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生きた化石探索記



 いわゆる『原始的な形質を残しつつ、現在も生き残っているもの』
あるいは『つい最近まで生き残っていたらしいもの』を取り上げるコーナーです。



第1回 『ラダ・ニーバ』 1998年2月7日執筆 1998年3月27日改稿
第2回 『PZL-WILGA』 1999年5月5日執筆
第3回 『蒸気トラクター』 1998年12月30日執筆
 

『ラダ・ニーバ』 1998年3月27日改稿

 さて、「生きた化石探索記」の記念すべき第一回は、生き物ではなく、車について書かせていただくことにする。もちろん文字通りの生きた化石、イチョウやシャミセンガイやオキナエビスやハイギョやシーラカンスについてはは以降の連載で必ず言及する予定なので、今回はご容赦願いたい。

 『ラダ・ニーバ』とは、ロシア製の1600ccの四輪駆動車である。いまでこそそれほど見かけなくなったが、3~4年前はこの界隈、ニュージーランドをよく走っていたものだ。

 読者諸氏は、鈴木自動車の『エスクード』という四輪駆動車をご存知だろうか。
 かの車のプレス行程を大幅に省略し、ライトを丸目に替え、ドアのヒンジは外に出し、不細工にすることに徹底的に心血を注ぎ込めばいくばくかは近いものが出来上がるような気がする。あるいは2代目ジムニーを想起してもらえればわかりやすいかもしれない。

ラダ・ニーバ(斜め前方)
ラダ・ニーバ(側面)  ボンネットの中はシンプルこの上なし、今の日本車を考えるとがらんどうに近い。真ん中にエンジンが据えてあるだけで、両脇から向こうがわの地面が見える。室内は簡素そのもので、座席はてらてら光るビニールシート――新車時についてくるビニールのカバーではない――なのである。
 どうも、70年代の日本車のたたずまいを彷彿とさせる。
 そういえばラダ社の車には、往年の510型ブルーバードを不細工にしたようなものもあった。残念ながら名前を失念してしまったが、これもよく見かけた車である。

ラダ・ニーバ(斜め後方)
ラダ・ニーバ(後面)  この車は無骨な機能美を持っているともいえる。虚飾を廃し、走る道具に徹した車ゆえの無骨ではあるが、それでいてどこかとぼけた暖かみが感じられるのだ。往年の日本車が持っていた、そして今は失ってしまった何かを、この車はたしかに保持し続けている。
 変わらないものは、そもそも変わる必要がないものなのかもしれない。


『生きた化石探索記』 第1回 (完)




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