[始祖鳥生息地へ]

祖鳥のさえずり
(1998年12月1日(火)~1998年12月3日(木)執筆分)

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 落ちも構成もない散文的な文章を垂れ流しにさせていただく連載コーナーです。

西暦1998年、すでに人類は、『日記共同体』を結成していた。
『配続日記』
by 一歩さん
『雑騒鬼』
by ぴか さん
『月の裏側』
by luna さん
『ありあり雑記』
by 海野さん
『日記共同体』はインターネットの奥深く秘密裏に作られ、
冷静沈着なピカレイカー司令官の呼びかけのもと、
日夜、謎の訪問者UHO(※1)を歓迎し続けるのであった。

 訪問者歓迎の準備は、できた。
※1 UHO :『アンディファインド訪問者』の略。


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第237回『10ヶ月たったのです』 1998年12月1日(火)執筆
第238回『ゆっくり飛ぶのも楽じゃない』 1998年12月3日(木)執筆


[目次]
『10ヶ月たったのです』
1998年12月1日執筆

当地の開設から、およそ10ヶ月が過ぎました。

 ナナミちゃんのすばらしさを全世界に知らしめる目的で開設したこのページですが、いつのまにか目的がすりかわってしまい、ラダ・ニーバ<やポリカルポフI16PZL-ウィルガ短距離離着陸機の良さをわかっていただくページになってしまいました。

 それはともかく、またもや更新が停滞しています。
 ここのところ週末はほとんど単車の整備とライディングに明け暮れ、平日は夢の中までもシステム設計とコーディングをしている始末です。(目が覚めたとき、自分のことながら驚きました。)

 しかし、最大の原因は、ベッドに横たわり布団にくるまりながらリブレットのキーをたたきつつ、文章完成前に寝てしまっていることかもしれません。
 だって、寒いんだもん。

 今現在も、布団のなかでこの文章を書いています。

 今日は書きあげられるかな。



[目次]
『ゆっくり飛ぶのも楽じゃない』
1998年12月3日執筆

飛行機の訓練の教程に、不時着(FORCED LANDING)という科目があります。
 空中でエンジンをアイドリング状態まで絞り、適切な不時着地点を判断し、そこを目指して滑空し、着陸するという訓練です。このハイテクノロジーの時代にエンジンが止まるものか、こんな訓練などかたちだけだと思われるかたもおられるかもしれませんが、実はエンジンは割と止まるものなのです。(※1) 悪天候の中や、湿気が多いときにcarb heat(キャブレター予熱機)を入れ忘れたりすると、それだけでキャブレターに着氷してエンジンが止まったりします。

 そうそう、不時着訓練のはなしでした。エンジンをアイドルにして滑空などしていると、滞空時間をのばしたいという本能から、ついゆっくり飛びたくなってしまうのですが、、これでわたしは教官になんども叱られたものでした。そう、飛行機というのものはある点を境にして、滑空比(あるいは降下率)が悪化します。セスナ172は大気速度70ノット、パイパーPA28-140ならば75ノットで滑空するのがベストとされていますが、この速度より速くても遅くても、飛行機の滑空比は悪化するのです。

さて、これはなぜでしょうか。

 飛行機が飛行中に受ける抵抗は、大きく分けてparasite dragとinduced dragに分類されます。(講義も教科書も英語だったので和訳がわかりません。)前者は速度の増加にともない増加する抵抗で、後者は速度の減少にともなって増加する抵抗です。おおむねこの2つの和が飛行機の受ける抵抗ということになりますから、速度が速くもなく、遅くもないあたりに『抵抗がもっとも少ない領域』ができることになる――というのが先の問いに対しての回答です。

 とはいっても、着陸するためには速度を落とさなければなりません。しかし、速くとぶことと、ゆっくり飛ぶことは空力的性質として相反するものです。そこで高揚力装置の出番になります。フラップを下げたり、PHLS(powered high-lift system)をONにしたりするのは、このinduced dragの曲線を低速側によせてやる努力のあらわれです。滑走路への進入速度を小さくできれば滑走距離は短くなりますから、これによって飛行機はなにもしないよりも、はるかに短い距離で着陸することができます。

さらに理想をいえば、接地のときの速度はゼロであることが望ましいですね。
 街のハトなどはこれに近い着陸ができますが、よく観察してみると、かれらは着陸する寸前に、強く羽ばたいています。失われた揚力を推力でおぎなうことで、速度ゼロ着陸を実現しているのです。(※2)

 この方法――つまり揚力を推力でおぎなう方法で着陸すれば、飛行機は短い滑走距離で着陸できるはずです。この方法をとって着陸速度をさげた飛行機が、いまマスコミをさわがせている新明和US-1救難飛行艇で、これは荒れた外洋に離着水できる世界で唯一の飛行艇です。

 ただ、この飛行艇は低速時の揚力の不足をエンジンパワーで補う設計ですから、着水直前にエンジンが止まったりすると、クリティカルな事態におちいってしまいます。この飛行機は軍用機ですから、被弾の危険性もあるでしょう。このことを考えると、確かに高性能ではあるのですが、あまり実戦向きの機体ではないかもしれないですね。

【注釈】
※1 エンジンは割と止まるもの
 現にわたしの教官は、わたしが飛行試験に合格した1週間後に、(それもわたしが飛行試験に合格したときの飛行機で)飛行中のエンジン停止で不時着しました。念のため補足しますが、不時着といっても、着地点の判断とアプローチが適切であれば、乗員も機体もいためることなく降りることができますし、わたしたちはそういう訓練を受けています。

※2 速度ゼロ着陸
 もちろんこれは推力重量比に優れた鳥にだけできることで、体の大きさに対して推力が十分ではないアホウドリは、前方に走りながら着陸しています。逆説的に感じますが、体に対して翼の弱い飛行生物ほど、着陸速度は速くなるのです。


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