翻訳『羽毛恐竜ミクロラプトル・グイの複葉翼平面図および飛行能力)』

このコンテンツについて - 2008年5月7日 -
 このコンテンツは,Sankar ChatterjeeおよびJack Templin によるProceedings of the National Academy of Sciences(2007), 104(5): 1576-1580. の内容を,私(始祖鳥)が日本語に翻訳したものです.

 以下,原文の翻訳です.

「羽毛恐竜ミクロラプトル・グイの複葉翼平面図および飛行能力」

Biplane wing planform and flight performance of the feathered dinosaur Microraptor gui
(羽毛恐竜ミクロラプトル・グイの複葉翼平面図および飛行能力)


Sankar Chatterjee
R. Jack Templin

*Department of Geosciences, Museum of Texas Tech University, P.O. Box 43191, Lubbock, TX 79401-3191; and ‡2212 Aster Street,
Ottawa, ON, Canada K1H 6R6
Communicated by Lynn Margulis, University of Massachusetts, Amherst, MA, November 17, 2006 (received for review October 24, 2005)

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     中国の前期白亜紀における四枚羽根のドロマエオサウルス,ミクロラプトル・グイ(Microraptor gui)は,鳥類の飛行の樹上滑空起源に強固な証拠を提供する.それは前肢だけではなく,後肢にも非対称の飛行羽毛を保持していた. 以前に発表された復元は,横に延長された脚によって支えられたミクロラプトルの後肢の翼が,四翼様式で翼の第2の組を形成したであろうことを示す.しかしながらこの翼設計は,後肢の矢状方向に平行な姿勢を必要とする周知の獣脚類後肢の関節と矛盾する. ここで我々は,揚力を作成するためのその羽毛位置づけと通常の獣脚類後肢姿勢と合致する,ミクロラプトルの後肢の翼の(前者に代わる)新たな平面図を提示する. この復元で,ミクロラプトルの翼は,おそらく飛行中はくいちがい複葉(staggered biplane)形状に似ており,背側の翼で形成される前の翼と,中足骨翼は腹側のそれを形成した. ミクロラプトルの飛行能力のコンピュータシミュレーションは,水平な羽がついた尾部が追加の揚力および安定性とピッチ制御に寄与し,その複葉翼は波打った「フゴイド型」樹間滑空に適合したことを示唆する.


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 獣脚類恐竜からの鳥類における動力飛行の進化は,このグループの生物学成功に貢献した重要な適応のブレークスルーとして認知される. 非鳥類恐竜から初期の鳥類までの翼のデザインの変遷は,近年の中国からの豊富な化石記録から解明され始めている. 数百もの小さな,完璧に保存された,1億2500万年前に「白亜紀のポンペイ」で窒息させられて死んだ羽毛を持つ獣脚類が,中国北東部・前期白亜紀の熱河層群(Jehol Group)で発見された. 解剖学的,および系統発生論的な見地の両方が,小さい翼をもつ樹上生活性の獣脚類から,完全に翼がある活動的な飛行性鳥類までに及ぶ構造を示す. それらは,地上疾走(グラウンド・アップ:地上からの離陸)仮説(3–5, 7–11)よりも,樹上生活性の(ツリー・ダウン:樹上からの降下」)に好ましい,羽毛と飛行の起源への新しい洞察を提供する.

 これらの近年の発見の間において,ミクロラプトル・グイ(Microraptor gui) は,前肢と後肢両方が関係していた滑空段階(12)を経由して樹上生活性のドロマエオサウルスが動力飛行を獲得した可能性についての,最も良い証拠を提供する. 2組の翼を持つ前後肢が,それぞれ前肢と後肢両方の遠位の部分において長い非対称の飛行羽毛を持ち,広い翼面(airfoil surfaces)を展開するミクロラプトルは,おそらく効率的な滑空者であった. 前肢に12枚と後肢に14枚の初列風切羽があり,それは揚力(lift)のための空気力(aerodynamic force) を生成するために長く非対称である. 最も長い初列風切羽は蹠骨の上の19cm(Fig. 1A)のものである. 鉤型の組み合っている刺部は非対称の羽毛に強さと柔軟性を与え,飛行中に空気が通過するのを阻止した.(Fig. 1B) 翼の近位の部分,および後肢の輪郭羽毛は対称の羽根を持っている.(Fig. 1C)

 典型的な正羽が,いずれかの側で広く柔軟な羽根の,長く先細になっている中央羽軸で構成されている. 羽毛は飛行羽毛において中央の羽軸に関して非対称であり,前縁部(leading edge)は後縁部(trailing edge)より狭く,強固である. 気圧(air pressure)が前縁部に沿ってより大きいため,この非対称さが羽毛の翼型断面を提供する. 非対称の羽毛における空気力学の機能は,羽毛の揚力発生における空力弾性安定性(aeroelastic stability)に帰因する. 揚力が羽毛領域の正面4分の1に集中しているため,羽軸の正面の領域は,羽軸が揚力発生羽毛上における空気力(aerodynamic force) に応じて柔軟にねじれる傾向を抑制する. (羽毛の)非対称さは羽毛が揚力発生に適合している確かな徴候である.

