議論の流れ(2007年2月5日追記)

(1)2006年5月以降の当地の問題提起に対するWikipedia 『始祖鳥』ノートの議論を受けて、当地は2007年1月22日にWikipedia 始祖鳥項目との比較画像による反論を行ないました。

比較画像

両者に共通した全く同じ誤表記(しかも当地の方が古い)まであるのに、これで参考にしていないというのはどうなんでしょう。
(Wikipedia『始祖鳥』項目の執筆者の皆さんへ)

(2)これに対して、Kinori氏は、削除論議内で次のような発言を行なっています。

(存続)2004年8月4日のリストの誤記ですが、Maxburg specimenはよくある間違いらしく、グーグルで検索するとかなりの数の英語のサイトが出てきます。
(中略)
Kinori 2007年1月23日 (火) 05:18 (UTC)

(Kinoriさんの発言)

 また、同氏は『始祖鳥』ノート内で次のような発言をされていました。

(前略)
始祖鳥を論じるときにその飛翔能力にまず関心が向かうのは、普通のことではないかと思います。
(中略)
が、平凡社の「マイペディア99テキスト版」にも「大きさはハトくらい」とあり、ハトに比すことが特別珍しいわけではなさそうです。参考にした可能性はありますが、証拠になるかと言えば、そこまでではないと思います。
(中略)
ひょっとしたらこのうちの誰かの頭の中に、「始祖鳥生息地」の表記があったかもしれません。それを否定することはできませんが、これらがみな一つのサイトに依存しているとは考えにくいです。
(中略)
Kinori 2007年1月30日 (火) 10:32 (UTC)

(Kinoriさんの発言)

(3)当地Webmaeter『始祖鳥』は、上記Kinoriさんの発言に対し、以下の文章による再反論を行ないます。




Kinoriさんの反論に対する再反論

 Kinoriさん、はじめまして。当地Webmasterの始祖鳥と申します。
 精査に基づいた具体的なご指摘を頂きましたこと、大変嬉しく思っています。
 それでは、すべてのご指摘について再反論させていただきますので、よろしくお願いします。

(2007年1月30日)


また、この記事では初め「大きさは50cm」とする記述があり、それが上記Birds of a Featherさんの加筆で、「頭部の先から尾部の先まで約50cmであり、尾部が長いことを考慮すると胴体のサイズは現在のハト程度である。」となりました。「始祖鳥生息地」は、大きさを独立したトピックとして取り上げ、よくカラスくらいと言われるがハトに近いということを、詳しく説明しています。同時点の英語版には、「現生の鳥と体型が似ておらず、短く広い翼と長い尾を持つ。」「大きさはカササギ程度」とあります。カササギではなくハトとしたところで始祖鳥生息地のほうに近そうです。が、平凡社の「マイペディア99テキスト版」にも「大きさはハトくらい」とあり、ハトに比すことが特別珍しいわけではなさそうです。参考にした可能性はありますが、証拠になるかと言えば、そこまでではないと思います。

(Kinoriさんの発言)

 注目すべき点はハトに比較していることではなく、「尾を含む大きさ」あるいは「尾を含まない大きさ」について言及していることで、これが当地における検証の独自部分です。Wikipedia上での記述「尾部が長いことを考慮すると胴体のサイズは現在のハト程度である。」は尾部に着目し、それを除いた頭胴長に着目している点が当地の着眼点・記述と共通しています。

 残念ながら当方の手元には「マイペディア99テキスト版」はないため、「マイペディア97」を参照させていただきますが、始祖鳥項目の記述は下記のとおりでした。

ジュラ紀に生存した鳥類の先祖。化石はドイツの石版石採石場から発見され,大きさはハトくらい。明瞭な羽毛を持ち,前肢は翼になっているが,(後略)

(マイペディア1997「始祖鳥」項目)

 ご指摘の通りハトと書かれていますが、体長と尾部との関連についてはいっさい記述がありませんでした。あるいは「マイペディア99テキスト版」では尾部と体長の関連についての言及があるのでしょうか。

 もしそうでしたらこの点について認識を改めます。


検討に移ります。類似のパラグラフ構成、たとえば「飛翔能力」を独立したパラグラフとしていることが証拠とされていますが、それは英語版も同じです。初期の英語版の見出しは、「原始的な鳥」「飛んだか跳ねたか」「発見」「これも見よ」「外部リンク」でした。今はそれに「羽」が加わり、「飛んだか跳ねたか」が「飛翔能力」に変わり、「発見」が「分類」と「化石」に分かれています。日本語版の最初の見出し分けはBirds of a Featherさんの2005年12月4日 (日) 04:25の版により、「学名の意味」「始祖鳥に位置づけ」「飛翔能力」「近年の発見」「系統関係図」「標本」「関連」「外部リンク」です。これは現在までほとんど同じです。始祖鳥を論じるときにその飛翔能力にまず関心が向かうのは、普通のことではないかと思います。
(Kinoriさんの発言)

