始祖鳥のさえずり |
[次の月の日記] |
第1回 | 『巻頭言』 | 1998年2月10日(火)執筆 | |
第2回 | 『日記も2日目です』 | 1998年2月11日(水)執筆 | |
第3回 | 『3日目なの。』 | 1998年2月12日(木)執筆 | |
第4回 | 『ついに4日目』 | 1998年2月13日(金)執筆 | |
第5回 | 『5日目やねん。』 | 1998年2月14日(土)執筆 | |
第6回 | 『6日目ざんす』 | 1998年2月15日(日)執筆 | |
第7回 | 『7日目でごわす。』 | 1998年2月16日(月)執筆 | |
第8回 | 『ついに1MB突破』 | 1998年2月17日(火)執筆 | |
第9回 | 『寒くなってしまった。』 | 1998年2月18日(水)執筆 | |
第10回 | 『今日はちょうどいい』 | 1998年2月19日(木)執筆 | |
第11回 | 『キーウィのお酒』 | 1998年2月20日(金)執筆 | |
第12回 | 『ビデオカメラのはなし』 | 1998年2月21日(土)執筆 | |
第13回 | 『熱のしもべ』 | 1998年2月22日(日)執筆 | |
第14回 | 『祝・200アクセス突破』 | 1998年2月23日(月)執筆 | |
第15回 | 『熱のはなし(その2)』 | 1998年2月24日(火)執筆 | |
第16回 | 『熱のはなし(その3)』 | 1998年2月25日(水)執筆 | |
第17回 | 『熱のはなし(その4)』 | 1998年2月26日(木)執筆 | |
第18回 | 『熱のはなし(その5)』 | 1998年2月27日(金)執筆 | |
第19回 | 『熱のはなし(その6)』 | 1998年2月28日(土)執筆 |
『巻頭言』 |
1998年2月10日執筆 |
ありがとう、一歩さん。
すぐに然るべき場でお礼と釈明をさせていただこうと思ったのですが、その時点に及んでようやく当生息地に日記コーナーがなかったことに気付きました。
よし、これで反論および釈明の準備は完了です。(^-^)
『時空間旅行センター(生き物の話)』の第一話が書き出せずに悩んでいます。全七話の予定なのですが、あろうことかクライマックスの5~7話が先に書きあがってしまい、頭を抱えています。
本コーナーは固定キャラクターを配した『物語』としての体裁を取らせる予定で、それにあわせた落書きも何枚か書いたのですが、残念ながらわたしは『物語る』適性を持っていないようで、第一話の冒頭ですでに行き詰まっています。
やはり他のコーナーと同じ雑文形式で書くべきかと思いつつ、せっかく書いた5~7話をどうしたものか、頭を抱えている今日この頃です。
日本からアクセスの皆さん、当ページの表示速度はいかがでしょうか。
テキストはできるだけ分割し、画像データもコンパクトにする工夫をおこなってはいるのですが、そちらから見てここは地球の裏側であるため、ネットワーク的な距離もそれ相応に遠いようです。以前日本のサイトへの距離をTRACERTで計ってみたことがあるのですが、どうやら平均して20前後のサーバを経由しているようでした。
もし当生息地の表示の遅さが目に余るようでしたら、こちらで対策を考えますので、ご一報くださればさいわいです。
『日記も2日目です』 |
1998年2月11日執筆 |
このパラグラフは一歩さんに捧げます。
琴鳴さんのホームページで書かせていただいた
拙文
に、昨日付けの
日記
にてご感想をいただきましたこと、ありがとうございます。まさか感想をいただけるとは思っていなかったので、小躍りして喜んでしまいました。
この場でフォローさせていただきますが、わたしは、それぞれのロボットに愛着を感じていないわけではけっしてありません。できれば各論をしたかったのですが(『ゆうれい船』のゴーレムや『ジャイアントロボ』は引き合いに出したかったのです)国外在住ゆえの資料不足のため各論ができませんでした。あやふやな記憶をもとに「こうだったような気がする」というかたちで論を進めるのは避けたかったのです。
そういう事情から、固有名詞をあまり使わずにすむ「総論」のかたちで論を進めたのは、ロボット好きとしてある種苦渋の選択でもあったのでした。一歩さんには見破られてしまいましたね。もうしわけありません。
ご指摘のように、『ホルス』や『巨神ゴーグ』をつきつめてみるのも面白そうです。このあたりについては、帰国後にいずれフォローしたい話題ですね。
ただ、誤解を恐れずに言うのならば、巨大であることは、やはり『力』の象徴ではないかとも考えています。世界を暗示する存在であったり、なんらかの存在を代表するだけのものならば、あえて『巨大』である必要はないような気もするのです。
雑誌『NEW ZEALAND Geographic』に、海浜に営巣する鳥たちが、絶滅の危機に瀕している旨の記事がありました。アジサシやある種のシギは、砂浜のうえに直接卵を産むのですが、これが彼らを絶滅に追い込む原因になっているようです。
なにしろ全く無防備な地面に産卵する習性を持っていますから、ネコやイタチ、イヌ――あとから人間によって持ち込まれた動物――などの、いい餌食になってしまうのです。 たとえ親はそれを免れえたとしても、捕食の脅威やそれにともなうストレスによって産卵数は減少します。また、ヘジホグ(ハリモグラ)――これも後からもちこまれた――が夜中に卵を食べてしまったり、ヒトの出すごみによって増えに増えたセグロカモメが雛や卵を食べてしまったりという具合に、次世代をになうべき個体も消滅しつつある、というのが現状です。特に、アジサシの一種である、New Zealand Fairly Tern(Sterna nereis davisae)に至っては残存個体は30羽に満たないようです。
絶滅の瀬戸際に明滅している生き物は世界中に数多くいます。
それを百も承知していても、この類の話を聞くのは心苦しいことです。
この件は、あらためて別のコーナーで書かせていただこうと思っています。
目下、『ジュラ紀の長い午後』に雑文を掲載すべく、デジタルカメラで撮った画像を整理しているところであります。数日中には脱稿できる予定です。取材したものはその日のうちに、勢いがあるうちに書くべきなのかもしれないな、と痛感しています。
今回の更新で『ベータ版』の文字を表紙から外しました。このページは前回まで限定公開版だったのですが、あるていどコンテンツが安定してきたということで、公開版とすることにしました。それにともなうリンク拡充計画として、みなさんのホームページに向けて当方からリンクを張らせていただくことを、徐々にお願いしていこうと考えています。
とはいっても、この日記を読まれている方々のリンクはすでに張らせていただいているはずなので、ここで書いてもあまり意味がないですね。(だったら書くなよ > 始祖鳥 )
『3日目なの。』 |
1998年2月12日執筆 |
わたしが日記の『地獄道』に足を踏み入れたことを、 一歩さんが 昨日付けの日記 で心配してくださっていますが、飽きたらすぐにやめますのでご心配は無用です。自分では一週間持てば上出来だと思っています。