 徐およびその他(Xu et al.) (12)(Fig. 1C)が四枚羽根のミクロラプトルの手足を昆虫と滑空魚類のものに類似する直列翼(タンデム翼:tandem wing)として復元した――(その復元では)すべての翼は四翼様式で水平に広げられる. 彼らはミクロラプトルが地上で不器用であったことを示した――足の上に長い羽毛を持っていたため,歩くか走るのには難儀したであろう,そして地上で攻撃されやすかったであろう. それはおそらく樹上生活者であり――それは飛行の樹上生活性の理論を支持するものである――重力は飛行に要するエネルギーの主要な供給源であった.

推定1kgの(生体)体重,体長77cmのミクロラプトルの模式種標本は,追加の揚力を提供しピッチ制御のできる,二面に非対称の尾羽を持つ長い骨質の尾部を保持する. しかしながら,徐およびその他(Xu et al.) (12)はミクロラプトルがなぜ滑空者であったか,そしてそれがどのように飛行の間にその翼を使ったかについては論じなかった. 徐およびその他(Xu et al.) (12)(Fig. 1C)による,ミクロラプトルの後肢の横に伸ばした生体復元は,空気力学的に非能率的であり,それが活発な討論と推測を引き起こしたほどに(13)解剖学的に異常に思われる. 我々の考えは,中足骨の上にある非対称の飛行羽毛の前縁部は,――彼らの復元とは違い,横方向でなく――前肢のものと同様に気流に正対すべきである. (鳥類を含めた)すべての獣脚類において――ミクロラプトルの後肢は横に延長されたポジションでの復元とは異なり――垂直そして矢状方向に平行な足どりで,維持される.
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    Fig.1. M. gui の羽毛.
    (A)M. guiの模式種.[中国古脊椎動物および古人類研究所(IVPP) V13352]として収蔵.[徐およびその他(Xu et al.) (12)を改変](スケールバーは5cm)
    (B)前肢における長い羽毛,および中足骨部が飛行のために進展していた;それは小羽枝の組み合わせに伴ってで非対称であった.
    (C)翼と後肢の残りで,羽毛は対称である.(10)

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後肢の姿勢および中足骨羽毛の位置づけ

 鳥類を含めたすべての獣脚類において,腰・膝・足首関節は安定しており,後肢の矢状方向に平行な動きにおいて――わずかな外転と内転以外,広範囲の屈曲と伸展をほとんど制限する――完全に合同である. 大腿骨の頭部は円筒状で,穴の開いた寛骨臼に嵌めこまれ,矢状方向に平行な平面からの逸脱をほとんど許さない.(14) 大腿骨が矢状方向に平行な平面から水平に外転されるとき,腰関節はすぐに非整合となる. ミクロラプトルにおける矢状方向に平行な後肢の状態は模式種標本で立派に維持されており(Fig. 1A),,水平な復元(12)とは極めて異なるが,脛骨羽毛(15)を示す始祖鳥(Archaeopteryx) ベルリン標本のそれに似ている.(15) (see Fig. 4).

 ミクロラプトルで最も独特な特徴は,中足骨にある完全な長さの――始祖鳥(Archaeopteryx) ,羽毛を持つドロマエオサウルス,近代的な鳥類においては知られていない――長い非対称の飛行羽毛の存在である. これらの羽毛は脚部の水準より低く伸び,地表での移動を妨げるため,徐およびその他(Xu et al.) (12)によって復元された中足骨の羽毛の位置づけは問題である. この復元では,中足骨の上の初列風切羽の前縁は揚力を産み出さず,滑空の間は横に向いていることになる. なぜならば,それらが前翼のそれのように非対称の飛行羽毛であるから,狭い前縁部が揚力を増すために気流の方向に大して正対すべきである. 我々は,前肢の部位のような効果的に揚力を発生する空力翼(aerofoil)となるために,水平な平面を横切る生態に適応していたが,化石化の際に後ろ向きに倒れたことを示唆する. 対称の脛骨の羽毛は同じく後ろ向きの様式で保存されている. 生体において,気流に対してこれらの輪郭の羽毛は背部に突き出されるべきである.

