このペルソナを一般公開する予定はありません。そんなかたがいるのかどうかはわかりませんが、どうしてもこのペルソナに興味があるというかたは、掲示板かメールで連絡をいただければ善処いたします。



[目次]
『ウグイスの歌』
2000年4月30日執筆

クライストチャーチでは落ち葉がめだつようになってきました。昼間は汗ばむほどの陽気なのであまり実感はありませんが、やはり秋はところどころにその姿をみせています。
 NZが秋ということは、日本は春なのでしょうね。
 数年前の日本の春、わたしが電車通勤をしていたころ、家から駅の途中の道に、いつも歌っている若いウグイスがいました。
 はじめの頃のかれの歌はあまり誉められたものではなく、さえずりというよりは、ぐぜり鳴きに近いものだったため、わたしはかれを『グーゼリアン将軍』と呼んでいたのですが、しかしそのウグイスの歌は、日を追うごとに上達していき、シーズンの終わりころには、かれは見違えるほど達者な歌い手になっていました。
 かれは今でも元気に歌っているのでしょうか。

鳥がさえずりを覚えるプロセスは、ヒトが言語を習得する過程と大変よく似ていることが知られています。幼鳥は、はじめは『ぐぜり鳴き』というさえずりの真似ごとをし、成長するにしたがって正しい鳴き方でさえずるようになります。  また、耳が聞こえない鳥は正しくさえずることができませんし、鳥がさえずっているときに音を撹乱すると、鳴き方がしだいに不正確になっていくことも知られています。  このことは、鳥のさえずりは生得的なものに大きく影響されるものの、学習やフィードバックに依存するところが大きいということを示すもので、鳥のさえずりはこの点でもヒトの言語とよく似ています。

 同様の研究として、自分たちのさえずりと他の鳥のそれを同時に聞かせて鳥を育てると、それがどんなに近いさえずりであったとしても、鳥は本来のさえずりを覚えるという研究結果があります。ただ、他の鳥のさえずりだけを聞かせて育てた場合、その鳥の鳴き方は他の鳥のものに似てくるようです。

これを読んでふと思ったことがあります。
 ヒトはまわりで話されている言語を習得しますし、誰もそれを疑問には感じないはずです。しかし、もしかするとヒトには生得的なレベルで『本来のさえずりかた=ほんとうの言語』が存在するのかもしれません。この『ほんとうの言語』を使うことで、ヒトの思考能力が倍増したりするとSF的に面白いですね。(※1)

楡岡輝山さん4月25日の日記で話題になっている『別々の生命がそれぞれの文明の発展期に出会う可能性』と、一歩さん4月29日の日記の『ハード生物SF』には話題として興味をひかれています。

【注釈】
※1 言語テーマSF
 こういうテーマのSFを以前呼んだ記憶があります。たしか『バベル17』だったと思うのですが、記憶があいまいです。ごめんなさい。



[目次]
『近況』
2000年4月29日執筆

先週、学科試験の結果が来ました。
 受験した3教科のうち、航空工学(technical knowledge)が合格、航法(navigation)と航空法規(Air law)が不合格でした。あと4教科です。

 航法はかなり早い段階で航法計算を間違えていたため、以降の計算問題がほぼ全滅していました。これが実際の飛行だったら、かなり危険だったかも。(^^; でもどこで計算を間違えたかはわかっているので、航法はもう一度の受験でなんとかなりそうですが、問題は航空法規です。
 航空力学(Principle of flight and aircraft performance)や航空工学(General aircraft technical knowledge)などの理学・工学系の教科については、図面や数式を見ることでおおむね理解できるのですが、航空法規だけは、英文で書かれた法規をしっかり読まないことには理解できません。いや、たとえ日本語で書かれていたとしても、これを最初から最後まで読むのは遠慮したいです。(^^;

 とにかく苦手なことは早めにカタをつけようと思い、航法と航空法規は受けなおすことにしました。もし申し込みの締め切りが間に合えば、試験は来週の火曜日、5月9日です。
 勉強しなきゃ。

わたしがCPL(事業用飛行士免許)の受験資格を得るためには、あと40時間の単独飛行経験が必要です。
 ここのところ毎日操縦桿を握っているのですが、一日1時間乗ったとしても、40日はかかる計算です。飛行に適した条件が40日も続くことはありえませんし、5月16日から『鳥の穴』の第2期が始まってしまうと、またしばらく操縦桿を握る余裕がなくなってしまいます。
 『鳥の穴』第2期の開始前までに、なんとか飛行時間を稼ぎたいということで、クロスカントリー飛行を計画中です。ワナカあたりに飛んで戻ってくれば、一気に3時間を稼げる計算なので、天候が良いときをねらって実行に移したいと思っています。

【注釈】
※1 鳥の穴
 IAANZ(International Aviation Academy of New Zealand)の学科コースです。(^^;
 次回は気象学(Meteorology)を受講する予定です。