昨日は飛行訓練のあとに、クライストチャーチの管制塔にお邪魔してきました。管制塔とはいつも無線でやりとりをしているのですが、直接会うのは今回が初めてでした。まるでパソコン通信のオフ会のようです。
とにかく、レーダースクリーンに映る飛行機の数に仰天しました。田舎とはいえさすがは国際空港です。いままで僻地で訓練をしていたせいもあり、衝撃も余計に大きかったです。うっかり管制を聞き間違えたら大変なことになりかねないのだな、と実感しています。
ところで、ここクライストチャーチは世界各国の南極観測の拠点であることもあり、空港には米軍の標識をつけた輸送機が飛び交っています。そんなわけで、先の管制塔見学の際にも米海軍のスターリフターという輸送機が目の前を通り過ぎていったのですが、この輸送機の降着装置には感心しました。さすがは南極の基地に降りるだけあって、降着装置がそりのような格好の枠に車輪を付けたような構造になっているのです。ここでお見せしたかったのですが、昨日はデジタルカメラを持っていかなかったため、写真を撮ることができませんでした。残念です。
しかし、輸送機はロードクリアランス(胴体下と地面の距離)が小さいですね。もはや腹を地面にこすりそうなくらいです。荷物を積むときの利便性を考えてのことなのでしょうか。
ここからは私信です。
一歩さん、当ページの速度について報告してくださったこと、ありがとうございます。どうやらスピードは大丈夫そうですね。ページの引越しをせずに済みそうで、胸をなでおろしています。
それから一歩さんのアクセスカウンタが急増した件ですが、そのうち一日2~3回分はわたしのしわざです。ここのところ、このホームページの更新を毎日行なっているせいもあり、
(1)朝起きてから (2)夕食前 (3)夜寝る前
と、都合3回インターネットに接続しているのです。
『ついに4日目』 |
1998年2月13日執筆 |
以前からこころもとなかった愛車NS400Rのバッテリーが、完全に息絶えてしまったようです。走っても走っても充電されません。方向指示器が点灯しないのはさすがによくないので、近いうちに直さねばなりません。ため息。
明日、『国際南極センター』に取材に行こうと思っています。南極海に棲む生き物について取材する予定です。成果は『ジュラ紀の長い午後』か、『時空間旅行センター』で披露する予定です。
わたし、『始祖鳥』というハンドルは、これでなかなか気に入っています。『子規(ほととぎす)』や『啄木(きつつき)』のようで、そこはかとなく文学的ではありませんか。(そうか?)
ただ、文章力がないというあたりがかなり致命的な問題ではあります。(^^;
『5日目やねん。』 |
1998年2月14日執筆 |
ちょっと思い出したこと。『銀河漂流バイファム』のOPの管制であるが、これがちょっと面白いのである。かの番組を見たのは中学生のころなので記憶が曖昧ではあるが、確かこんなことを言っていたはずだ。
"Main trans-engine No.1,2 on, No.3,4 off, No.5,6,7 on."
ここまで書いて気付いたのだが、あるいは情報処理でいう「エンジン」かもしれない。でもなぜ7つもあるのだろう。トグルスイッチを上げ下げしていたのもよくわからない。謎は深まるばかりである。
さらになんだかわからないのが次のセンテンスだ。
"Okay VIFAM, your number is seven."
しかし、仮にも宇宙を飛ぼうというものが、管制と3、4回『日常会話』で交信しただけで、そのままテイクオフできてしまうことには瞠目を禁じえない。自分で乗っているからわかるのだが、軽飛行機だってあんなに簡単じゃないぞ。
もっとも、そのあたりは偉大な中央演算処理装置『Z80』がなんとかとりはからってくれるのであろう。しかし、わたしは『MC68B09E』のほうが好みではある。相対アドレッシングモードが強力なので、ポジションインディペンデントなプログラムが書きやすいのである。レジスタのスピードも速かった。レジスタの加減算命令などはCPUサイクルで2しか必要としないのである。なぜこんなことを知っているかというと、何を隠そう、わたしは『日立MB-S1』ユーザだったのだ。もちろん今でも持っている。
――って、なんの話だったっけ。
これから取材である。就寝前にあらためて続きを書く予定。
さて、取材を終えて帰ってきたところである。今回の成果はいずれ近いうちに発表できると思う。ところで、さっきのバイファムの話の続きであるが、
"Your number is seven."
"You are seven."
いや、それ以前にコールサインに数字を使うということはありえるのだろうか。
有視界飛行の飛行機だってQNH(気圧による高度の設定)やら高度やら方向やら時間やら風速やら風向やら雲高やらokta(空に占める雲の割合で1oktaは全天の8分の1を示している)やらで、数字だらけの世界である。そんな中で数字のコールサインを使っては、混乱を招くばかりではないか。そのあたりがやはりよく分からない。もうすこし考えを整理してみることにする。
『6日目ざんす』 |
1998年2月15日執筆 |
昨日は『銀河漂流バイファム』について、ちょっと書きすぎたかもしれないと、反省している。ここでフォローしておくが、わたしは件の作品は好きなのである。なんといってもキャラクターが立っているのが凄い。子供たちのキャラクターがそれぞれに魅力的に描かれているのだ。13人ものメインキャラクターを登場させていながら、悲惨なキャラクターがひとりもいないというのは凄いことだ。(このあたりについては、琴鳴さんが論じています。)『ガンバの冒険』(原作:冒険者たち)でも、アニメ化に当たって、十数匹の仲間たちを7匹にまで絞り込んでいることを考えると、これは大変なことである。
ただ、メカニズムのコンセプトに限っていえば、わたしとしてはあまり興味を引かれるものではない。ガンダムの二番せんじ的な印象がぬぐえないのだ。『バーニアを全身に巡らせたロボット』というコンセプトは、『センス・オブ・ワンダー』を喚起するには十分なものではなかったように思っている。メカデザインのコンセプトの面では、『装甲騎兵ボトムズ』のAT(アーマード・トルーパー)や、『機甲界ガリアン』の機甲兵(正確な名前は失念)に心を惹かれる。 『バイファム』のバーニアよりは、『ボトムズ』の回転するターレットの方が(わたしにとっては)はるかに印象深い。視覚センサーのようなものをむきだしで外にだすのは合理的ではないような気もするのだが、映像的な演出を考えるのならばこれほど面白い仕掛けはない、とも思う。
『7日目でごわす。』 |
1998年2月16日執筆 |
臥龍 鳳雛さん、SFのページの拡充も心待ちにしています。
内容の訂正です。
二日前の日記
について、一歩さんから、
誤りの指摘をいただきました。OPにおいてのバイファムの管制シーンは、以下が正しいとのことです。
"Main trans-engine No.1,2 on, No.3,4 off, No.5,6,7,8 on."