生物学上,および航空力学上の3個の制約がミクロラプトルの後肢の翼のデザインについて重要な手がかりを提供する:
(i)後肢は(鳥類を含む)すべての獣脚類のように,矢状方向に平行な平面の中で方向づけられ,横に広げることができなかった.
(ii)後肢の翼はその様式で歩行する間はきちんと簡潔にまとまらなければならない――中足骨羽毛が脚部の向こうの羽毛へのダメージを防ぐため,腹部に突き出されないこと.
(iii)中足骨の上の初列風切羽の前縁は前肢と同じく正面に面すべきである――この前提はそれぞれの羽毛が空力翼の役割を果たすことに適応し,同様に翼全体のキャンバーを維持し,そして空力的な荷重を載せるために必要とされる.
最初の2つの制約は,徐およびその他(Xu et al.) (12)(Fig. 1C)の最初の後肢復元を否定する.

 我々は,飛行中のミクロラプトルにおけるいくつかの可能な後肢の位置づけを提示する.(Fig. 2A–D) 我々は(ミクロラプトルの)飛行において鳥類のような後肢の姿勢を捨てた――その体制では初列風切羽が揚力を発生するには非生産的な方向(腹部方向)を向き,滑空の妨げとなる. 他の選択肢の中では,我々は,空から獲物を捕えてそれを運ぶときの現生の猛禽類の姿勢に似た,後肢をZ型姿勢で維持する復元,Fig. 2Dの方を好ましく思う. この姿勢においては,大腿骨は体に近い水平に準じた位置で保持され,前に向けられるであろう――この羽毛が後方に適応させられ,平滑な表面を形成するために体の外郭と結合し,この空力翼は空気をスムーズに流して抗力を減少させること可能にする. 我々は,脛骨に付いている対称型の羽毛は,近代的な猛禽類のそれのように,後方に伸ばすことにより脛骨の環状の軸を流線型断面とし,空気の滑らかな流れを維持していたことを提案する.(Fig. 2 E–G) 脛骨の整流がない場合,縦の脛骨における円筒状の前縁は,40%近く抗力を増やしたであろう.

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    Table 1. ミクロラプトル(M. gui), ニクトサウルス(Nyctosaurus gracilis), アメリカグンカンドリ(F. magnificens) の航空力学的データ.
    M, 質量; N, ニュートン; S, 翼面積; WL, 翼面荷重; IVPP, 中国古脊椎動物および古人類研究所; YPM, イエール・ピーボデイ博物館

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複葉翼の形状

 ミクロラプトルは前翼のすぐ後方の同一平面に脛部の翼を延長できなかったため,おそらくより解剖学的かつ空気力学的に安定した状態として,腕よりも低い位置にその脚部を維持した. 矢状方向に平行な状態と後肢羽毛の位置づけが,解剖学および航空力学上のモデリングに両方に基づいて修正されるなら,ミクロラプトルの翼は,前翼が背面の翼を形成し中足骨翼が腹面の翼を形成する,くいちがい翼複葉機(staggered biplane)の側面図に似ている. ミクロラプトルの中足骨翼は脊椎動物において唯一無比であり,より以上の論評を必要とする. 後肢をZ型にする位置づけにより,中足骨の上の羽毛は横に伸ばされ水平になり,腹側翼を形成する. 腹側の翼は,上の翼よりも数度多い角度(上向きの迎え角)を持つために水平面から少し上向きで,これは複葉機理論(長い尾部によって補償される不安定な状況)におけるデカラージュ(decalage:複葉機の上下翼の取付角差)として知られている. 低い方の翼は,背側の翼(腕のもの)との関係において,等しくない翼領域と異なった翼弦を伴い,くいちがい翼複葉機(Fig.2G)のようにやや後方の腹側に配置され,そして腹側翼面積(0.042 m2)は背の翼(0.089m^2) のおよそ半分程度である.(Fig.2J) ただ,その翼の両方を広げることによって,ミクロラプトルは筋力なしで機械のグライダーとほぼ同じ方法での滑空が可能であったであろう. 強固な中足根の足首関節は中足骨に付く腹側翼のねじれを妨げるであろう. 鳥類の小帯に類似した靭帯が飛行中に後肢翼の羽毛位置を保ち,使用中でないときは,折り畳みを補助することができた. ガイドとしてFig. 2D を使い,我々は翼 (飛行機の)平面図の複葉形状を示すため,滑空姿勢におけるミクロラプトルの上面図を再構築する.(Fig. 2 J)