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『キーワード』
2000年4月25日執筆

先日、わたしは検索エンジンのキーワードをチェックしていた。正確な言い方をするなら、『当地への訪問者が検索エンジンから当地を見つけたときに使ったキーワード』の内容を確認していたのである。
 自分のホームページがどういう単語でヒットするのか、それを調べるのは重要なことだ。それはキクユ族がキリンヤガのもとにつくられて以来、ムンドゥムグとしての当然のつとめであり、ンガイの法によってすべからく決まっている、というのはもちろん嘘である。
 とにかく、当地を訪問してくれたかたがなにを探していたかに思いを馳せるのは、ホームページをつくるうえで、わたしにとってもっとも楽しい作業のひとつである。ここのところ更新していないが、検索キーワードとそれに対する当地のコンテンツの対応表である『検索エンジンキーワード集』は、その作業の合間につくったものなのだ。
 あるいは、頻繁に使われる検索キーワードに添うかたちでコンテンツを新設することもある。『始祖鳥(古生物)について』『汎用単位換算機』はそれがきっかけで開設したものであった。

前置きが長くなってしまった。
 それはいつものように、わたしがその作業を続けていたときのこと、おそらく半ばまで進んだころだったろうか。ある検索キーワードの上で、わたしの視線は凍りついた。

『工□マンガ』

 わたしは眉をひそめた。あまり愉快な徴候ではない。
 検索エンジンexciteからいらっしゃったかたであるが、彼なり彼女なりが当地のコンテンツ『マンガとCG』を見てどんなにか落胆しただろうかは、わたしには経験上理解できるのだ――いや、そういう問題ではなかった。
 そういう作品は当地にはまだ置いていないがご要望次第で随時手持ちの描き溜めたものを――もとい、今後もそういうものを置く予定はない。

 だが、ここで思い直した。そもそもこの検索キーワードはわたしが思ったような意味ではない可能性もあるのだ。あるいはこの人は南太平洋に浮かぶ伝説の島、エロマンガ島について調べていたのかも知れない。それを違う意味に解釈したのは、わたしの心性が邪(よこしま)だったゆえかもしれないのだ。

 しかし次の瞬間、わたしはその仮説を放棄した。
 次のキーワードには、しっかりとこう書かれていたからだ。

『工ッチなマンガ+CG』

excite さん、キーワードの取得ロジックに、どうやら不具合があるようです。
 でも、おもしろいので、わたしとしてはこのままでもかまいません。(※1)

【注釈】
※1 キーワードについて
 しかし、これ以上この言葉で当地がヒットしても困るので、検索キーワードの文字の一部はタイポグラフィカル上似ているもので置き換えてみました。



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『4月12日では遅すぎる』
2000年4月12日執筆

ひさしぶりの更新です。

 じつは今年のエイプリル・フールを狙って『小型恐竜まるごと一匹をからめとった琥珀が発見された』という記事を考えていたのですが、私事多忙につき、結局実現できませんでした。次回のエイプリル・フールにこれを使うにしても、はたして来年の四月一日に当生息地が残っているかといえば、それはひじょうに不安なので、この際使いそうもないネタは吐き出してしまうことにします。(^^;

『Yahoo! JAPAN』のサーファーチームさんから、当生息地を発見し、登録してくださったというご連絡をいただきました。もちろんわたしに異議などあろうはずもなく、どのように紹介していただけるかを楽しみにしていたのですが――なんと、恐れ多いことに、当地は古生物学のコーナーに分類されていました。(^^;
 現時点の当地のコンテンツで古生物関連といえるものは『始祖鳥(古生物)について』だけですので、がっかりして帰られたかたが多かったのではないでしょうか。
 もうしわけありません。
 もっと古生物関係のコンテンツを増やさなければいけないですね。

『七つの海のティコ』分館の更新のため、久しぶりに『~ティコ』の第1話を見ました。
 全編を通してほとんど唯一のティコの食事シーン、スコットやナナミの芝居が以降のものとすこし違うこと、そして救命ブイのすぐわきに錨を下ろしてしまうアルなど(^^;、細かい発見がたくさんありました。
 あらためて思うのですが、この第1話は、導入部として快心の仕上がりです。カモメの視点でゴールデン・ゲート・ブリッジをくぐるカットから始まり、気がついたときにはすでにエンディングになっていました。ラストシーンでサメを逃がしたのは、『未来少年コナン』第1話へのオマージュであり、同時に違うものをつくろうという挑戦でもあったのでしょうか。
 『七つの海のティコ』分館は14日に更新の予定です。

ようやく『鳥の穴(^^;』前期が終了しました。後期がはじまる来月までは、比較的落ち着いた生活ができそうです。

 今日は訓練が午後からなので、午前中にいままでたまっていた用事をすませることにしていました。平日の休みは貴重です。出かける前までに洗濯をすませ、朝一番に郵便局に行きます。今週末で車のレジストレーションがきれてしまうので、再登録をおこなうためです。  来月なかばにWOF(車検)が切れることもあり、あたらしい車に乗りかえることも考えましたし、特に、学校からの帰りがけに見かけた3500ドルのラダ・ニーバにはこころ惹かれるものがありました。でも、ラダ・ニーバを一台目の車として使うのはすこし不安でしたし、なによりも愛車ミツビシ・エクスプレス・ワゴンを手放す気にはなれず、このまま乗りつづけようと思い、6ヶ月で106ドルの登録料を払うことにしました。  車検の負担を減らすため、時間があるうちに自分で直せるところは直しておこうと思っています。でも、すくなくともタイヤは4本とも変えないとだめかもしれません。
 そのあと街に出て、着るものを補充しにでかけます。まず、ミリタリー・サープレスの店にいって軍隊ズボンを探しました。安くて丈夫で洗ってもすぐ乾くので、NZにいるあいだはこれを愛用していることが多かったのですが、札をみると昔の2倍に値上がりしていたので結局あきらめました。ディスカウントショップに行き、靴下や下着類、作業ズボンを買いました。