一歩さん、ありがとうございます。
さて、『銀河漂流バイファム』についてですが、さらによく考えたら、ラウンドバーニアンが最大3機、パペットファイターが1機(ケイトさんが乗っていた回もあるので2機かもしれないです)しか同時に飛ばないので、そもそも発着艦に管制は必要ないのではないか、という結論に達しました。お互いを確認できるところで管制は適当なものでいいのかもしれないです。飛行機の世界でもタワーのない空港は数多くありますし、セルフアナウンスだけでなんとかなるかも知れないですね。
こうなるとOPで仰々しくやっていたことはいったい何なのだ、という疑問が新たに生まれてきます。これについては明日の宿題ですね。
第3回で話題にした南極行きの輸送機の続報です。今日、飛行場で米軍のハーキューリーズ輸送機が、翼を休めていたのを見かけましたので、その姿をデジタルカメラにおさめてきました。この場所に貼るとページが重くなりそうなので、リンクで関連付けることにしました。
写真1枚目(全体図)
写真2枚目(機首部分)
写真3枚目(胴体部分)
車輪がそり型になっているのと、胴体のロードクリアランスが小さいことが、おわかりいただけるでしょうか。
もうひとつ、続報があります。
飛行場からの帰りに、『生きた化石探索記』で話題にした『ラダ・ニーバ』を発見、これもデジタルカメラにおさめました。拙文を読んで、どんな車なのか、興味を覚えたかたのお役に立てればさいわいです。
写真1枚目(斜め前方)
写真2枚目(横)
写真3枚目(斜め後方)
写真4枚目(後方)
ただ、さすがに運転席の中までは撮ることができませんでした。
『ついに1MB突破』 |
1998年2月17日執筆 |
ところで、アップロードしたときに驚いたのですが――ついに容量が足りない旨のメッセージが出てしまい、衝撃を受けました。
わたしの使っているプロバイダではホームページを無料で持つことができるのですが、1MB以上は別料金になってしまうのです。
当生息地は(現在のところ)文章主体のページですし、わたしの文章作成能力から考えて1MBは埋まるまい、と楽観していたのですが、画像を扱うようになるとやはり少ないですね。古いコンテンツを削除していくか、コンテンツを別宅のニフティに(こちらは5MBなのです)分割することも考えなければならないようです。
2月をまわって暑さが一段落すると思いきや、クライストチャーチは連日猛暑が続いています。今日は35度を超えていました。暑さに弱いわたしとしては、もう外に出られたものではありません。それでも早朝はまだ涼しいので、起き掛けにハグレー公園の森を双眼鏡を片手に散策するのが日課となっています。
今日はファンテール(Fantail:Rhipidura fuliginosa)の群れにであいました。
ニュージーランド特産のスズメより小さな小鳥で、その名前のとおり扇のような尾羽を持っています。色は背面が茶色、腹面が黄色から白、体長の半分以上を占める尾羽は中心の2枚が茶色、残りが白です。たたんでいる状態では目立たず、尾羽を扇のように広げると白く目立つ仕組みです。まれに、全身黒に身を包んだ『黒色型』も存在します。わたしが見た群れの中に一羽だけ混ざっていました。
おもしろいことに、彼らの行動には、ある一定のパターンがあります。
(1)枝に飛び移る
(2)一通りさえずる(この合間に虫を食べているようです)
(3)扇のような尾羽をひろげる
(4)他の場所に飛び移る
かれらはこのサイクルをわずか20秒以下で繰り返します。
例によってデジタルカメラで撮ろうとしたのですが、あまりにも落着かない鳥なので、デジタルカメラの液晶が追従できません。結局撮影することはあきらめ、機会をあらためてビデオカメラで撮ることにしました。
立ち去るまえに振り返ると、かれらはあいかわらず忙しそうに、件のパターンを繰り返していました。
『寒くなってしまった。』 |
1998年2月18日執筆 |
いや、たとえIFRを持っていたとしても、防氷装置を持たない単発機で雲中を飛んだらたとえキャブヒート(キャブレター予熱機)を引いたところで気化器に着氷しそうですし、こんな日に飛んでもあまりいいことはないですね。第一飛んでいて気持ちがよくありません。
バイクで走って気分がよくないときは、有視界飛行の飛行機は飛べないことが多いですね。両者にはいろいろと共通点があるのですが、『自然の状態に左右されやすい乗り物』という点でも似通っているかもしれません。違うのは、バイクならば悪天候でも無理をすれば走ることができますが、軽飛行機でそれをおこなったなら即座に命取りになることでしょうね。
今日は、昨日の日記で『連日猛暑』と書いたことが自分でも信じられないくらい、とにかく肌寒い一日でした。午前11時頃にATIS(空港の情報サービス)を聞いていたところ『気温13度』とのアナウンスがあり、仰天しました。昨日が35度でしたから、気温差は22度なのですね。このあたりは土地が乾いているためか、陽がかげると一転して気温が下がるのは珍しいことではないのですが、昨日今日の気温の変化には驚きます。
『今日はちょうどいい』 |
1998年2月19日執筆 |
以前から気になりつつも調べずにいたのですが、ジャック・ヒギンズの小説『神の最後の土地』に登場する『ヘイリー』という飛行機の正体がわからなくて困っています。『ロッキード・ヴェガ』や『ブリストル・ファイター』はわかるのですが、この『ヘイリー』という飛行機はなにものなのか、気になって仕方ありません。軍用機ならばJANE年鑑をひもとけば出てきそうなものですが、これが民間機ならばお手上げです。週末に図書館にいって調べてみることにしました。サン・テグジュペリの小説に登場する『ラテコエール機』についても調べてみる予定です。
しかし、『神の最後の土地』は良いです。物語に深みをもたせる舞台設定、飛行機をはじめとする魅力的な小道具たち、息も付かせぬ緻密に構成されたストーリー展開など魅力的な要素にはことかきませんが、なかでもキャラクターの造形がすばらしい。うらぶれた英雄『サム・ハナ』が最高です。読んでいないかたにはネタばれになるのでこれ以上は書きませんが、『鷲は舞い下りた』『脱出航路』よりも、むしろわたしはこの作品を選びます。
本の話。わたしの大好きな開高健や吉村昭、サン・テグジュペリの話もそのうちにしたいですね。
『キーウィのお酒』 |
1998年2月20日執筆 |
じつは今朝、食事を取ろうとしたところ、食べるものの買い置きが切れたことに気付きました。なにか食べられそうなものはないかと棚(冷蔵庫ではない)をさぐったところ、一ヶ月近く前の古いキーウィフルーツがそこにあるではありませんか。2~3個少しかじってみたところ、ほのかにアルコールの味がしましたが、わたしの野生の勘が『食べても大丈夫』との指令をくだしたので、結局全部食べてしまいました。明日以降の日記が途絶えたら、『始祖鳥は腹をこわして寝込んでいるのだ』と思ってください。
もっとも、わたしはタフガイを自認しておりますので、そんなことはまずありえないでありましょう。なんちゃって。
醗酵するはなしといえば、西欧の人にはアセトアルデヒド分解酵素を持たない人々、いわゆる『下戸』はほとんどいないと聞きます。醗酵した食物を食べることのできない『下戸』の人々は、西欧では早々に淘汰されてしまったのではないか――という説明が有力のようです。
西欧のような冷涼な気候の元では、冬に備えて食物を貯蔵する必要がありますが、果物などは長期間貯蔵していると醗酵してしまいます。アセトアルデヒド分解酵素を持つ人ならばこういう食物を口にしても大丈夫ですが、そうでない人にとっては命に関わる重大事です。こういうかたちで『下戸』の人々が減っていったのではないか――これがこの仮説の根拠です。