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    Fig.2. ミクロラプトルの翼の平面図.
    (A-D)可能性の有り得る,飛行中の後肢のさまざまな姿勢.
    (A)現生の鳥類のように後方に向けられた後肢.
    (B–D)複葉形状.
    (B)後方に傾斜した位置の後肢.
    (C)前方に傾斜した猛禽類の捕食時における位置の後肢.
    (D)ピッチ制御のために上方へ傾いた尾部を伴う,体のシルエットとZ型にした後肢の側面図.
    (E)脛骨-腓骨の断面は,尾側に羽毛を加えることによる円筒状の脛骨の整流および延長効果を示す.
    (F)円筒状の構造は,後流が渦の中へと分断され,乱流を作り出すことにより,気流に対して最大の抵抗を提供する.
    (G)円筒状の構造の前縁と後縁の空間を埋めることは,猛禽類における羽毛に覆われた脛骨の場合と同じく,気流を改善する.
    (H)猛禽類,ハヤブサの獲物を襲う状態.
    (I)ミクロラプトルとの比較のための典型的なくいちがい翼複葉機(ステアマン75).1920年代の複葉航空機で,上下翼間のワイヤー,支柱,その他による大きな上積みの抗力があり,それが結局はニッチな用途を除いて,複葉を時代遅れにした.このような抗力を引き起こす構造はミクロラプトルには欠落していた.
    (J)M. gui(IVPP V13352)の生体復元の上面図は,形態学的情報と後肢羽毛の配分(左)とFig. 1Aに基づいた滑空中の後肢の位置づけ(右)を示す.大腿骨上腕骨の上の近位の羽毛が推測される(データは ref.12より).



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    Fig.3. ミクロラプトルの飛行能力.
    (A)ミクロラプトルの出力曲線(安定した水平飛行). 水平なラインは連続で発揮できる最大の,利用可能な推定出力を表す. Curve 1はストリームチューブ理論(20)からのもので,Curve 2はより単純な航空機理論(22)に基づく. それらは6 m/sより大きいスピード(領域)をカバーする.
    (B)ミクロラプトルの滑空指針,海鳥(グンカンドリ,M 1.5kg),翼竜(ニクトサウルス,M 1.85kg)と比較(ref.22; Table 1 の航空力学上のデータを参照)
    (C)止まり木からのミクロラプトルの滑空軌跡. Curve 1はフゴイド滑空を示す. Curve 2は高い抗力を伴う最終高速引き起こしを示す. Curve 3はピッチダンパーON の状態での滑空軌跡を示す. Curve 4はパラシュート降下の弾道を示す.



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飛行能力

 ミクロラプトルは,飛行できたことを示唆するいくつかの解剖学の特徴を示す(12): 四肢のそれぞれ遠位の部分における細長く非対称の羽毛(17), それぞれの前縁が互い鋭角に向けられる肩甲烏口骨(※)(18), 翼の緩やかな背腹の運動のために横に面する関節窩(19), 飛行筋肉付着のための,一体化し広がった胸骨, 骨化した胸の肋骨 打ち下ろしの間に胸の空洞にかかる圧縮応力に抵抗するためよく発達した鉤状突起, 強く湾曲した外側の中手骨, そして初列風切羽付着のために平らになった中央の指である.

 ミクロラプトルの飛行能力を分析するために,我々はいくつかの飛行パラメータ(Table 1)を使ってストリームチューブモデル(20)に基づいている2つのコンピュータアルゴリズム,ANFLTPWR (animal flight power)とANFLTSIM (animal flight simulation)を使用した. いかなる飛行動物,固定翼の航空機,あるいはヘリコプターも,対気速度に対して水平飛行のために必要とされる力のグラフは,中央よりも両端が高いU字型の曲線を描く. ANFLTPWR(animal flight power) プログラム(20)を使って,我々はミクロラプトルの出力曲線(Fig.3A)を生成した,そこではUの形をした曲線は安定した水平飛行のために必要とされる力であり,水平な線は利用可能な推定最大出力である. 2本の曲線,要求される出力と利用可能な出力が,9–15m/sでほぼ一致することから,限定された安定飛行は理論的に可能であったかもしれない.
 滑空性能は正反対の曲線を示す――それは水平速度対沈下速度のプロットである. 我々はこれらの値を計算するために,ANFLTSIM (animal flight simulation) プログラムを使用した.(20) Fig. 3Bに,ミクロラプトルの(沈下速度対水平速度についての)潜在的な滑空性能を示す. このプロットによると,ミクロラプトルはおそらく類似の大きさの能力の高い滑空者(21)――アメリカグンカンドリ(Fregata magnificens: 体重1.5kg),白亜紀の翼竜であるニクトサウルス(Nyctosaurus: 体重1.86kg)――ほど効率的でない中程度の滑空者であった.