今日の訓練は横風着陸でしたが、悔しいことに満足のいく飛びができませんでした。
 高度維持にむらができてしまい、ファイナルを回るところで理想的な高度よりも100フィートも低くなってしまうのです。快晴の暑い日(摂氏24度)だったためサーマルもでて気流が荒れていましたし、ここのところ飛んでなかったこともあるかもしれません。しかし、昨日は『同じ条件下で』『ほぼ1月ぶりに』飛んだにもかかわらず、満足のできる飛びができたことを考えるとなんとも歯がゆい思いです。
 明日は雪辱をはたすつもりです。

車の燃料計がほぼエンプティをさしていたので訓練からの帰りがけに40リットルを給油しました。
 今日一日で200ドルも使ってしまいました。(^^;



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『鳥人追求の道』
2000年3月29日執筆

今日、学科試験6教科のうちのひとつ、『Principle of flight』の合格通知をもらいました。合格しているか心配でしたが、ほっとしています。買い置きのワインで祝杯をあげながら、これを書いているところです。

 コマーシャル・パイロット(事業用飛行士)の資格(※1)を手にするためには、6教科の学科と実技の試験に合格しなければなりません。今回1教科受かったので、必要なのは残りあと5教科です。

(1)Air law(航空法規)
(2)Flight navigation general(航法)
(3)Meteorology(気象学)
(4)Principle of flight and aircraft performance(航空力学)
(5)General aircraft technical knowledge(航空機に関する機械的知識)
(6)Human factors(航空医学)

 いま通っている『鳥の穴(^^;』では(1)(2)(5)の3教科を勉強しています。英語ネイティブでないわたしには、(1)の航空法規がいちばんの難関です。

まったく鳥にはあらためて敬意をはらいたくなります。なんといっても飛ぶことでご飯を食べていますから、つまり飛行時間数千時間の事業用飛行士です。いわばキョクアジサシはアラスカ-南極線の定期路線飛行士でしょうか。

 そう言う意味では事業用飛行士のライセンスを手にするということは、少しだけ鳥に近づくことができる行為なのかもしれません。(^^;

日本では『仮面ライダー』が復活するらしいといううわさを聞きました。
 もしもウルトラマン派と仮面ライダー派という分類があるとすれば、わたしはまちがいなく後者です。(※2)単車を軸に据えたスピーディなアクションとアニミズム的な世界観、そして物語中にそこはかとなく漂う物悲しさがたまりません。
 2号ライダー以降のイソギンジャガーとかカメバズーカとかヒトデヒットラーといった、わけのわからない組み合わせの怪人もいい味を出していました。
 歴代仮面ライダー作品のなかで、いま一番感情移入できるのは、『仮面ライダーアマゾン』の主人公です。わたし自身が異邦人として生活しているせいでしょうか。

【注釈】
※1 ニュージーランドのパイロットの数
ニュージーランド航空局発行の小冊子によると、この国では、およそ5000人の自家用飛行士(Private pilot)と、およそ3500人の事業用飛行士(Commercial pilot)、そしておよそ1500人の定期路線飛行士(airline transport pilot)がそれぞれのライセンスを保持しているそうです。ただ、これはヘリコプターやグライダーもふくむ数字なので、飛行機のパイロットはもうすこし少ないと思います。

※2 わたしの個人的嗜好
 ここでわたしの個人的嗜好を披露させてもらえば、機動戦士ガンダムと宇宙戦艦ヤマトなら迷わず後者、マジンガーZとゲッターロボならやはり後者を選びます。



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『もっとも危険な台本』
2000年3月28日執筆

目覚ましが鳴ったとき、外はまだはてしなく暗かった。クライストチャーチの夜明けは遅い。布団のなかで、数分間目をさます努力をした。上半身を起こして窓を開け、空のぐあいと風向きを見る。曇り空に、弱い北風のようであった。
 いつもどおりにシャワーを浴び、ダイニングに向かう。冷蔵庫をあけて牛乳をとりだした。扉を開いている数秒だけ、あたりが明るかった。ふたたび暗くなったダイニングで、わたしはロールド・オッツの袋をひらいた。コンチネンタル――つまり皿にあけて牛乳を注ぐだけの簡単な食事だが、牛乳の加減には鉄則がある。
 全体がうっすらとしめるていどに入れるのだ。
 入れすぎてはいけない。入れすぎるとたいがいの場合はまずくなってしまう。ついでだが、それがニュージーランドで暮らす秘訣でもある。

