翻訳『贋作にあらず(False Forgery)』

このコンテンツについて - 2007年9月6日 -
 このコンテンツは,Siegfried Rietschel によるProceedings of the International Archaeopteryx Conference Eichstatt(1984), pp. 371-376 の内容を,私(始祖鳥)が日本語に翻訳したものです.

 以下,原文の翻訳です.

「贋作にあらず」

False Forgery
(贋作にあらず)


Siegfried Rietschel



「全体構想が全くおかしい」彼は言った.
マーローは首を横に振った.
「サイエンス・フィクションを読むとこうなるのだ」
フレッド・ホイル, 1958年


 アイヒシュテット国際始祖鳥会議から数ヵ月後,始祖鳥,そして特にその羽毛はひととき人々の興味の中心となった.これはシンポジウム自体による結果ではなく,ダーウィンの進化論の証拠としての始祖鳥の信憑性に疑義をとなえる総合キャンペーンの結果であった.物理学者らのグループは,化石の羽が偽造されたものであると一連の論文により主張した.それらの情報は,彼らが例外的とするロンドン標本の新しい写真の成果に基づくものであった.しかしながら,彼らの研究は古生物学の知識と経験に明確な欠落を示している.だがそうだとしても,偽造仮説が立てられる根拠となった特徴と論旨は徹底的に検証されなければならないものであり,それが私が以下に示す要点で試みる作業である.

1. 1985年3月,「British Journal of Photography」誌は(BJPa: 265**) 最もよく知られる標本(ロンドン標本及びベルリン標本)は「一意のもの」である,なぜならば「紛れも無い羽毛の印象」があるためである,と報告した.BJPは羽毛を持っていることがヘーベルライン時代(以降)のみに確認されていると装った.これは真実ではない.テイラー標本(OSTROM 1972),マックスベルク標本(HELLER 1959),およびアイヒシュテット標本(WELLNHOFER1974)の論文と図版は,羽の印象(impression)を記述している.これらには保存の質に差異があるが,ベルリン標本――そしてロンドン標本――の羽毛に比較し得る地誌上の位置に存在していることを,私たちは認めなければならない.腐敗の段階の差異と堆積物のわずかな違いが,より不十分な保存の原因となることはありそうである.しかし,各標本には少なくとも羽のアウトラインがあり,マックスベルク標本には羽軸(rachis)と羽枝(barbs)が目に見える状態で,明確な羽の構造がある.原標本が調査に利用可能ではないマックスベルク標本(Maxberg-specimen)の複製から筆者が撮った一連の新しい写真を例証する.これらの複製(1973年に筆者と2人のプレパレーターによって作成)は正当であり,堆積物の薄膜が取り去られた領域において明確な羽の構造を示す.(Fig. 1) HELLER(1959: 14-15)はこれらの羽の構造と,プレパレーションの課程で除去されたいくつかの断片である,始祖鳥を覆う堆積物(sediment)について的確な説明を提供する.なぜなら,彼の写真(pl. 3, W. STORMERによる原標本からの撮影)は主要な構造のみを示しており,新しい写真をここに提示する.

 よって羽毛の構造は,全ての既知の標本において,発見の日,収集家,プレパレーター,あるいは科学的記載者から独立してそれぞれ明確に示すことができる.
    *編集者注: この補足論文は編集者の依頼によりリーチェル教授(Professor Rietschel)によって作成された.リーチェル教授(Professor Rietschel)に対する我々の要求は,この国際会議(訳注:アイヒシュテット国際始祖鳥学会)のわずか数カ月後にかなりの人々の興味に刺激をおよぼした,フレッド・ホイル(FRED HOYLE)他によって進められた「始祖鳥における不正な羽毛の仮説」によってうながされた.

    **HOYLE,RABILIZIROV,R.S.SPETNER& J.WATKINS, およびWICKRAMASINCHEによる「British Journal of Photography」誌で発行された1985年の4論文については,以降は「BJPa~d」と呼称する.
    このボリューム(訳者注:アイヒシュテット国際始祖鳥会議議事録)における「Feathers and wings of Archaeopteryx(始祖鳥の羽と翼)」に関する筆者の論文の参照は「RL」と短縮する.
    筆者は本稿における英文の推敲について,ロンドンのMIKE HOWGATEに謝辞を述べる.