 解剖学上の証拠がミクロラプトルが地上あるいは走っての離陸に適応していなかったことを示す――翼を持ち上げるための烏口上筋滑車が欠落していたためである. さらに,走っての離陸は腹側にある中足骨の翼に損傷を与えるであろう.(12) 我々はストリームチューブ(20)と航空機(22)モデルの両方を使用し,止まり木からのミクロラプトルの離陸能力を計算した.(Fig. 3C) 鳥類が高い場所から離陸するとき,それらは過大な力を使うように思われない;それらは最初に高さを失い,次に2本の止まり木の間をスイングするために大きい振幅の波打つ動きで――これはフゴイド滑空として知られている――上へ舞い上がる.(8, 20) Fig. 3Cでは,我々はミクロラプトルのいくつかの滑空経路を,水平発射速度3 m/sから始め,プロットした. Fig. 3C (curve 1)に示されるように,かなりの高度喪失が発生している,しかしそれらはフゴイド変動を制御するミクロラプトルの尾部の動きを模擬したピッチダンパー使用のシミュレートによって,最小化される. ピッチダンパーは,スピードの変化に伴う変動を減少あるいは排除するように翼の揚力を調整する. フゴイド滑空の使用により,ミクロラプトルは40メートルの水平な距離をカバーする波打つ飛行で,木から別の木までを移動できた可能性がある. この移動手段はミクロラプトルにとって非常に効率的であったであろう. 長い羽がついた尾部は,一般的な安定性と同様,ピッチを押さえることを提供するであろう. 引き起こし中の最低速度は,着陸に対して安全であったと思われる4.5 m/sである.

 結合された翼は,致命的な墜落に耐えるためのパラシュートの役をするにはあまりにも小さいように思われる. 我々はミクロラプトルが横方向の力を生成しない間,伸ばしている翼で高い抗力を持つ単調なパラシュート降下のための軌道を,Fig. 3Cにおけるcurve 4として図上に記入した. 水平方向の跳躍のため,弾道は単純な縦方向の線ではない. 終端速度の8.7m/sは,潜在的に固い表面に対しては破壊を伴う速度(crashing speed)であるが,水増しされた地被植物の上か柔軟な木の枝の上に着陸することに対しては安全である.

 滑空するミクロラプトルにおいて,縦に保持される脛骨を羽毛で整流する(流線型にする)――後方の乱流の空間が埋められ,前方の領域が丸められるか先細にされる――ことにより,抗力が劇的に減少したであろう.(Fig. 2 E–G) 脛の羽毛が無ければ,脛骨の断面は環状であり,骨の後ろの気流は,渦巻きに向かってこなごなになり,乱気流を産み出すであろう.脛骨羽毛の存在により,ミクロラプトルは足がZ型に維持されたときに抗力の40%を減少させることができた.[補足情報(SI)を見よ]

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    Fig.4. エウマニラプトラ獣脚類の単純な分岐図は,選択されたタクサ内での足の羽毛の分布を示す.(refs.23, 25, 26を改変)
    ミクロラプトルにおいて,輪郭羽毛は大腿骨,脛骨と中足骨に存在しているが,非対称なのは中足骨羽毛だけであり,それは複葉型式の腹側の翼を形成する;大腿骨と脛骨の上の羽毛は対称である.(12) ペドペンナにおいて,長い中足骨の羽毛が複葉レイアウトの腹側翼を形成するごとくに存在しているが,しかし,それらは対称であるように思われる.(25) 始祖鳥(Archaeopteryx) において,長い輪郭羽毛は大腿骨と脛骨の上に存在するが,それは中足骨に対して失われているように思われる.(15) この段階で,おそらく単葉デザインの進化が起きた.無名のエナンティオルニス類鳥類において,長い輪郭羽毛は大腿骨と脛骨の上に存在しているが,中足骨領域で欠落している.(26) ハヤブサのような近代的な猛禽類において,類似した足の輪郭羽毛が整流のために大腿骨と脛骨の上に存在するが,中足骨羽毛は一般に減少しているか,あるいは欠落している.