今日は、わたしの大好きな文体を真似してみました。誰の文体かは秘密です。



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『オナガの謎』
2000年3月27日執筆

ここを読んでくださっているみなさん、お久しぶりです。
 楡岡 輝山さん、エールをありがとうございます。

 わたしの近況ですが、あいかわらず鳥人追求の道を邁進しています。(※1)悪役レスラー事業用パイロットを養成する秘密結社『鳥の穴』での過酷な講義に日々悶絶している今日この頃です。頑張らなければ。

ここのところ、未整理の画像がたまる一方です。
 赤外線で撮影したブルーペンギンやキーウィ、デモステネスさんお気に入りのキーア(NZ原生の鸚鵡)、数週間前にカイコウラで撮影したダスキードルフィン、2日前にテカポの奥地でバードウォッチングしたときに出会ったブラック・スティルト(絶滅寸前のシギで、残存個体は80羽をきっている)など、お目にかけたい画像がたくさんあります。
 野生動物や野鳥を目的に当地にこられているみなさま、いましばらくおまちください。

『七つの海のティコ』のコンテンツも更新が滞っているのですが、掲示板で久しぶりに『~ティコ』について書いてみました。書きはじめるとテキストの量がいつのまにか大変なことになっているのは、わたしがこの作品を好きだからですね。

1ヶ月半ほど前に、なにげなく論文雑誌に目をとおしていたところ、おもしろい記事を発見しました。
 Azure-winged Magpie――オナガ(Cyanopica cyana)についての論文です。(※2)

 この鳥は、街中の公園に巣をつくるようなありふれた鳥でいながら、同時にたいへんかわった鳥でもあります。(※3)この鳥の分布は、動物界でもっとも謎にみちたもののひとつです。オナガは日本を含む東アジアの地域とヨーロッパ最西部のイベリア半島、つまりユーラシア大陸の両端に、それぞれ孤立して分布しています。

 いままで、この奇妙な分布については、人為的なもの(※4)によるものであるという意見が有力でした。この鳥の化石は中国でのみ産出していたこと、そしてその分布はあまりにも不自然すぎるというのがその根拠です。

 ところが大英鳥類学協会発行の論文雑誌『IBIS』で発表された JOANNE H.COOPER の論文によると、ジブラルタルにある late Pleistocene(※5 更新世、最新世後期)の地層から、オナガの上腕骨の化石が発掘されたそうです。この報告が正しければ、つまりオナガは昔からイベリア半島にいたということであり、オナガの分布は人為的なものかそうでないかという論争には事実上決着がつくことになります。

 しかし、なぜオナガはこんな奇妙な分布をしているのかという点については、かえって謎は深まったわけです。
 はたしてこの『エニグマ』は、解読されるでしょうか。

 わたしが生きているあいだに答えがでるといいな。

【注釈】
※1 鳥人追求の道
 眉毛を片方そり落として山にこもるというわけにはいかないのが難点です。

※2 オナガ
 当地の自然史分館写真があります。

※3 オナガの分布といえば
 ある地域では毎日のように見かけるのに、そこから数キロ離れた町の住人はこの鳥を見たこともない――ということさえあると聞きます。場所のえり好みがはげしいのか、飛翔力に欠けるのか、あるいはその両方なのかはわかりません。

※4 人為的な要因
 ポルトガルの船乗りによって運ばれたという説や、日本の遣欧使節団がもっていったという説がありました。

※5 Pleistocene(最新世)
 Pleistocene(最新世) は164~1万年前くらいですから、地質学的に見るならつい最近のことですね。



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『食文化よ、永遠(とわ)に』
1999年9月10日執筆

書店で『買ってはいけない』という本が平積みされているのを見ました。今話題の本らしいのですが、『買ってはいけない』と表紙に書いてあったので、買わずに帰ってきました。
 ただ、このことに関連して、思い出したことがあります。鯨肉に含まれるPCBについてです。

 実は手元に残っているのはノートのみで、肝心の試料が見つからないのですが――出回っている鯨肉を調査した結果、サンプルのほとんどから基準値を超える有機塩素化合物が、また試料の3分の1から基準値を超える水銀が検出されたという調査報告がありました。(※1) この報告によると、もっとも汚染度の高い試料からは203ppmの水銀が検出されたそうです。これが本当なら1キログラムを摂取すると半数致死量を超えることになります。(もしこれが有機水銀ならば状況はさらに悪化します。)
 北極のアザラシどころか南極のペンギンからPCBが検出されるご時世です。後知恵になってしまいますが、生態系の頂点にいるクジラが生物濃縮の影響を受けないはずがないのですよね。

 この際、いっそクジラ漁を再開してみるのもひとつの選択かもしれません。捕鯨賛成派はクジラを食べられるうえに食文化に殉じることができて幸せ、反対派は賛成派が早死してくれて幸せと、双方にとって幸福な結果が得られるはずです。