 飛翔能力のパラグラフを独立させたという特徴は英語版を元にしている可能性がある点については納得いたしました。
 ところが英語版を拝読したところ、やはりこのパラグラフは当地を参考にしているのではないかと考えざるをえません。

始祖鳥は非対称の羽根がある大きな翼をもつため飛翔能力があることは確実視されているが、骨格に現存鳥類のような大きな竜骨突起がみられず強力な飛翔筋は無かったとされ、羽ばたく能力は小さく飛翔は滑空にとどまったとされる。

なお飛び立ちをどのようにしたかは意見が分かれている。伝統的には木の上から飛び立ち滑空した説があり始祖鳥が木の上に止まる想像図も多い。別の説では地表を高速で走り飛び立つとされる。始祖鳥の長く恐竜的な力強い脚部から近年は後者の説が有力視される。また2005年には始祖鳥の趾骨の第1趾が前方を向いていたという説が提示され、この説が正しければ始祖鳥は地表型であることが確実となる。

(Wikipedia 2005年12月10日 (土) 10:22の版)

 これは英語版の要約ではなく、当地の記事の要約ではないでしょうか。

 英語版での「Flight ability」の項目を読みましたが、非対称の羽毛の解説に始まり、羽ばたきができたかできないか、後肢に生える羽が飛行特性に関与したとの説に言及(昨年夏のLongrichによる論文)、CTスキャンによる脳断面が飛ぶ鳥のそれと似ていること、走ったか飛んだかについて軽く言及していますが、結論は出していません。

 これに対して始祖鳥生息地では、飛行能力があることをまず断言、伝統的な滑空説と地上説を対比し、住んでいた環境、足の構造、走行能力に言及した上で、現時点では地上滑走が有力という結論を出しています。木の上に止まる想像図、に類する表現も始祖鳥生息地内の数ヶ所に登場しますし、第1指が対向していない点についても記述しています。

 結論を言えば、Wikipedia日本語版の記事は、英語版の記事よりは始祖鳥生息地のそれを参考にした可能性が高いと思われます。


学名の意味について、あちらのサイトでは、「古代の羽毛」あるいは「古代の翼」として、発見地で石版材料としての石が採られていたからだと記しています。学名のカタカナ表記は「アーカエオプテリクス」です。現在の英語版には、pteryxの意味は羽毛か翼だと書かれて居ますが、この点に関しては日本語版のほうが先行します。日本語版では、2005年10月6日の版で加筆されました。最初は「アーケオプテリクス、古代の羽も意」(「うもう」のタイプミスか?)で、直後に別の人に「古代の羽」に直されました。2005年11月4日 (金) 09:05の版では、学名を「アルケオプテリクス」、訳語を「古代の翼」に改めた上で、「石版画材料の名産地」に由来すると記しました。さらに学名のカタカナ転写をめぐってノートで議論があってから、今あるものに落ち着きました。ひょっとしたらこのうちの誰かの頭の中に、「始祖鳥生息地」の表記があったかもしれません。それを否定することはできませんが、これらがみな一つのサイトに依存しているとは考えにくいです。

(Kinoriさんの発言)

 主張されますことは、「属名と種名をそれぞれ訳出」「古代の翼」「リトグラフ」「石版」「『由来する/しています(動詞)という言い回し』」などの複数の要素があくまでも偶然に一箇所に集まったということでしょうか。
 申し訳ありませんが、これは私には信じがたいことです。


(存続)2004年8月4日のリストの誤記ですが、Maxburg specimenはよくある間違いらしく、グーグルで検索するとかなりの数の英語のサイトが出てきます。Maxburg specimenが168件、Maxberg specimenが321件です。英語版も最初はMaxburgで、訂正されたのは2005年5月20日でした。また、2005年11月4日 (金) 09:05の版は、同じことを書いているにしても、表現の一致がないこと、内容そのものに創作性を認めることができないことから、著作権侵害にならないと判断します。Kinori 2007年1月23日 (火) 05:18 (UTC)

(Kinoriさんの発言)

 資料とした手持ちの日本語の文献を確認しましたが、全て「マックスベルク標本」と表記されていました。ドイツ経由で情報が入ってきていたため、表記の誤りが起き難いのでしょうか。英語圏ではご指摘の通りMaxbergをMaxburgとする誤りが多いようで(論文にさえ間違っているものがある)、これは英語では両者とも発音が良く似ている故に起きやすい誤りだと推定できます。

 つまり、「標本名について、両者とも英語の文献を元にしたための共通した誤り」とKinoriさんは主張されているのでしょうか。

 しかし、その場合は、下記の2点が問題になってきます。

(1)最初の"The Wheather"(羽毛)を数に入れないカウント法
 始祖鳥生息地では、最初に産出した「一枚の羽毛」を標本の数にカウントしていません。(文中で言及はしています。)  この数え方をしているのは、私が知る限り、始祖鳥生息地のみです。

 下記3つのサイトはいずれも最初の羽毛を「1個目」としてカウントしていることに注目してください。

英語版Wikipedia
All About Archaeopteryx (両方に共通するリンク)
Archaeopteryx - A Prehistoric Bird(両方に共通するリンク)