こういう話を思い出すにつけ、ああ、わたしは下戸でなくてよかったと思いつつ、1ヶ月前のキーウィフルーツを食べられる幸せをかみしめつつ生きている今日この頃です。
(注:よいこはまねをしないでくださいね。)
『ビデオカメラのはなし』 |
1998年2月21日執筆 |
――いかん、このままでは腹をこわして寝込んでいることになってしまう。(昨日の日記参照)夜になっても復旧しない場合は、このページをチェックしてくださっているらしい推定2~3名のみなさんに釈明のメールを出しておかねばなるまい(笑)――とまで思いつめたのですが、さきほどアクセスしてみたら復旧していたので、無事この日記をアップロードできました。
かくして、わたしの誇る鋼鉄の胃袋の名誉は保たれたのです。
先日の日記で話題にしたファンテール(Fantail:Rhipidura fuliginosa)をビデオカメラにおさめました。それにしても、ビデオは撮影が楽ですね。単発式のライフルと機関銃の違いを痛感した気分であります。
わたしの使っているビデオはCANON製の、光電管式ファインダーを装備した古いものです。ファインダー画像は白黒でしか表示されませんが、追従性が優れているので、今回のような動きを追いかける用途では威力を発揮します。このごろはやりのカラー液晶ファインダーは追従性が悪く、残像を引くので、細かく動きまわる被写体には不向きな気がしてなりません。ちょっと負け惜しみ。
そういえば、すこし前の三菱製VHS-C方式のビデオカメラで『光電管式のカラーファインダー』を装備していたものがありました。白黒しか表示できない光電管でどうやってカラーを表示するのかと思い、話を聞いてみると、画面をRGBの各要素についてからるがわる表示し、画像の変化に同期した三色のセロファンを回転させてカラーに見せるという仕組みだったようです。素人考えでは、ひところ話題になった光刺激性癲癇が起きないかどうか心配になってしまいますが、なんともメカマニアの魂をゆさぶる素晴らしい機構であります。全然分野は違いますが、『ネイピア・セイバー(※1)』のスリーブバルブ機構を彷彿とさせます。
そうそう『3原色』で思い出しましたが、3原色とはあくまでもヒトにとってのものでしかありません。たとえば鳥は4原色で世界を切り取っているのです。これを具体的に言えば、色覚をつかさどる『錐体』に4種類があるということですね。もし人間もそうだったら、画像をデジタル化する場合に都合がよかったかもしれません。『4』というのは切りが良い数字です。
ここのところ、日記以外のページの更新が滞っていることに気が付きました。自分ではまめに更新をしていたつもりだったのですが、履歴を見ると、ここ10日のあいだは日記以外は更新していないのですね。困ったものです。ネタのストックはあるのですが、それを文章におこす根性がないというのが最大の原因かもしれません。
反省。
まずは、明日の日曜日を使って日記以外のページに一文を書き上げたいと思います。
【注釈】
※1 『ネイピア・セイバー』
世界ではじめて実用化された、スリーブバルブ式エンジン。
スリーブバルブ機構とは、シリンダーとピストンのあいだに『スリーブ』という仕切りを入れ、これを動かすことによって吸排気時のガス流の制御をおこなう仕組み。
バルブやスプリングの調整が必要ないという長所がある。
第2次世界大戦時の英空軍戦闘機『ホーカー・タイフーン』『ホーカー・テンペストV』(II型(※2)は空冷のセントーラス・エンジンを搭載している。)に搭載された。
※2 『ホーカー・テンペストII』
この型はのちに『フュアリ』『シー・フュアリ』に発展した。『シー・フュアリ』はまちがいなく世界最強のレシプロ戦闘機のひとつである。)
『熱のしもべ』 |
1998年2月22日執筆 |
では、題記の件について。
『熱』というものは、エネルギーの最後の姿です。すべてのエネルギーは最終的にはこれに姿をかえます。それゆえに、熱はもっとも還元しにくい、効率のよくないエネルギーでもあるのです。
ここで疑問に思われたかたもおられるかもしれませんが、実は『熱』とはそれだけでは何もなしえないエネルギーなのです。全ての熱機関は、例外なく低温側と高温側の温度差によって作動します。『低温側』があってこその『高熱源』であり、温度がすべて一様な状態では(エントロピ極大状態)エネルギーの取り出しようがありません。
では、題記の件について。
さて、わたしたち恒温動物は、変温動物のおよそ10倍の食料を必要とします。生態系のなかで生産者たちがつくりあげた美しい分子鎖をほどいて得られるエネルギーを、9割がた無駄に燃やしてしまうのが、わたしたち恒温動物なのです。(私たちが恒温動物の肉を食べた場合は、かれらが全摂取量の1割でようやくつくった体組織の9割を燃やしてしまうという、さらにすさまじい結果を呼ぶことになります。)
これほどまでに無駄が多い恒温動物が、今に至っても生き延びている理由は『幅広い温度条件のもとで活動できる』という一点に集約されます。しかし、わたしたちは24時間エンジンをかけっぱなしの自動車のようなもの(※1)です。
さらに、その『効率の悪い』わたしたちの作り出した道具はさらにその上手をいきます。身のまわりを見渡しても、無駄に熱を作り出す道具たちのいかに多いことか。
乗り物、発電所など熱機関を使うものについてはいうまでもありません。車などは加速、巡航するときはもちろんのこと、減速するときにさえも熱を吐き出します。ブレーキとは、運動エネルギーを熱に変換する装置に他ならないのです。(※2)
いま私たちが使っているコンピュータも、要するに電熱器です。コンピュータはなんら物理的仕事をしない道具ですから、投入された電力のほとんどは熱に変わります。はっきり物理的仕事といえるのは冷却ファンで空気を循環させるくらいのものですが、全体から見るなら微々たるものです。
こう考えるとヒトは恒温動物の中に置いてさえも、熱を作り出す怪物です。もし『熱の神』が存在するとすれば、わたしたちはもっともその意に忠実な生き物だと考えてよさそうです。
人類に火をもたらしたプロメテウスも、さぞ驚くことでしょう。
ここまで書いて、なんだかネタがもったいなくなってきました。
(おい>始祖鳥)
しばらくたってから、全面的に加筆改稿して雑文のコーナーであらためて発表させていただくかもしれません。その時はどうぞ笑ってお見逃しを願います。
【注釈】
※1 この辺については多少なりとも工夫はあって、鳥の仲間などは睡眠中に体温を数度下げてエネルギーを節約することができますし、哺乳類でもヤマネなどは冬眠中に体温を下げることができます。
※2 電車などには、そのモーターを発電機として使い、速度を下げる「回生発電ブレーキ」なるものが存在するそうです。運動エネルギーを電気に変換する仕組みですね。
『祝・200アクセス突破』 |
1998年2月23日執筆 |
ニフティサーブのSFファンタジー創作会議室ネタです。FSF読者の読者以外のみなさん、ごめんなさい。
わたしはいつもニフティーサーブのFSF会議室にアクセスしています。ここで面白い創作作品を物色するのがわたしの日課なのですが、ここ数日間の登録内容に狂喜していました。
昨日はデモステネスさんの連載『ピースメーカー』(『名探偵マークス(※1)』シリーズ)、今朝アクセスしてみると、ぴか さんの短編『宇宙王者の冒険3/超科学世界(※2)』が登録されていたのです。お二方の新作を読むのは久しぶりのことでもありますから、ほのかに幸せを感じていました。
ええ、わたしは、お二方のファンなのです。
昨日書いた自分の文章(熱について云々、というやつ)を読み返してみて、頭痛を覚えました。焦点の定まらないひどい悪文です。いっそのことこれ以上人目にふれるまえにそっくり消してしまおうとさえ思ったのですが、いずれにせよ、明日でページがかわるので、そのままにしておくことにしました。