2週間ほど前に、国際海洋司法裁判所の判決が出ました。日本が『調査漁業』を理由に割当外のミナミマグロ漁獲を強行していた件ですが、『調査漁業』の即時中止という結論で決着したようです。『調査漁獲は漁獲割当のなかで行なうべきだ』ということですね。今回は『調査漁業』については、耳石調査を行なわなかったり(これをすると商品価値が落ちる)、事実は商業漁獲であったと考えるのが妥当でしょう。日本は今回の1件で自国の心象を悪くし、そのうえ得るものはなかったわけです。
 日本は(少なくとも漁業に関する限り)目先のことしか考えていないような気がします。 わたし自身はミナミマグロ漁獲反対の立場をとっていますが、そのわたしから見てさえも日本の手際はあまりにも無様です。情報宣伝戦というものがまるでわかっていません。
 いっそのこと、日本の漁業関係の宣伝はルーダー・フィン社(※2)に依頼するのが得策かもしれませんね。

【注釈】
※1 有機塩素化合物の生物濃縮
 これを知ってか、水産庁(鯨研)は捕鯨推進についての意味付けを『クジラは大量の魚を食べているから、漁業資源確保の観点から見て間引く必要がある』という主張に切り替えています。ただ、この説を証明するためには、クジラが激減したのと同じ時期に各国の漁獲量が激増している必要があります。

※2 ルーダー・フィン社
 ボスニア内戦でモスレム人側の情報宣伝戦を請け負った、アメリカのPR会社です。(のちにクロアチア政府の情報宣伝戦も請け負っています。)ボスニア内戦からユーゴ紛争に続くセルビア人の悪玉イメージはこの会社の宣伝によるところが多いでしょう。  ただ、その宣伝の内容には虚報・誤報が含まれているという指摘もあり、『強制収容所で虐待を受けるモスレム人捕虜』とされた人物が窃盗犯のセルビア人であったり、数字の誇張があったりしたことが、のちに明らかになっています。



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『アリューシャンに立つ影』
1999年9月2日執筆

キーを叩いていると、直翅目キリギリス科の昆虫が飛びこんできました。(※1) 季節がペンキを塗り替えたように秋になっていたのですね。ほんの2週間前にはウスバカゲロウが飛びこんできたことが嘘のようです。


捕まえようとしたところ、彼女は壁掛けの世界地図に跳ねて、マルケサス諸島のあたりにとりつきました。おもしろい画になったので、右手で愛機デジタルエイトを探り、8ミリテープを装填します。そのあいだに被写体はホノルル経由で北上し、アリューシャン列島に落ち着くと、そこで髪をとくようなしぐさで触角をすきはじめました。実にかわいらしい。寿行さんなら『すばらしい、仕草だ』と表記したことでしょう。(※2) これを邪魔だてするのは野暮のきわみ。彼女が触角をすきおわるのを待ち、シベリアに西進し始めたところを拿捕しようと思ったら――逃げられました。(^^; (捕獲に成功したのは数分後のことでした。)

 玄関のドアを空けはなち、そっと掌をひろげると、彼女は涼しく広い闇の中に飛び去りました。
 仙台は、もう秋です。

【注釈】
※1 直翅目キリギリス科の昆虫
 白状すると、わたしはこのたぐいの昆虫の同定ができません。
 こういう場合、古生物屋さんは対象の生物を指して『直翅目の一種(Orthoptera sp.)』という言いかたをします。
 (sp.は『エス・ピー』と発音します。)

※2 寿行さん入ってる感じ
 もちろんこの場合、点の打ち方はなによりも重要なポイントです。



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『ロード・ファクター』
1999年8月1日執筆

このあいだのハイジャック犯には驚きました。ネットワーク上のあちこちで話題になっていますね。
 わたしもパイロットなりに(これでもパイロットの端くれなのです)コメントさせていただきます。

報道機関の伝えるところでは、件のハイジャック犯は航空マニアで、飛行機のことなら知らないことはなかったとされているようです。航空マニアだったことは間違いなさそうですが、かれが本当に飛行機に詳しかったのかという点については、わたしは評価しかねています。事件直後の『宙返りをしたり、橋をくぐったりしたかった』という発言が引っかかっているからです。

飛行機は飛行中起こりえる事態に備え、ある程度の荷重に耐えるように設計されています。飛行機がどの程度の荷重に耐えるかをあらわす指標として使われているのが制限荷重を航空機の総重量で割ったもので、これがロード・ファクターと呼ばれる係数です。
 さて、手持ちの資料によると、B747機のロード・ファクターは-1.0G~+2.5Gとなっています。わかりやすい例でいえば、無風状態での水平飛行が1G、無風状態での自由落下状態が0G、無風状態での背面状態が-1.0Gとなります。つまり、宙返りの頂点ではB747の強度はぎりぎりの状態です。たとえ安全率1.5を掛けた終局荷重倍数を考えるにしても、背面飛行状態で下向きの突風を受けたりした場合、機体は空中分解してしまいます。たとえ機体は無事だとしても、背面で飛んだその時点で燃料系統に異常がでる可能性があります。ほとんどの飛行機は裏返しで飛ぶことは想定していません。実際に宙返り機動を保証されている機体は、エアロバティック機や軍用機の一部(戦闘機、攻撃機など)くらいのものなのです。