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議論と結論

 系統発生的に,ミクロラプトルはエウマニラプトラ類(eumaniraptorans)に属し(23),それは一連の羽毛獣脚類および始祖鳥(Archaeopteryx)を含み, ミクロラプトルはそれらと同様に,とげがある羽毛が付着した長い腕と手を所有する.(Fig. 4A) ミクロラプトルは滑空者であったと思われるが,ミクロラプトルのこの独特な複葉翼形状の解釈には,系統発生上の見地からのものと生体機構上の見地からのものの2種類が存在する: (i)鳥類の飛行は,後肢がその滑空機能から(腹側翼の喪失で)切り離され単葉形状になる前に,ミクロラプトルのような複葉段階を通過した (ii)複葉翼形状は,空力羽毛の発達において滑空に手を出したディノニコサウルス類の1つの派生形であり,失敗したか一時的な試みを表すものかもしれない
 両者のシナリオには等しく可能性がある. しかしながら前者の意見は,現時点の化石と広範囲の系統発生の状況に関する近年の証拠から――鳥類の飛行進化における後肢から前肢が推力優位となる緩やかな移行を示している――支持を見出す. カウディプテリクス(Caudipteryx)(24),シノルニトサウルス(Sinornithosaurus)(4),クリプトヴォランス(Cryptovolans)(5)を含むいくつかの中国のマニラプトル類は,近代的な猛禽類と同様に後肢に輪郭羽毛を示しており,おそらく脛骨羽毛は整流のために使われた. 近年の,中国の,中期~後期ジュラ紀からのペドペンナ(Pedopenna)(25)――長い中足骨に羽を付けた別の羽毛マニラプトラ類――の発見は,始祖鳥(Archaeopteryx) の前段階にあたる滑空ドロマエオサウルスの複葉翼形状を支持する.(Fig. 4) 始祖鳥(Archaeopteryx) は脚部に,特にベルリン標本の脛骨領域において,長い輪郭羽毛を示す; 見たところ中足骨の羽毛は欠落しており,それは広い前翼と,追加の揚力を生み出すい非対称の尾羽を持つ尾部により補完された. 脛骨の長い輪郭羽毛は中国からの白亜紀初期の無名のエナンティオルニス類鳥類で同様に知られているが,(これも)中足骨羽毛が欠落しているように思われる.(26) 対称性の輪郭羽毛は,現生の猛禽類における大腿骨と脛骨の上だけではなく,中足骨の近位の部分にも存在する.(Fig. 4) 他の鳥類と異なり,猛禽類は空中からの襲撃の準備と獲物の捕獲輸送の間,縦の平面上に脛骨をぶら下げ,後肢をZ形状で保持する.羽毛の「ズボン」は捕食性鳥類の目立つ衣装であり,空襲の間,獲物を捕まえる足を流線形に保つ. ミクロラプトルは,現生の猛禽類の飛行における足の羽毛の役割について,決定的な手がかりを提供した.

 航空機設計者は,いつも偶然に,自然の飛行に関する「発明」の多くを模倣した. 前縁スラットは鳥類の小翼(alula)のように失速を遅らせる;鳥類の足はエアブレーキの役割を果たし,整流により抗力を減少させる. 今,ミクロラプトルがライト・1903・フライヤーの1億2500万年前に複葉を発明したことはありそうに思われる.


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方法論

 翼幅(b),体長,前翼(主翼)と尾翼面積(S)のような種々の飛行パラメータが,ブラジルのリオデジャネイロ国立博物館(National Museum of Rio de Janeiro)にて模式種標本の高精度のキャストから計算された. 後肢の翼面積は,ミクロラプトルの修正された背部の復元から見積もられた.(Fig. 2J) 我々は,ロルフ (http://life.bio.sunysb.edu/morph/) によるコンピュータ・プログラムによって,背の様相における体の輪郭をデジタル化し,結合された翼面積(前翼+後肢の翼)を尾部羽毛の面積と同様に見積もった.(Table 1) 我々のミクロラプトルの質量を見積もる方法には,アタナソフ(Atanassov)とシュトラウス(Strauss)によって提案された多変量解析を使用した. 予測されるミクロラプトルの質量は,0.95kgであると算定された――それはおよそ現生の中サイズの捕食性鳥類(すなわち,クロノスリ(Buteogallus anthracinus)あるいはオオタカ(Accipiter gentilis) )の質量である.(27) ミクロラプトルの飛行能力を分析するために,我々はストリームチューブモデル(20)に基づいて,そして同じく上記の二種のコンピュータアルゴリズム, ANFLTPWR((animal flight power) と ANFLTSIM(animal flight simulation)を使用した. 例外なく,胴体および翼の抗力係数は,レイノルズ数の関数であると計算される.(詳細な方法論は§, ref.20 と SI を見よ)



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27. Sibley DA (2000) The Sibley Guide to Birds (Alfred A. Knopf, New York).