しかし、自分の考えていることを文章に置き換えるのは全く難しいものですね。言葉を選んでいるうちに、自分の考えがなにか別のものに変質してしまう気がします。それでも、やはり言葉を使いつづけるしかないのかもしれません。
言語には「対象の記号化システム」という側面があります。もしそうならば、音声であっても、文字であっても、手話、ボディランゲージ、あるいはにおいその他の信号であっても、対象を記号化して表現した瞬間に、それは『言語』足り得るのではないか、と思うのです。この意味で、すべての生き物は生まれながらにして言語を内包する存在ではないかと感じることがあります。
【注釈】
※1 『名探偵マークス』シリーズ
シャーロキアン道を極めるあまり、ついに「ホームズになった男」を主人公に据えた、推理小説――と思って読むと仰天するかもしれません。
各方面にわたる膨大な蘊蓄も魅力ですが、この作品には好事家の心の琴線にふれるなにものかがあります。おすすめです。
※2 『宇宙王者の冒険』
宇宙をまたにかけ、地球の平和をまもる正義の人、山本王者。
かれが地球を守るヒーローとなった理由は――ネタばれになってしまうのでここには書けません。ごめんなさい。
ユーモアと深遠なウィットに富んだ、剃刀のごとく鋭い機智のひらめきは、麻薬のように脳髄に染み渡ります。ちょっと人を食った、知的な笑いは大好きです。
『熱のはなし(その2)』 |
1998年2月24日執筆 |
まず、『熱』について補足します。一歩さんご指摘の通り、「熱」は電子の活動度合いをしめすものであり、正しくエネルギーです。しかし、そこからエネルギーを取り出す段になると、話はまた変わってきます。熱エネルギーには「重力」に似たところがあります。「重力」がそれだけでは仕事を成し得ないのと同様、「熱」にもおなじことがいえます。滝から落ちる水は「落ちる」ことによって水車をまわしますが、一定の場所にある水は仕事を行ないません。前者は「温度勾配がある」場合、後者は「温度勾配がない」場合です。
結論から言えば、わたしたちが「熱」を利用したいと思うなら、温度勾配からエネルギーを取り出すほかにありません。
ところで、エネルギーを取り出すということは高熱源がより冷たい状態に、低熱源がより暖かい状態になることも意味しています。これを繰り返していると高熱源と低熱源の温度差は小さくなっていき、ついには同じになってしまいます。
このように、すべて混ざり合って高熱源と低熱源の差がなくなった状態では、もはやエネルギーをとりだすことができません。(これができるとするなら永久機関を作ることができます。)一番下まで落ちた水は、もはや水車をまわすことはできないのと同様です。この状態は、その閉鎖系において「エントロピーが極大である」ともいいかえることができます。この系にはもはや「利用できるエネルギー」としての熱は残っていないのです。また、水が下から上に流れることのないのと同様に、熱も均一な状態から自ら高熱源と低熱源に分離することはありません。流れは不可逆なのです。
次に「自分が冷たくなる事で、周囲との温度差を作るエンジン」ですが、理論的には可能です。ご指摘のように温度勾配があれば熱機関は作動します。では、なぜこういう形式のエンジンが存在しないのかということについて考えてみたいと思います。
第一に、高温の方が低温よりもはるかに作りやすいことがあげられます。冷たい部分を作り出すには、熱交換を行なう必要がありますが、熱を振り分けるのにはその時点でエネルギーが必要なのです。エネルギーを得たいはずが、逆にエネルギーを消費してしまう、というパラドックスがここにあります。また、低温を作るということは、同時に高温も作っているわけです。エアコンの室外機や冷蔵庫の背面が熱くなるのを思い浮かべればわかりやすいかもしれません。
第二に、温度勾配の問題があります。例えば気温15度と燃焼温度350度の燃焼室内との間には335度の温度勾配が発生します。350度というのは比較的容易に作り出せる温度です。しかし絶対零度(-273度だっけ……いかん、語るに落ちた)をつくりだしたところで、温度勾配は300度に達しません。
上記のような理由から、「自分が冷たくなる事で周囲との温度差を作るエンジン」は存在していません。ただ、「自分は熱くなり、低熱源(外気など)をより冷たくすることで出力を向上させるエンジン」は存在します。ついさっき低温はつくりにくいといったばかりではないか、前言と矛盾するではないか、と思われるかもしれません。ところがこれがよくしたもので、限定的ながら解決方法はあるのです。
第二次世界大戦末期のドイツの戦闘機にTa152Hという機体があります。「史上最強のレシプロ戦闘機」という話題には必ず顔を出す有名な機体です。
この戦闘機はレシプロ最速機のひとつで、試験飛行のときに米軍のP-51マスタング(これは決して遅い飛行機ではない)を軽々と振り切ってしまったというエピソードを持つ機体ですが、この戦闘機にはある装備がほどこされていました。低温の笑気ガス――いわゆる「ニトロ」です。ニトロはそれ自体の爆発力もそうですが、これを放出によって低熱源側の温度を下げる効果もあり、これによる出力向上効果は甚大なものです。さらにこの戦闘機には「水メタノール噴射機構」が装備されていました。(大戦後期の日本の戦闘機にも大抵ついています)これも気筒内の温度を下げることにより、最大20%の出力向上を実現することができたようです。
身近な例をあげるなら、バイクも同じような対策をこうじています。
ヤマハFZRの何代目以降かは思い出せませんがでFAIというシステムがありました。これはフレッシュ・エア・インテークシステムの略で、カウル前面に開けた空気取り入れ口からダクトを引き延ばし、エアクリーナ(キャブレター)へと導くものです。
こんな冗談みたいな仕組みで本当に出力が向上するのかと思いますが、効果は確かにあったようで、同様の機構は他社の車体(CBRなど)にも採用されています。
確かにキャブレター周囲の空気は外気よりは暖かくなっていますので、低熱源としては外気を直接取り入れた方が良いことは想像できます。高速になれば空気のラム圧でさらに充填効率が向上する効果も期待できるかもしれません。
別の例としては「後方排気型TZR」があります。2ストローク並列2気筒の最後の型として、89年に登場した車体です。
わたしがまだ若かったころ(遠い目)、ヤマハにTZ250という市販レーサーがありました。今でもあるのでしょうか。本車はトルクやコンパクトさにおいてV型の方が有利であるらしいことが判明した以降も、頑固一徹に並列2気筒のレイアウトを守り通した車体です。(ワークスレーサーのYZR250は早々にV型に転向してしまいました。)TZRは、この市販レーサーTZのレプリカであるため、並列2気筒のレイアウトを踏襲しているのですが、その究極進化型といえる’89年式は、実に興味深い構造をしていました。
通常、バイクのエンジンはシリンダーの前面に排気口があり、後方にキャブレターが配置されています。ところがこの車体のエンジンはこれとは逆のレイアウトで、シリンダーの後方から排気管が伸びていまして、シートの下をくぐってシングル風シートの後面から消音機が顔をのぞかせているという特異な外観でした。
このモデルはその特徴から「後方排気TZR」と呼ばれていますが、むしろ本質は「前方吸気」にあったようです。低熱源は冷たいほど良い、というのは上記で繰り返しのべているとおりです。
そのほか、バイクのレースのときに、燃料タンクに日よけのシートをかぶせるシーンを見たことはないでしょうか。これも少しでも出力を向上させたい、という気持ちのあらわれです。
ここまで書いて、力尽きてしまいました。