 つまり、『宙返りをしたかった』と発言したことは、このハイジャック犯がload factorに関する知識を欠いていたことの証明でもあります。このことは操縦免許を持つものなら誰もが知っていることです。

また、『橋をくぐったりしたかった』というコメントから見ても、B747の尾翼の高さや失速速度、タービンエンジンの特性を知っていたのかどうかも疑わしいものです。
 わたしは残念ながらタービン機(ジェット、ターボプロップ、ターボシャフト)の操縦経験がありません。しかし、『タービン機のスロットル特性はレシプロエンジンと違う。リニアじゃないんだ』――とわたしの教官が言っていました。ジェット機のエンジンは、スロットルを押し込んでから2、3秒をおいてからふけあがるのです。この特性を知らなければ、またこの特性に慣熟するための訓練を積んでいなければ、着陸時に飛行機は地面に激突します。もしもかれ自身で着陸を試みたら、かれと乗客の命はなかったことでしょう。

 件のハイジャック犯の知識は、あまりにも中途半端な気がするのです。



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『図鑑における絵的真実について』
1999年7月10日執筆

わたしは幼い頃から図鑑の愛読者でした。いまでもそうです。想像の余地があるという意味で、地図と図鑑ほどおもしろい読み物はありません。

 むかし図鑑を読んでいたときに、『イラストの類はすべて写真にすればいいのではないか』と思ったことがあります。
 なにもわざわざ動物をイラストで描かなくても、実際の動物を写した写真があるのならそれを使えばいいのではないか――と。

しかしよく考えてみると、対象がヒトから見て特殊な生活環境にすむ動物の場合はそうもいきません。

 たとえばマッコウクジラなどは、本来は深海で採餌する動物です。わたしたちがかれらの全体像を見ることのできる機会は、座礁なり捕鯨なり、なんらかのかたちで陸にあがった状態がほとんどでしょう。しかし、たとえば座礁したクジラは、その動物のひとつの属性ではあるにしても、かならずしも本質をあらわすものではありません。すくなくとも、かれらの普段の営みとはかけはなれたものです。

 考えた末に得た結論は、『写真は一面の事実を表現はするけれど、かならずしも本質をあらわすものではない』ということでした。(※1)

たとえば鳥を描くにしても、その生態を心得たひとが描いた絵というのは、写真よりもそれらしく見えることがあります。その鳥の特徴が映える構図で、もっともそれらしく見えるような瞬間を描き出しているからですね。特徴をディフォルメすることで識別を楽にする効果もあります。

 さきにあげたマッコウクジラでは、深海でのダイオウイカとの格闘シーンがそうですね。実際に『深海で』そのシーンを観察した人はいないはずです。水上での目撃例や胃の内容物から見て、そういう行動をとっているらしいことは想像できますが、実際それがおきたその瞬間を切り取ったものではない以上、それは絵的な虚構であるとも言えます。(※2)しかし、座礁した個体を写真に取るよりは、はるかにその動物の本質に迫っているのではないでしょうか。

 『絵的真実』が『実際の瞬間を切り取った』写真よりも、ものの本質に肉薄できることは、確かにあるのです。

補足しておくと、もちろん逆の例もありまして、たとえばイカの描きかたなどがそれにあたるのではないかと思っています。

 イカやタコは、日本では胴体を上にして書くことが多く、西洋では反対に触手を上にして描くのが通例です。(※3) しかし、どちらの描きかたもイカの本質をあらわしているとは言いがたいものです。
 タコはまだ納得できますが、多くのイカは魚に比肩しうる活発な泳ぎ手です。魚を横向きに描くならば、イカも横向きで描くべきでしょう。水中で実際に泳いでいるかれらの姿をみると、余計にそう感じます。

【注釈】
※1 写真と絵の相違点
 写真を撮るときは『写るものをいかにして省くか』で悩みますが、絵の場合は『なにをどう書き足すか』で重要ではないかという気がしてきました。写真は省きかたに、絵は描き足しかたにセンスがあらわれるのかもしれません。

※2 絵的な嘘
 わたしもよく絵的な嘘を描いていて、右利きであるはずのナナミちゃんの左手に花火を持たせたりしています。あれは左右反転するとわかるのですが、背の高いスコットが右側にくると画面のすわりが悪いのです。しかし、画面左側にナナミちゃんを配置すると、花火を手前におくことができません。数秒間の逡巡ののち、不自然ではあるのですが、結局左手に花火を持たせることにしました。

※3 タコやイカの描きかた
 西洋式の描きかたをすると(※4)、たしかにヒドラやイソギンチャク的な禍禍しさがあります。デビルフィッシュと評価するのも無理はありません。
 これに対して日本式の描きかたはクレクレタコラ的なかわいらしさがあります。このあいだビデオカメラのCMに登場した子連れのタコは実にすばらしかったですね。(タコ評論家モード)

※4 巻貝の描きかた
 昔は巻貝なども殻頂を下にして描くのが通例だったそうで、今でもヨーロッパの一部の文献はこの方式をとっていると聞きます。もっとも、このセオリーは廃れてしまい、現在のほとんどの雑誌が殻頂を上にした状態で記載しています。前者では画面のすわりが悪かったためでしょうか。