    Fig.1.
    始祖鳥(Archaeopteryx lithographica) マックスベルク標本(1973年の石膏キャスト),雄板(main-slab); スケールは10mm.
    a: 第2指の左側の爪の付近にあるおそらく左翼の初列風切羽である大きな羽; それらは化石を覆う堆積物の薄い層(原標本の基礎にある)が破壊された部分(プレパレーションによる局部)でのみ確認できる.
    b: HELLER (1959: 14, pl 6-7)が脚部の羽毛に属すると仮定した,左の脛骨と左の肩甲骨の痕跡の間にある約2cm長の小さい羽.

2. 始祖鳥標本の羽の構造はBJPの著者らによっておおむね「押印(impressions)」と見なされる(例: BJPa: 265); しかし,他の箇所では,著者らは「羽状の材料(featherlike material)」について論述している.(例: BJPd: 693) 最初の発見である孤立した羽においては有機材料の副産物が確かに提供されている一方,5個の始祖鳥骨格標本は羽の鋳型のみを示す.

 これらの標本における羽毛の構造の偽造は,人為的な鋳型(あるいは押印)か,化石標本の羽を別の化石(あるいは贋作)に取り付けるなどのように,いくつかの異なった手法でおこなわれたかもしれない.しかしながら,BJP-著者らは,羽毛の構造が原標本の上に直接偽造されたと信じているように思える.その結果,彼らは質問に答えなければならなくなった――どうすれば全ての始祖鳥標本における全ての羽を偽造することができるのか? (実際のところ,1~2またはそれ以上の始祖鳥標本における「人為的な」羽の構造は(あったとしても)「羽毛を持つ爬虫類」に害を与えないだろう.地球科学史は新しい逸話によって――あるいはそれ以上何もないことによって――豊かにされるだろう.)

3. 「5個の標本における全ての羽毛―― 雄板と雌板によってそれぞれ表される――の偽造」 従って全ての羽毛の構造は偽造されたという示唆について

    a) 雄板(main-slab)について
    b) 雌板(counterslab)の上において3次元で正しく一致する「ネガ」として
    c) 非常に異なった標本に対して詳細に関する同じ特徴を使用し,そして
    d) この特徴を特定の標本に一致させること

     この場合,私たちは羽の捏造者だけではなく,1857年(テイラー標本:Teyler specimen)から今日までの同一性を持つ翼部,尾部,および体の羽毛の技術上および方式上で偽造者を取り扱う考えである.

    a) ロンドン標本の雄板(main-slab)は羽だけではなく,翼と尾を形成するそれらの複雑な配置も示している.尾羽は配置方式は始祖鳥の特徴だが,この特徴はどのような化石鳥類あるいは現生鳥類にも一度も確認されていない.翼の羽の順番は現生鳥類のそれと同じように配置されている; わずかな配置の乱れは堆積物で覆われる前の死骸の腐敗のためと解釈できる.この配置の乱れはベルリン標本には現れておらず,現生鳥類の翼に非常に良く似ているが雨覆(covert)の面積の拡張を伴う,違った種類の羽毛を伴った翼の下面を我々は完全に目視することができる.(RL:pl.1-2とfig.4).

     偽造者はこのような偽造のために現生鳥類に体の羽毛(単一の,および連結したもの)と同様によく似た翼全体を作り出すだけではなく,特異な種類の尾(最初の段階で著者らはこれを「大きく目立つ尾羽(BJPa:265の記述)」と誤解している)を発明する必要があった.完璧な天才でもそれをするために何年もの時間を必要としたであろう――そして,私たちはこう尋ねたい.彼は「お手本」も数世代後の科学者の持つ知識もなしに,どのようにしてそれを行えたのか.

    b) ベルリン標本の雌板(counter-slab)は雄板(main-slab)に95%一致する鏡面コピーであり,羽毛の構造は研究の被害にあった雄板(main-slab)のものよりよく保存されている.雄板(main-slab)と雌板(counter-slab)の違いは,主に石灰岩スラブ原石の分割,そしてその後のプレパレーションから生じる.ロンドン標本の雌板(counter-slab)の上に起こっているこれらの差異,BJP(a: 266= b: 358 f.)によって供給され偽造の証拠とされたこれらの特徴は,羽毛の構造の保存状態の解釈を助けるものに過ぎない.(RL:fig.1) 一塊のゾルンホーフェン石灰岩が分割されるとき,非常に薄い堆積物の層は断片となって紛失するだろう.これらの表面構造の層が失われることによって(雌板に付着しているものはまだいくらかは存在している),深い部分の他の構造を目視できるようになった.ここに我々はBJP (e.g.b:359,fig.2-3)が誤解した二枚の板(雄板と雌板)の相違についての理由を持っている.

