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生きた化石探索記



 いわゆる『原始的な形質を残しつつ、現在も生き残っているもの』
あるいは『つい最近まで生き残っていたらしいもの』を取り上げるコーナーです。

第1回 『ラダ・ニーバ』 1998年2月7日執筆 1998年3月27日改稿
第2回 『PZL-WILGA』 1999年5月5日執筆
第3回 『蒸気トラクター』 1998年12月30日執筆


『蒸気トラクター』
1998年12月30日執筆

わたしたちが『トラクター』といった場合、ガソリンやディーゼルを燃やして走る内燃機関の農作業車を思い浮かべます。
 しかし、内燃機関が身近な存在になる前にも、『トラクター』は存在しました。日本において農業の機械化が進んだのは先の大戦以降のことですが、英連邦諸国では農業に動力機械を使うという発想が古くからあったのです。
 もちろん当時の内燃機関はまだ安価ではなく、技術的にも確立されてはいませんでした。しかし、蒸気機関は鉄道ですでに実用化されていましたから、これに車輪をつけてやれば、作業用動力車の完成です。

この農業機械『トラクション・エンジン』は数十頭の馬にも匹敵する能力があるとうたわれ、事実そのとおりの働きができましたが、運用のしやすさの点に重大な問題をかかえていました。
 運転に蒸気圧が高まるまで長時間の予熱が必要なこと、水の補給を頻繁にしなければならないこと、メインテナンスが面倒なこと、そして不経済なこと――残念ながら、かれらは進化の空隙をうめる存在でしかなかったのです。そして、内燃機関を搭載した、小型で高性能で手間のかからないライバルたちに駆逐され、早々と姿を消してしまいました。

このトラクターには、次のような打刻がうがたれています。

BURRELL TRACTION ENGINE
8H.P. SINGLE CYLINDER
BUILT IN ENGLAND 1909

 製造時機から考えると、この車体は最後の個体群のひとつだったのかもしれません。
 このトラクターも今はもうその使命を終え、博物館にその巨体を休ませているのみです。

【注釈】
 これは1990年ころに撮影した写真なのですが、この車体には撮影の数年前まで実用に供せられていた形跡があり、ナンバープレートまでついていました。
 物持ちが良すぎます。(^^;
 おそるべし、ニュージーランド。




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