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『バットマンフォーエバー』
1999年6月12日執筆

日が暮れてしばらくたったくらいの時間帯にそらを見上げるとアブラコウモリが飛んでいることがあります。まわりの話を聞いてみると鳥だと思っているかたも多いような気がしますが――鋭角的に曲がるような動きで、飛ぶスピードが妙に遅く、大きい蝶のような挙動をみせていたら、それはたぶんコウモリです。

 コウモリといえばエコーロケーション。(※1) 今こうしているあいだもこの部屋の外では、蛾とコウモリの熾烈な超音波レーダー戦が繰り広げられているにちがいありません。
 蛾の仲間もだまって食べられているわけではなく、コウモリの急接近による超音波のドップラー効果を感知し、急降下で振り切るものや、あげくのはてには自ら超音波を出すものまでいます。(※2) これはもはや現代の電子航空戦そのものの様相で、トム・クランシーもびっくりです。

さて、コウモリの出す超音波は2万ヘルツほどの高さで一回が5~15ミリ秒という短いものですが、この音圧は強力です。さらにかれらは敏感な聴覚をもっています。
 ならばコウモリは自分の発する超音波で気絶しないのだろうか――という素朴な疑問を抱き、以前調べた経験があります。その説明はおおむねこんな内容でした。

(1)コウモリは超音波を出すときに内耳を遮蔽している
(2)反射波として帰ってくる周波数は違う(つまり聞き取りにくい周波数の音を出し、聞き取りやすい高さの音を受け取っている)

ところが、ここでまたあらたな疑問が生まれました。レーダーの波長は短いほど解像度が高くなるというテーゼ(※3)があります。波長が長いと、粗いモザイクでしか世界を捉えられません。言いかえるなら、ここでいう波長は網の目のようなもので、粗い網では鱒はすくえても、メダカはすくえないということに似ています。
 それを踏まえたうえで、コウモリレーダーの解像度を計算してみましょう。

 手元の理科年表によると、音速は毎秒331.45メートル(摂氏零度、一気圧の状態)となっていました。つまり2万ヘルツの音の波長は0.01657メートル(16.6ミリメートル)で、コウモリレーダーの解像度は大体このあたりに落ち着きそうだと予想できます。

 ところが、実際のコウモリは1.2ミリメートルの針金を24センチメートル間隔で張った網を何の問題もなく飛びぬけることができるそうで、コウモリの超音波レーダーの性能は、予想される解像度の14倍に近いということになります。(※4) 網目1センチの網でミジンコをすくうようなことがコウモリにはなぜできるのか、これはわたしにはわかりません。

 イルカの筋力ではイルカのだしうる最高速度は達成できないという計算結果もありますし、生き物の世界はなにかと不思議なことが多いようです。(※5)

【注釈】
※1 反響定位(Echo-location)
 イルカやコウモリのものが有名ですが、これはかならずしもかれらの専売特許ではありません。哺乳類ではトガリネズミやテンレック、鳥類ではアブラヨタカ(Steatornis capi)やヒマラヤアナツバメ(Collocalia brevirostris)などでも知られています。

※2 蛾の出す超音波
 蛾の出す超音波は、現在では『わたしは不味いよ』ということをアピールするものという説が有力です。つまり電子欺瞞よりは、スズメバチの警戒色に近いという主張ですね。

※3 レーダーと波長の関係
 初期のレーダー開発の重点は、どこまで波長を短くできるかという点にありました。  第二次世界大戦の『バトル・オブ・ブリテン;で英国を救ったレーダーは(当時はRDF(Radio Direction Finding)と呼称)10メートル~1.5メートルのものだったそうで、飛行機の機種や機数を見分けるのは難しかったようです。
 現代の戦闘機搭載レーダーの波長はセンチメートル単位です。

※4 コウモリの探知能力
 トビイロホオヒゲコウモリ(Myotis lucifugus)による実験結果です。
 (Griffin,D.R. Listening in the Dark. 1958)
 全然関係ありませんが、コウモリにlucifugusという種名をつけるセンスはなかなか小粋だと思います。

※5 イルカの最高速度の謎
 皮膚の触覚から乱流の発生を検知し、皮膚にしわを作ることで乱流をうちけしているためのようです。飛行機で言うところの境界層制御でしょうか。しかしこれを考慮に入れても、実際の数値にはまだ届かないと聞きます。



[目次]
『きわものメカ強化週間』
1999年6月9日執筆

おそらく今日一日でおわると思いますが、『週間』という響きがいいのでタイトルにしてしまいました。

 さて、今日のお題は単車好きの間でもあまりメジャーな存在ではないらしいのですが(※1)、ドイツの『MEGOLA』というオートバイです。この奇怪な名前は、メイクスナー、コッカレル、ランドクラフの3人の人名に由来しています。
   この単車の設計思想でもっとも度肝を抜かれる点は、消音機なしの回転式空冷星型エンジン(※1)をまるごと前輪に埋め込んでいることだと思います。この単車はちゃんと曲がれるのかどうか不安です。整備性も悪そうだし。(^^; 軽量化できるとはいえ、今日では決してでてきそうもない発想ですね。