    概して,羽の印象を一方のスラブに付けるのは,現代の人工の樹脂のテクニックを特に使用することで可能であろう.しかし,もう一方のスラブに対して適切な場所に正確にそのような技術を用い,同一のネガを作り出すことは不可能に思える.偽造仮説が正しいとするなら,BJP全体が仮定した始祖鳥標本における羽毛の偽造は,必ず3次元で雌板(counterslabs)を(先に言及した断片の「紛失」を含めて)複製しなければならない.

    c) これは雄板と雌板の両方にある非常に複雑な構造配置である.(RL) 私たちが必要とするものは,実際の古生物学的な所見を常に考慮した上で,保存された羽の構造に関して化石化の過程とその結果について,段階ごとに説明する理論である.違った説明で示され「二重に刻印された羽の印象」と呼ばれた羽毛構造の全ての詳細を説明する説得力のある理論は長期間にわたって存在しなかった.ベルリン標本における羽毛(RL)の詳細分析は,羽軸(shaft)の影,分割された羽(vanes),ジグザグ様構造,羽毛下面のみの保存および別々の羽毛層などの複雑な構造の豊かな態様を提供する.これら全ての構造が死後と置換過程(diagenetic processes)の自然な連続性において生じることをこれは示している.

     したがって,我々がロンドン標本とマックスベルク標本の羽毛で細部(detail)の大部分を見つけられるのは驚くべきことでない.他の標本における細部(detail)の欠落は確実に保存の品質に依存する.(d.を参照)
     偽造者が自然の作用の結果を模造するために何の誤りもなしに詳細構造の多様さを利用することは不可能であり,特によく知られるゾルンホーフェンと他の劈頭産出の偽造化石はすべて原始的な方法で偽造されている.例えば,経験豊富な古生物学者さえ翼の上面が雌板(counter-slab)の上に現れることを予想したはずの時代に(fig.5を参照),この偽造者は,底面の鋳型として羽の印象を両方のスラブに発生させるという考えを,どうすれば得られるというのだろうか?

    d) 羽の構に関する態様は1個の標本に限られておらず,すべての標本で完全というわけでもなく,詳細の品質が標本によって明瞭に異なる.そこには羽の構造の保存と腐敗による骨の散乱の明白な関係がある.我々は,羽のその保存状態は以下に挙げるいくつかの要素に依存することを知っている.死骸がどのように腐敗したかというそのことは,それが最終的な休息場所に着いたときに,周囲を取り巻いていた水の化学的および物理的状態,そして下層の堆積の状態そのものを意味する.上記における研究から,今日我々は複雑な要素を含む総合的な状態を明らかにでき,そしてそれは再度の,次の質問に関係してくる.「いかにすれば偽造者は矛盾無く複雑なタフォノミー (taphonomy)を偽造できたのか?」

4. 最後のポイントはアイヒシュテット標本(Eichstätt specimen)につながるもので,それは非常に低質に保存された羽毛――そして一見矛盾して見える驚異的な保存状態の骨格—を示す. 初列風切羽根のほのかな外郭線と尾羽だけが目に見える.しかし,これらの陰影的な特徴は,鳥が化石になり始めたときに羽毛は存在していたことを明確に示している.唯一の質問はこういうことである――初期の堆積(sedimentation)か後期の続成作用(diagenesis)の間に,羽毛は消えたのか? それについて,藻類のマットがデリケートな羽の構造の保存で重要な役割を果たしたと提案された.(RL) 始祖鳥標本はSolnhofen石灰岩の中で異なった場所と異なった層から産出しており(HOWGATE 1985による批判通り,BJPa:264ではなくWELLNHOFER 1974: fig.1を見よ),したがって,我々は合理的に環境と局所的な堆砂の違いを予想でき,従って藻類のマットがアイヒシュテット標本が化石化された時に関与しなかったのは,ありえることである.

 藻類,細菌類,および菌類は頻繁に最近の半水生の動物遺骸を覆い,羽または体毛をコーティングしている. それらが作り出し,そして/または,接合させる堆積物はしばしば周囲の堆積物よりはるかにきめ細かくすばらしいものである.これは,BJP報告書のための――ロンドン標本の羽毛構造が周囲の石灰岩よりきめ細かい堆積物で特徴付けられており ( BJPa: 367により「チューインガム」と比較された),一般にそれは別の層理面(bedding plane)に属するという主張の――説明として役立つかもしれない.