原文:
Chatterjee, S., & Templin, R.J. 2007. Biplane wing planform and flight performance of the feathered dinosaur Microraptor gui.
Proceedings of the National Academy of Sciences, 104(5): 1576-1580.
訳者注
※1
 「planform」は航空機の設計の態様(翼の位置や胴体のかかわりなど)そのものを包括する意味も含む言葉なのですが、直接対応する簡潔な日本語が思い当たらなかったため、本稿では辞書的な「平面図」として訳しています。

※2
 この論文にはいくつかの点で疑問符がつきますのでそれを追記.(2009年1月17日)

(1)複葉の効果を過大に見積もりすぎている

 この論文の計算では,(Table 1)および「方法論」を見ると分かりますが,手の翼と足の翼の翼面積を単純に合計し,それをもとに計算を行なっています.

  しかし,この論文で言うような複葉形式をとった場合,揚抗比(あるいは滑空比)は同一条件・同一翼面積の単葉に対して確実に悪化するため,この論文で主張されているパフォーマンスは発揮できないことが予想されます.

 単葉ならば翼1枚分で済んでいた誘導抵抗(induced drag),干渉抵抗(interference drag)が複葉では翼2枚分になるためです.これを考慮にいれた場合,この論文の8掛けの数字が出れば御の字でしょうね.訳者(始祖鳥)自身はもっと低い値になると見込んでいます.

 さらに言えば,小さな生物の環境である低レイノルズ数(空気が粘りが増す)の世界では翼一枚あたりの抵抗が増えるため,複葉にとって事態はさらに悪化することが予想できます.

(2)枝からの初速である3m/s(最低速度)という数字は楽観的ではないか

 始祖鳥のデータを外挿した場合,ミクロラプトルが本当に3m/sという初速度を作れるかに疑いがあります.始祖鳥(翼長70cm, 体重300g)の走って出せる最高速度は2[m/s]とされています.動物が静止状態から発生できる初速度は,おおむねその動物が走って出せる最高速度の半分(あるいはそれ以下)と考えられますから(下記に実例),始祖鳥の静止状態からの初期ジャンプ速度は1[m/s]と予測されます.
 これに対して,今回の論文のミクロラプトルのパラメーターは3[m/s]で,これは実に始祖鳥の3倍に相当する速度です.  始祖鳥(翼長70cm, 体重300g)よりも1.36倍の翼長(95cm)を持ち,3倍を超える体重(950kg)を持つミクロラプトル.ミクロラプトル・グイ(翼長95cm, 体重950g)を始祖鳥と相似系と仮定し,2乗3乗則をあてはめるなら,体重が3倍→筋肉の断面積が32/3=2.08倍.筋力はおおむね筋肉の断面積に比例しますから,パワー・ウェイトレシオは始祖鳥の2/3に低下することになります.

 パワーウェイトレシオが始祖鳥の2/3に悪化しているのに,始祖鳥の3倍の速度(3[m/s])を出すのは非常に困難でしょう.

【補足】静止状態から発生できる初速度と,走行で出せる最高速度の関係

ここではヒトを実例としてあげます.下記のデータの一部を拝借します.
高校生の体力・運動能力調査結果(平成9年度 茨城県) 高校三年生男子
 垂直とび 61.78[cm]
 50m走 7.42[s]

まず,垂直跳びの高さからは,等加速度運動の式より,速度ゼロの状態から発揮できる最大速度を求めることができます.
v2-v02 = 2as

-v02 = 2*(-9.8)*(0.6178)
v0=√(2*9.8*0.6178)=3.479781

作り出せる初速 3.48[m/s]

また,50m走の所用秒数からは,走行で出せる最高速度の近似値を求めることができます.
Vmax=50/7.42=6.73854
トップスピード 6.74[m/s]

 つまり,ヒトにおいて静止状態から発生できる初速度はトップスピードのおよそ半分(52%)となります.
 ※ヒトは数歩で最高速に達する加速力に優れた動物なので,他の多くの動物ではこのパーセンテージはこれよりも低くなります.