なんか、どんどんマニアックな方向に迷走しつつあるような気がします。カタギの読者のみなさん(いるのか?)が逃げていくのはもはや時間の問題かもしれません。
以下次号。
『熱のはなし(その3)』 |
1998年2月25日執筆 |
一歩さんの日記 | 1998年2月23日、2月24日執筆分 |
拙文『熱のしもべ』 | 1998年2月22日執筆 |
拙文『熱のはなし(その3)』 | 1998年2月24日執筆 |
いやあ、冗談ならそうといってくれればいいのに(気付けよ>始祖鳥)、一歩さん、前回は無粋にも真面目に答えてしまいました。ごめんなさい。
では、今回の命題、「何故氷の中ではものは腐らず、炎天下ではものは腐ってしまうのか」ということについて考えてみようと思います。今回もちょっとまじめモードです。
いままで述べてきたことは「温度差さえなければ、物体に活動はない」ということではなく、「熱からエネルギーを取り出すためには温度差が必要である」ということです。どこが違うのだ、と言われると説明が難しいのですが、結論から言うと、一様な熱を持っている『閉鎖系』には活動が『ある』とも言えますし『ない』とも言えます。あっ、怒らないでください。(^^; 今からその理由を説明します。
まず、一様な熱を持っている『閉鎖系』を考えてみます。ミクロレベルでみると分子、原子、あるいは電子が熱エネルギーに沿った速度で「運動」しています。ここにおいて、各粒子が一様な熱エネルギーを持っているという前提を考えるなら、各粒子の速さ(スカラー量)はすべて一定となります。ところが、各粒子の飛ぶ方向はてんでんばらばらなので、速度(ベクトル量)が相殺されてしまい、結局のところ全体としては動いていないのに等しいとも言えます。(温度差がなければもちろん対流はおこりません。)
第二に、熱についてエネルギーが「ある」「ない」というのは比較対象があればこその話で、比較対象がない世界、つまり温度差がなくすべて一様な世界ではエネルギーがあるもないもありません。前回のおはなしでわたしは重力(位置エネルギー)の例を引きましたが、今回も、同じ高さにある同種の物体A、Bを考えてみることにします。
これらは全く同じ位置エネルギーを持っているためお互いに仕事を行なうことはできません。しかし、低い位置にある同種の物体Cよりは潜在的エネルギー(ポテンシアル)がありますから、滑車をイメージしてもらえばわかりやすいのですが、Aが「落下」することでCを持ち上げることは可能です。
しかし、この運動は永久に続くわけではなく、Aが落ちきり、Cがのぼりきったところで滑車は平衡状態になります。AとBの重さが同じだとしたら、最終的には同じ高さでバランスするでしょう。
この例に『温度差がない世界』を当てはめるのなら、『すべてのものが同じ高さにある世界』がそれに近いでしょうか。
第三に、ものを腐らせる微生物の活動は、熱エネルギーに直接よるものではないということがあります。多くの微生物は分子鎖を酸素や水を使って分解することによって得られるエネルギーで活動しているので、そもそも動力源が違うのです。
ただ、確かに低温では分子活性は低下し、化学反応はにぶくなりますから、化学的エネルギーで動いている生物はその影響は無視できません。
また、かれらは熱機関で動いていないかわりに、『分子鎖』をほどくことによって活動していますから、ほどくべき分子鎖が全て使い尽くされた状態では、もはや活動することはできません。これもかれらにとって『エントロピーが極大である』とも言えるかもしれないですね。
『情報エントロピー』という言葉はおもしろいですね。P.K.ディックか神林長平なイメージです。わたしは熱力学的な意味でのエントロピーしか知らないのですが、どのようなものなのかとても興味があります。
(こう書けばいずれ一歩さんは教えてくれるでしょう。一歩さんの日記ページの今後に注目です。(^-^))
宇宙の温度の底があがってきているというイメージは、興味深いです。『宇宙の熱死』という言葉は『百億の昼と千億の夜』(マンガのほう)で知ったのが最初でした。SF者になってからはあちこちで聞く言葉でもあります。
現状の宇宙空間は3K輻射(ビッグバンのなごり?)だと耳にはさんだことがあるのですが、残念ながら宇宙のことは(も)全くの無知なので専門家の助力を仰ぐことにしたいです。ぴか さん、読んでいらっしゃいますでしょうか。(他力本願なやつ>始祖鳥)
前回カタギの読者さまが逃げていくのではないかと懸念していたことですが、悩んだ末に、結局このまま突っ走ることにしました。
当生息地が想定している読者層は、SFな人たち&ナチュラリスト系&友人知人なので(ファンタジーな人々は、このページは読んでいないような気がします)読者層を考えると「これでいいのかもしれない」という気がしてきたのです。ここのところ生き物の話題が滞っておりますが、ナチュラリストのみなさま、生き物の話にも力をいれますので見捨てないでくださいませ。
いや、よく考えるとSFのコーナーを作っていないことに気付きました。そのうち『地球の長い午後』の話をしようかと思っています。オールディスは素晴らしいです。
一歩さんへ私信です。
論文3つ同時進行とは聞いただけで目眩がします。どうか頑張ってください。応援しています。
『熱のはなし(その4)』 |
1998年2月26日執筆 |
拙文『熱のしもべ』 | 1998年2月22日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月23日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その2)』 | 1998年2月24日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月24日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その3)』 | 1998年2月25日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月25日執筆分 |
さて、今回も元気よくいってみましょう。
まず、『熱』とはなにかと言われれば『熱』は電子の活動度合いを表わすものです。つまり、このことは活動が速くなるのには一向にかまいませんが、遅くなるには限界があることも同時に示しています。遅くなり、遅くなり、どんどん遅くなった末についに静止してしまう点があります。電子の運動はこれ以上は遅くならない、つまりこれ以上は下がりようがない点を、わたしたちは『絶対零度』と呼んでいます。これは変わりようがない基準なのです。これが『絶対零度』が、『絶対(アブソリュート)』である理由です。
さて、一歩さんが指摘されている『内在されている何か』とは『エネルギー』ではなくどうやら『ポテンシアル』と表現すべきものですね。
前回までは位置エネルギーを使って話をすすめてきましたが、今度は運動エネルギーに例えてみましょう。
ある地球船籍の宇宙船A号からみて、同一軌道上において秒速30kmの対向するベクトルで『等速直線運動中』のガニメデ星人の宇宙船B号があるとします。ここでA号とB号が衝突すれば大変な事態になってしまうでしょう。勿論、B号は『等速直線運動中』ですから、なんらエネルギーは使っていません。しかし、A号にぶつかったときになぜ大変か、というと、秒速30kmの『速度差』があるからです。『速度差』は運動エネルギーに変換できます。(ニュートン力学の世界では (mv^2)/2であらわすことができますね。)これを『B号はA号に対してポテンシアルをもつ』と表現します。