 したがって,骨の周囲の母型と化石の羽毛の下面というきめの細かい部分と粗い部分――しかしそれでもなおきめ細かい――の違いは,自然なものと後で起こったものの2つの理由があるかもしれない:明らかに羽毛の「上に」非常にきめの細かい堆積物がある(ここで言う「上に」は堆積の方向に関してのことであり,それは羽毛の「下部」を保存する!) しかし,また,我々はプレパレーション(*)に由来する滑らかな表面(専門家でない者はそれを「きめの細かい素材」と容易に混同する)を区別しなければならない.

 これらの構造は始祖鳥原標本で解明しにくいもので,一連の薄片しか全ての疑問を解決できない.全く正しいことに,ほとんどの人々は――特に堆積物の違いが偽造者の所業をなにも証明しない場合――始祖鳥のような貴重な化石を切断(sectioning)やその他の破壊を伴う分析方法によって破壊することを躊躇する.

5. また言及されるべき別の論点として,ロンドン標本とベルリン標本は100年以上に渡って科学的施設の所有にあった点がある.この期間に,原標本の数個のキャストが取られた.これはオリジナルの標本が,特にそれらの表面に化学物質の作用を受けたことを意味する.FISCHERとKRUEGER (1979)は,どの程度の頻度でベルリン標本のプレパレーションとキャストを行ったかについて,標本の表面を「化学実験室」と表現することで説明している.どのような場合でも,もし羽毛あるいは羽毛の構造に人為的な追加があったならば,キャスティングとプレパレーションはそれを白日の下に曝すだろう.

6. 最後に,しかし瑣末なことではない(BJPd),著者らは仮定した偽造者のために動機を創作した.この仮説に関して,私たちは,再び化石化された標本の羽毛構造が非常に複雑であることを念頭においていなければならない.ヘーベルラインらは化石から金銭を得る方法を知っており,最も素晴らしく最も簡単である方法でそれを行った.彼らは堆積と化石化の過程を発見し,それを偽造できる程に傑出した知識人ではなかった――堆積と化石化の過程は100年以上後の現在においても解明すべき課題である.(*)そしてBJPdによって彼の仕業と考えられるように,オーウェン(Owen)は共謀者なのか? 彼は有能な形態学者として,新しい化石に非常に正確な記述――特に骨格の要素に関して――を与えた.しかしその記述は、彼が羽毛の特殊な保存状態を鋳型(casts)であると誤解したことを物語っている; これは胴体の左側についての彼の記述が右のものと間違っている(逆もまた同様である)事実によって示される.この誤謬は起こらざるを得ないことであった.なぜなら我々はメインスラブに,後ろからの固体の要素としての骨,しかし下側からの鋳型(casts)としての翼を見ることができるからである! ちょうどHEINROTH(1923)がこの小さな謎を不思議に思っており,それは翼の上側の羽毛の印象がないのに,下面の鋳型(cast)だけがあるという事実から生じていた――我々が見ることができるとおり,もし手の骨が手のひらの鋳型の上に横たわれば,肉は見えなくなる.19世紀の古生物学者は,雄板(main-slab)と雌板(counter-slab)の両方を偽造するために,羽の下側を使用したことは一度もなかったであろう!

7. BJP-作者らが始祖鳥の羽毛に関する彼らの解釈に使用した写真の品質および有用性について議論することは意味をなさない.写真は,別な方法で特定するのが難しいかもしれない詳細を明らかにすることにおいて,非常に重要な助けとなる.しかし(そうしなければならない)深刻な理由があるのはまれなケースである――例を挙げれば,原標本が紛失している場合,研究作業は写真に基づいてのみ行われる.BJPの図版とRLのプレートを比べて貰いたい.そして古生物学的な研究は「過去に利用可能な技術で制限された(BJPa: 265)」とあるが,何が限度なのか見て頂きたい.

 我々が偽造を信じることができない理由はまだ多くあるが,しかし:
 偽造仮説の印象的な議論に,何某かが始祖鳥の全ての特徴を持った鳥の羽毛をうまく偽造できたとしたらそれはSolnhofen石灰岩の材料を使用することによったのだ,というものがある.始祖鳥の羽毛の保存方法についての未発表の実験(1976-78)の間,鳥の翼の鋳型(cast)を始祖鳥のものと同じにしようとしたとき,私は失敗した.私は,始祖鳥原標本と見紛うようなキャスト(casts)か押印(impressions)を作成するのは(将来的にも)可能にならないと予測する.再現可能なのは羽を堆積物に埋め込む最初の段階のみであり,その後の段階は再現できない.