(3)この復元では,この動物は近い木に飛び移れない

(Fig. 3)ではU字の軌跡を描いて飛行する姿が描かれていますが,重力加速度によって揚力が有効に働く速度まで加速する都合上,U字はある一定以上には短縮できません.また,U字の底部(Fig. 3によると水平距離にして20m)では速度が出過ぎているため,上昇に転じて安全な速度まで減速した時点でようやく別の木に止まることができることになります.つまり,この論文のミクロラプトルは,20mより近くにある木には飛び移れません.

(2)地上からの離陸と比較検討しているわけではない

 この論文はなぜか地上滑走モデルとの数値による比較検討を避けています.著者コンビによる,アルゲンタヴィスについての論文では,地上からの離陸や向かい風による補正が考慮されているのにもかかわらず,です.
 著者らの地上滑走モデルへの疑義は「走行時に羽毛が邪魔となる」「烏口上筋の欠落による推力不足」といった,数値とはあまり関係のない部分に留まっています.

 なお,特定の環境に限るなら(例:干潟や平原など)ミクロラプトルほども大きい生き物では地上での疾走離陸モデルが確実に有利になります.動物は常に向かい風を利用できるためです.もちろんこの論文のフゴイド滑空のようにただ一回の飛行で高度10[m]を失うこともありません.(しかも(1)(2)で指摘したとおり,この論文の見積もりは下駄を履かせられたかなり甘いものです.)

(3)中足骨の羽毛についての二重基準

 論文中で,地上滑走説を否定する根拠のひとつとして彼らはこう述べています.
「彼らはミクロラプトルが地上で不器用であったことを示した――足の上に長い羽毛を持っていたため,歩くか走るのには難儀したであろう,そして地上で攻撃されやすかったであろう.」

 ところが,「後肢の姿勢および中足骨羽毛の位置づけ」内ではこう述べています.
「鳥類の小帯に類似した靭帯が飛行中に後肢翼の羽毛位置を保ち,使用中でないときは,折り畳みを補助することができた.」

 靭帯による羽毛の伸展能力を肯定するのなら,その伸展能力を地上疾走のために使うこともができるのではないでしょうか.
 もちろん
 また,地上滑走説を否定するもうひとつの根拠して彼らはこう述べています.

 解剖学上の証拠がミクロラプトルが地上あるいは走っての離陸に適応していなかったことを示す――翼を持ち上げるための烏口上筋滑車が欠落していたためである.

 まず第1に,地上疾走説では羽ばたきが必須ではありません.自力で走るか向かい風を利用するかによって十分な対気速度を確保できれば,少なくとも失速速度に達するまでは滑空が可能です.

 第2に,翼を肩から上に持ち上げる烏口上筋がなかったとしても,翼を打ち下ろすための筋肉は存在するため,翼を振り上げての深い羽ばたきが,回数の多い浅い羽ばたきに代わるだけです.肩から翼を持ち上げるストロークの分だけ時間が節約されるため,単位時間での羽ばたき回数は増加を見込めます.羽ばたき回数が相応に増えればトータルの推力に変化はありません.  ただ,すばやい動きを繰り返すことになるので,長い打ち下ろしを可能にした現生鳥類よりも持続力がないことは予想できます.

(4)この論文の使用プログラムを,この論文の著者以外が使っているのを見たことがない

 この論文で使われたとされる ANFLTPWR((animal flight power) と ANFLTSIM(animal flight simulation)について,Google Scholar,および普通のGoogle検索でそれぞれ探してみたのですが,これらのプログラムはいずれも,この論文の一人であるTemplinを除いて,誰も使っている様子がありません.

 計算結果の真偽はともかく,これらのプログラムは少なくとも一般的なものでも実績のあるものでもないようです.

【追記】

 このシミュレーションがパラメータに下駄を履かせてさえもかなり無理がある結果となっているのは(Fig.3 の再底部で15m沈み,最終的に10mの高度を失う豪快な滑空軌跡を参照),ミクロラプトルが始祖鳥などよりもさらに大きく重いことが直接の原因です.
 鳥類の飛行について高所降下起源を唱えるならもっと小さな生物を仮定すべきで,ミクロラプトルは基盤的滑空者として考えるにはあまりにも大きいのです.

 体が小さいことは降下起源説を有利にします.体が大きい場合,静止状態の初速度(ジャンプ力)と最高速度(全力疾走)の差が大きくなるため,重力に頼るよりは「走ったほうが良い」状況が生まれやすいのです.それに対して,体が小さいと初速度と最高速度の差は小さくなり,また滑空に必要な速度も減少するため,重力に頼った降下が現実味を帯びてきます.