ところが、ガニメデ星人の宇宙船B号と同じ速度(ベクトル量)で等速直線運動中のアンタレス星人の宇宙船C号が登場したとします。B号とC号の速さは同じ、向きも同じということなので、速度差がなく、相対的に見るなら、お互いは止まっているのと同じです。これを『B号はC号に対してポテンシアルをもたない』と表現します。この状態ではたとえ接触していたとしてもまったく仕事はおこないません。
これを温度に置き換えると、300度の物体Aは200度の物体Bに対して『ポテンシアルがある』といえます。これらは混ざりあうことで仕事を行なうことができるのです。
しかし、物体Aは、同じ300度の物体Cに対しては『ポテンシアルを持たない』のです。適切な例えとはいいかねますが、温度とは等速直線運動をしている宇宙船の速度のようなものでもあるのです。
先の例えの「全てのものが同高度にある世界」において、地面に穴をうがつということについてですが、これは『閉鎖系において温度差のなくなった状態から温度差をつくる』ことでもあります。
ここで、自動車の正面衝突を考えて見てください。2台の車の速度差が生み出す運動エネルギーは、応力や熱や音に変換され、周囲にガラスのかけらや金属の飛沫、熱や轟音を発して、最終的には止まります。運動エネルギーがその他のエネルギーに変わったのです。しかし、正面衝突をした自動車の部品が元に戻り、周囲の熱や音を吸収し、逆方向に走り出すことはありえません。この場合、変化は不可逆です。これと同様に、温度差のなくなった閉鎖系内部が自ら、高熱源と低熱源に分離することはありえません。『温度差のなくなった状態から温度差をつくる』ことはできないのです。これを熱力学第二法則、あるいはもっと直截的にエントロピー増大の法則と呼びます。
つぎに『逆立ち』をすればもういちど流れ落ちる余地が生まれるのではないか、という件についてです。恐らく、モデルとして砂時計のようなものを想像なされてしまったのですね。重力を例えに引いたのはよくなかったと、反省しています。
この場合には、むしろ磁石を想像してもらったほうがわかりやすいかもしれません。つまり、どっちが上かという問題ではなく、引き付け合う2つの物体が存在すると仮定してください。ふたつの磁石がくっついてしまえば、全てはそれでおしまい、それ以上の動きはありません。これが『温度差のない世界』です。
一歩さん、情報エントロピーについての解説、ありがとうございます。 語彙の数と、ひとつあたりの情報量を示すものなのですね。
ナマモノの話は近いうちにしますので、しばしお待ちください。
今日はちょっと力尽きてしまいました。続きはまた明日にさせてください。
『熱のはなし(その5)』 |
1998年2月27日執筆 |
拙文『熱のしもべ』 | 1998年2月22日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月23日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その2)』 | 1998年2月24日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月24日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その3)』 | 1998年2月25日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月25日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その4)』 | 1998年2月26日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月26日執筆分 |
まず、ポテンシアルという言葉について、説明がまずかったことをおわびします。
300度の物体はそれだけでポテンシアルを持っているわけではありません。つまり比較対象が必要なわけで、例えば絶対零度の物体に対して言うならば「ポテンシアルを持っている」といえます。しかし、同じ温度の物体に対してはポテンシャルを持っているわけではありません。誤解を招く書き方でごめんなさい。
今までにも述べてきたことですが、今回はすこし別の側面からお話しましょう。
アルコールを燃やすと二酸化炭素と水、そして熱を発生します。しかし、二酸化炭素と水が、みずから周囲の熱を吸収してアルコールに変わることはありません。(植物がそれに近いことをおこなっているではないか、と言われるかもしれませんが、これについてはあとから考えてみましょう。)
熱というのはエネルギーの最終的な姿です。そして、なぜすべてのエネルギーは最終的に熱に収斂するかというと、熱エネルギーは不可逆であり、出口無しの一方通行である、ということがその原因です。一度両替してしまったら二度と買い戻してもらえない通貨のようなものですね。
わたしが拙文『熱のしもべ』において嘆いているのはこういう理由からでもあります。
つまり、なんらかのエネルギーが『熱』に変わってしまった以上、他のエネルギーに変換することは原則としてできません。その唯一の例外が『温度勾配がある場合』です。
――もうこれ以上いうのは野暮というものなので、とりあえず今回の説明はここまでとし、次のセンテンスに続きます。
ここにきて、どうも一歩さんはこれらすべてを承知の上で『マクスウェルの悪魔』を召喚したいらしい、ということが分かってきました。そうならそうとはやく言ってくださればよいのに。
わたしもSF者のはしくれ、こういう話は嫌いではないどころかむしろ大好きなので、一緒に考えてみましょう。
以下、たいへん非科学的です。どうかまじめに受けとらないでください。(^^;
ここは生き物のもつ神秘の力(笑)を借りるべきかも知れません。植物などは、安定な二酸化炭素から不安定な酸素を作り出したり、単純な分子から複雑な分子鎖を持つ化合物を作り出しています。これはエントロピーを減少させているのではないか!と感覚的には思うのですが、かれらは太陽光のエネルギー、つまり太陽が『こわれる』エネルギーの一部を利用して物質を生成しているので、残念ながらエントロピーを減少させているとはいえないようです。
では、高温で温度差がない環境からエネルギーを取り出せないのはなぜか、ということについて考えてみたいと思います。
分子(電子)の動きが全体として『相殺』されてしまうからエネルギーが取り出せない、ということは、波長の揃った秩序正しいレーザー光線のごとく、分子(電子)のベクトルをそろえればエネルギーがとりだせるのではないかとなんとなく思いますが、よく考えるとどうやってベクトルをそろえれば良いのだ、という問題と、ベクトルをそろえるにはエネルギーが必要であるが、それはどこから持ってくるのだ、しかも得られるエネルギーは与えるエネルギーよりも明らかに小さそうだ、という問題に気が付いてしまいました。
そもそもこれができるくらいなら、最初から熱を発生させずに仕事がおこなえる、というはなしもありますね。残念、これもだめです。
最後に残るのはSF風に『現在の宇宙とは違う別の宇宙から可逆性のエネルギーを取得し、別の宇宙に不要なエントロピーを排出すること』でしょう。
これなら温度差によるエネルギー抽出と変わりませんし、とりあえず熱力学第2法則にも反しないようです。ただ、そもそも「別の宇宙」なるものが存在するのかという問題はありますが、上記のやりかたにくらべるなら説得力がありそうな気がします。
――ここまで書いて、SFの定番アイテム『タイムマシン』を有効に利用できないか、という考えが頭に浮かびました。物質を運べるなら、すべからくエネルギーも運べるのでありましょう。このアイテムがあれば何とかなりそうな気がします。ここまで考えたのですが、疲れてしまって具体的な方法が思い浮かびません。
以下次号。
『熱のはなし(その6)』 |
1998年2月28日執筆 |