 写真があれば良かったのですが、記憶のみに頼って即興で描いたのが下の絵です。 (定規とコンパスくらい使えよ>わたし)
 しっかりした資料が手に入ったら描きなおす予定ですので、これでご勘弁ください。

 1922年に登場したこの単車の排気量は637ccで、最高出力10ps(3,500rpm)を誇りました。レース仕様の車体の最高速度は、じつに136km/hに達したそうです。
 このMEGOLAは約2000台が生産され、そのうち20台程度が現在も生き残っています。

【注釈】
※1 マイナーなのかもしれない
 念のために、知っている限りの検索エンジンを使って調べてみましたが、発見できたのはグーゲンハイム美術館のオートバイ展だけでした。
 もしかすると、当生息地はMEGOLAそのものに言及した日本最初のホームページかもしれません。(^^;

※2 回転式空冷星型エンジン
 第一時世界大戦の飛行機に多く使われた型式のエンジンです。
 のちのエンジンは軸が回転してプロペラを回すのですが、この型式のエンジンはクランク軸を胴体に固定するのが特徴です。当然ながら、エンジン本体はプロペラと一緒に回転します。(^^;



[目次]
『我らがビッグ・ファイアのために』
1999年6月6日執筆

お久しぶりです。タイトルには意味はありません。

 ここのところ、いままで巡回していたウェブサイト群が相次いで消滅した(更新されなくなった)ことで、ローマ時代の廃墟の前にたたずむ塩野七生のごとき寂寥感にひたっておりました。再開(更新)してほしいなあ。

 でもよくよく考えてみると、わたし自身が自分のページを化石化させていたので、まったく人のことを言えた義理ではありません。
 というわけで、(もしかして存在するかもしれない)当地の読者のみなさま、長らくお待たせいたしました。
 当生息地もわたしも、そう簡単に絶滅はいたしませんので、今後ともよろしくおねがいいたします。

そういえば、2ストロークの単車が絶滅の危機に瀕しているらしいですね。
 RZV500R、RG500/400Γ、NS400Rなどの巨獣たちはすでに絶滅して久しいですが、新排出ガス規制による淘汰圧により、250ccの現行モデルも8月いっぱいで絶滅するのではないかという噂です。恐怖の大王って、これのことでしょうか。(^^;
 将来的には50~125cc級の小型種からも、2ストロークは消えていくのでしょうね。
 わたし自身は修理が可能な限り、ティコ(NSR-RL)に乗りつづけるつもりなので、直接の影響はありませんが、やはり時代の流れを感じます。

さて、わたしが絶滅と聞いて連想するのは、つぎの言葉です。

『これまで地球上に現れた生物種のうち99パーセントは絶滅した』

G・G・シンプソン(※1)

 このときは『そうなんだ』と思いました。
 S・J・グールドが、のちにこう言っていたことを知るまでは、少なくとも納得していました。

『シンプソンの数字はあと二桁大きくしてもいい』

S・J・グールド(※2)


 し……『してもいい』ってそんな……(^^;
 つまりこの言葉はレトリックであって、科学的な事実を示すものではなかったということですね。
 よく考えると、どこまでを一つの種と認めるかが、その標本を解釈する人によって違うくらいですから、現時点でどのくらいの種が生存しているか、そしてかつてどのくらいの種が存在していたのかを正確に見積もることはほとんど不可能なのですよね。

 似たような格言に、
 『すべてのものの70パーセントはクズだ』  というものがありますが、この70パーセントという数字に前から疑問をもっていました。どうして66.6パーセントや75パーセントではいけないのでしょう。このほうが計算しやすいのに。(笑)

【注釈】
※1 G・G・シンプソン
 ウマの進化の研究で有名な古生物学者です。
 このかたの業績は、定向進化のたとえとしてよく引き合いに出されます。
 『進化とともにウマの体は大きくなり、指の数が減っていった』という説明は、古生物に興味のないかたでも、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

※2 S・J・グールド
 断続平衡説で有名な古生物学者です。
 バージェス頁岩動物群について書かれた『ワンダフル・ライフ』や、パンダの6本目の(手首の骨からつくりだされた)『指』について考察する『パンダの親指』などの著作は、一般書としてもおもしろい内容です。

※3 研究者によって解釈が違う
 単純に計量できそうな『長さ』でさえも、海岸線のようなフラクタル構造を持つものを対象にすると、1メートルのものさしと10センチのものさしで計った場合は得られる結果はまったく違います。(※4)
 ましてや、相手は生物。研究者によって、ランパー(まとめ好き)とスプリッター(分割好き)のような傾向が出てくることは、もはや必然といえるでしょう。

※4 『ブリテン島の海岸線の長さはどれだけか?』
 1967年に英国の科学誌『サイエンス』に掲載された、マンデルブロによる論文のタイトルです。これはフラクタル理論の幕開けを告げるものでしたが、当時はまったく注目されなかったと聞きます。




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