 ところが、Wikipedia日本語版の記事と始祖鳥生息地はいずれも羽毛化石をカウントしていません。

(2)第七標本(A.bavarica)を「バイエルン標本」と表記している

 この標本は英語圏ではミュンヘン標本、またはゾルンホーファー・アクティエン・ヴェレイン標本と表記されます。  それではそれぞれのリンクにおける該当標本の表記を見てみましょう。
英語版Wikipedia
 Munich Specimen (ミュンヘン標本)

All About Archaeopteryx (両方に共通するリンク)
 The Solnhofen-Aktien-Verein specimen(ゾルンホーファー・アクティエン・ヴェレイン標本)

Archaeopteryx - A Prehistoric Bird(両方に共通するリンク)
 Solnhofer Aktien-Verein(ゾルンホーファー・アクティエン・ヴェレイン標本)

 いずれもバイエルン標本という表記は出てきません。
 ところが、Wikipedia日本語版の記事と始祖鳥生息地はいずれも「バイエルン標本」と表記しています。

上記に加えて、下記があげられます。
(3)マックスベルク標本を「マックスブルク」と誤表記している

 上記3つの要素が偶然に重なることは非常に考えにくいことです。

:標本の誤記については、削除依頼に書いた私のコメントを読んでください。外部リンクは2005年12月10日にVogelさんが付けました。彼は他に、始祖鳥の足の指の向きと新聞報道について書いています。「始祖鳥生息地」には、12月6日に同じことについて記した箇所がありますから、それを参考にした可能性は高いですね。しかし同時に彼は少なくとも論文のアブストラクトと、ウィキペディアのノートを読んでいる可能性が高いです。そして、ウィキペディアのノートには、さらに前の12月2日の議論が残されています。そこでは同じ内容についてIganodonさんが指摘しています。

:比較対象図の他の箇所の論理は、内容が同じで日付が先なら先のほうを後のほうが参考にしたのだというものですよね。この場合、ウィキペディアのノートのほうが先だから、「始祖鳥生息地」が真似をしたということでいいのでしょうか。具体的な反証がなされるまでの間、「始祖鳥生息地」をウィキペディアの模倣サイトと言ってよいのでしょうか。私はそうは思いません。そこには方法的な誤りがあるのです。[[利用者:Kinori|Kinori]] 2007年1月30日 (火) 10:32 (UTC)


 個人的な事情から初動が遅れたのはご指摘通りです。
 Wikipediaは2005年12月2日に、当地は2005年12月6日に記事を作成しています。この点についてはご指摘に反証するすべがありません。

 ところが、新聞報道への批判についてですが、当地は2005年12月6日に初めて書いた時点ですでにそれを行なっていますが、Wikipediaではほぼ同様の内容が追加されるのは2005年12月10日 (土) 10:22の版になってからですから、これについては当地がオリジナルと言えないでしょうか。
始祖鳥(古生物)について ニュースのバックナンバーと過去の更新履歴
2005年12月10日 (土) 10:22の版

 また、ニュースに対する着眼点がそれぞれ違います。
 始祖鳥生息地は、Wikipedia日本語版に存在していない下記の情報も含んでいます。
もう一つこの事実からわかるのは、「始祖鳥は木の枝に止まれなかった」ということです。  現生鳥類の多くは親指が他の指と対抗してついているため、木の枝を掴んで止まることができますが、始祖鳥の親指は他の指と並列についているため、木を掴むことができないのです。つまり、木の枝に止まったり、そこから滑空する始祖鳥と言う復元図は「木の枝に止まるタンチョウヅルの絵」と同様、誤りと言うことになります。
 当時のゾルンホーヘンの植物相(干潟で高木が存在しない)を考慮すると、樹上から滑空していた可能性は非常に低いことが以前から指摘されていましたが、今回の発見はそれを裏付けるものとも言えます。

(2)始祖鳥の脚の第2趾は自由に回転する
 恐竜に興味があるかたならばご存知だと思います。これは肉食恐竜、ディノニコサウルス類(有名どころでは映画「ジュラシック・パーク」に登場したヴェロキラプトル)の特徴です。
 つまり、この発見によりディノニコサウルス類と始祖鳥の類縁関係がより強固なものになった、ということになります。

始祖鳥(古生物)について ニュースのバックナンバーと過去の更新履歴

 さらに、引用しているリンクがそれぞれ違うことは模倣でないことを暗示するものです。

始祖鳥生息地:(Science誌 日本語ハイライト:現在リンク切れ)
 http://www.sciencemag.jp/highlights/20051202/index.html
Wikipedia日本語版:(Science誌アーカイブ:Wikipedia英語版の記事と同じリンク)
 http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/310/5753/1483

 どれも間接的な証拠に過ぎません。
 しかし、該当記事に関して当地がWikipediaを模倣したという証明は、これらを全て否定しない限りなされえないのではないでしょうか。

※2007年1月31日 年号の誤表記を修正(2006年→2005年)