拙文『熱のしもべ』 | 1998年2月22日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月23日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その2)』 | 1998年2月24日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月24日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その3)』 | 1998年2月25日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月25日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その4)』 | 1998年2月26日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月26日執筆分 |
ぴか さんの『自家用Science事典Fiction風味』(参考資料) | 1998年2月26日執筆分 |
拙文『熱のはなし(その5)』 | 1998年2月27日執筆分 |
一歩さんの日記 | 1998年2月27日執筆分 |
ぴか さん、3K輻射について早速ご解説いただき、ありがとうございます。 当ページをご愛読していただいたうえに、あまつさえ新コーナー枠まで作っていただきましたこと、たいへん恐縮です。 この日記のアップロード時に入れ違いになってしまい、お礼が遅れてしまったこと、申し訳ありません。
ぴか さんの解説を要約すると、3K宇宙空間には3ケルビンの領域が非常に多く、つまり巨視的に見るならば宇宙の平均気温は3ケルビンだそうです。つまり、宇宙が低温定圧でありながら、しかし絶対零度でないのは『昔は高温高圧だったものが(断熱変化(※1)で)膨張した』証拠でもあるようです。
しかし、ここにもアインシュタインの影があったのですね。おそるべし。
科学史というのは人間の思考の過程を如実に反映しているようで、とても興味をそそられます。『自家用Science事典Fiction風味』、今後の充実がとても楽しみです。
絶対温度とマイクロ波の関係について補足しますと、熱を持っている物体は『放射』という形で電磁波ノイズを出していまして、温度が高くなるに従って、その波長は短くなっていくそうです。(マイクロ波→赤外線→赤→青→紫→紫外線→X線……)ご存知でしたらごめんなさい。
以下、SF的な話です。厳密な科学考証は行なっていませんので、どうかまじめに受けとらないでください。
異空間からエネルギーを取り出し、エントロピーを排出することですが、これは一歩さんご指摘のようにツケを別の宇宙に押し付けているだけで、厳密な意味では『マクスウェルの悪魔』とは言えないですね。ただ、見かけ上はそう見えるはずなので、『永久機関』の仲間に入れてあげてもいいかもしれません。これは『マクスウェルの悪魔はよその家でご飯を食べている』ということになるのでしょうか。
ブラック・ホールについては(わたしの素人考えでは)なんらかのかたちで利用できそうな気がしてならないのですが、このあたりの分野になると最早わたしには手も足もでません。帰国してから(少なくともお話について行ける程度に)宇宙論は勉強するつもりですので、考察のほうはそれまでご容赦ください。
さて、前回伏線をはっておいた『タイムマシン利用法』についてのおはなしです。 『マクスウェルの悪魔』としては『エネルギー獲得とエントロピー増大のツケを別の系に押し付ける』という手段をとるのが一番現実的(?)でありましょう。ここで登場するのが『タイムマシン』です。物質を運べるタイムマシンならすべからくエネルギーも運べるでしょうから、未来なり過去なりに『ツケ』を押し付ければよいわけです。いや、問題を過去に持っていくと困るのは現在のわたしたちですから、ここは未来に押し付けるのが妥当でありましょう。これで現在の人たちは安泰なわけですが、未来の人たちはさぞや怒ることでしょうね。堪忍袋の緒を切って現在に攻めてくるかもしれません。(笑)
しかし、よく考えると『未来にツケを押し付ける』、言い換えれば『問題を先送りにする』というやりかたは、わたしたちが常套的におこなっていることですから、さして目新しい考えではないようですね。
一歩さんご指摘の
熱→何か、への変換方程式についてです。
冒頭の文章で思い出したのですが、熱の副産物として『電磁波ノイズの放射』がありました。『放射』は熱伝導の3種のうちのひとつで(他には『伝導』『対流』があります)、真空に近い宇宙空間を『太陽熱』が伝わってくるのはこれのおかげでもあります。一見
冒頭の文章で思い出したのですが、熱の副産物として『電磁波ノイズの放射』がありました。『放射』は熱伝導の3種のうちのひとつで(他には『伝導』『対流』があります)、真空に近い宇宙空間を『太陽熱』が伝わってくるのはこれのおかげでもあります。一見
いけそうではあるのですが、これも結局相対的な『温度差』がないとエネルギーになりえないのですよね。残念。
そうそう、ウオルドゥー機械は全ての技術者の夢かもしれないですね。悪夢かもしれませんが。(^^;
もったいないおばけ退治作戦についてです。
車のブレーキですが、どこかのメーカーの実験車両で面白いものがありました。たしかバスだったと思うのですが、スピードを落とす過程で運動エネルギーを圧縮空気タンクに蓄積し、加速時にこれを利用する仕組みだったようです。
『熱のしもべ』でも書きましたが、電車などでは、減速過程にモーターを発電機として働かせ、運動エネルギーを電気に還元するシステムがあるようです。電気自動車などにも応用できそうな機能ですね。
しかし、わたしとしてはこういう真面目なものよりは、もっとばかばかしいものに思いを馳せてしまいます。空気の圧力も電気も結構、しかし人類がもっとも古くから使ってきたエネルギーのひとつ、弾性エネルギーを忘れてはいけないのです。
そう、減速過程で『ぜんまい』を巻くのです。いざ信号が青になったら一気にたくわえた弾性エネルギーを解放、それこそ『矢のように(この例えはわれながら正鵠を射ていると思う)』飛び出すことができます。車のトランク部分にマンホールの蓋をはさめば、ウイリー走行もできるかもしれません。
うむ、すばらしい。
各種エネルギーのリストアップとランクづけですね。エネルギーの質としては『不可逆』なものよりも『可逆』なもの、つまり再利用できるもののほうが良いのはまちがいありません。その観点からエネルギーを分類してみました。
【可逆】(一般的に)
運動エネルギー
位置エネルギー
電気エネルギー
弾性変形エネルギー
【不可逆】(一般的に)
熱
音波(粗密波)
塑性変形エネルギー
もちろん、上記の分類は絶対的なものではありません。「不可逆」に分類した音波エネルギーにしても、十分秩序だっていれば微粒子を振動させる(運動エネルギーに変換する)ことで「超音波ナイフ」のような使い方をしたりできますし、逆に「可逆」に分類した電気エネルギーにしても、静電気のようなものは利用が困難ですから、問題はエネルギーそのものよりも、どれだけ秩序だっているか(エントロピーが低いか)、という点に収束しそうですね。
【注釈】
※1 断熱変化
気体の圧力、温度変化のひとつです。外界と熱的に遮断した状態で体積(圧力)を変化させることをこうよびます。例をあげると、口をふさいだ注射器に気体を入れ、圧縮すると熱を持ちます。内燃機関の圧縮行程ではこの原理で混合気温度を上げます。反対に注射器を引くと熱が失われますが、冷蔵庫やクーラーはこの原理で温度を下げています。
そのほか、気体の変化過程としては圧力を一定に保つ『等圧変化』があります。