 全体から何を結論づけることができるだろうか?
 大量の文献と研究から知識を導入しないことは,確かに新しい仮説と珍しい議論を発見することの助けとなる.しかし,ひとたび新しい仮説が形成されたなら,文献の批判的な検証と基礎的な資料に基づく研究だけが,重大な理論を確立することができる.(BJPの)出版に入る前に,BJPの著者らは明らかに写真しか研究していなかった.古典的,そして現代的な古生物学の知見を良く説明できない事に関して,BJPの著者らによる声明が全くない――そして我々には,個々に古代の鳥として,羽毛を持った爬虫類・始祖鳥を作りだした偽造者の創造活動を想定する必要がない.しかしながらポピュラーサイエンスの論争では,(一部)科学的なそれを伴った非科学的な論旨に対抗するのは常に困難である――特に,宇宙論または信仰(あるいはその両方)を取り入れ,常識と科学的な経験を無視するときにはそうである.この議論では,始祖鳥と進化に関する教条的な論旨から自由になりたいと思う.我々の科学的業績は経験,知識,事実,およびアイデアに依存しており,これらを純粋なファンタジーに置き換えることが許されるのは物語の話者(story-tellers)のみである.

 したがって,我々にできることはこう尋ねることだけである.

 BJP-仮説は冗談か?
 SF小説か?
 この論文に相反する重大な科学的襲撃か?
 ――あるいはそれは通俗的なおとぎ話の新しいバージョン――「昔々,マザー・ケアリーが宇宙から来た始祖鳥のために彼女の鶏をむしっていました」と私たちに話すがごとき――に過ぎないのだろうか?


【参考文献】

FISCHER, K. & KRUEGER, H.-H. (1979): Neue Praparationen am Berliner Exemplar des Urvogels Archaeopteryx lithographica H. V. Meyer, 1861. - Z. geol. Wiss., 7(4): 575-579; Berlin.

HELLER. F. (1959): Ein dritter Archaeopteryx-Fund aus den Solnhofener Plattenkalken von Langenaltheim/Mfr. - Erlanger geol. Abh., 31: 25pp., 15 pl, 2 fig.; Erlangen.

HOWGATE, M. E. (1985): Archaeopteryx counterview - Brit. J. Photogr., 132 (29. 3. 85): 348; London.

HOYLE, F. (1958): The Black Cloud. - after: SCHWARZBACH, M. (1983), Eiszeit-Probleme. Diesmal gelost von Fred Hoyle. - Naturwiss. Rdsch., 36 (5): 219-222; Stuttgart.

HOYLE. F.. WICKRAMASINGHE. N. C. & WATKINS, R. S. (1985): Archaeopteryx. - Brit. J. Photogr., 132 (21 . 6. 85): 693-695, 703, 3 fig,; London. (BJPd)

OSTROM, J. H. (1972): Description of the Archaeopteryx spec}men in the Teyler Museum. Haarlem. – Proc. K. nederl. Akad. Wet. (B), 75 (4): 289-305; Amsterdam.

RIETSCHEL, S. (1985): Feathers and wings of Archaeopteryx, and the question of her flight ability. - This volume.
WATKINS, R S.. HOYLE. R.. WICKRAMASINGHE. N. C . WATKINS, J., RABILIZIROV, R. & SPETNER, L. M (1985a): Archaeopteryx - a photographic study. - Brit. J. Photogr., 1 32 (8. 3. 85): 264-266, 5 fig.; London. (BJPa)

WATKINS. R. S., HOYLE, F., WICKRAMASINCHE, N. C., WATKINS. J., RABILIZIROV. R. & SPETNER, L. M. (1985b): Archaeopteryx- a further comment - Brit. J. Photogr., 132 (29. 3. 85): 358-359, 367, 3 fig.; London. (BJPb)

WATKINS, R. S., HOYLE. F., WICKRAMAS[NGHE, N. C., WATKINS, J., RABILIZIROV, R. & SPETNER, L. M. (1985c): Archaeopteryx - further evidence - Brit. J Photogr., 132 (26 4. 85); 468-470, 3 fig ; London. (BJPc)

WELLNHOFER. P. (1974): Das funfte Skelettexemplar von Archaeopteryx. - Palaeontogroaphica, A 147: 169-216, 13 Abb., Taf. 20-23; Stuttgart.


原文:
Rietschel, S. 1985. False forgery.
In M. K. Hecht, J. H. Ostrom, G. Viohl, and P. Wellnhofer (eds.).
The beginnings of birds, pp. 371-376.
Proceedings of the International Archaeopteryx Conference Eichstatt 1984.
訳者注
【訳者注】

メインスラブ(main-slab)
始祖鳥産出地のゾルンホーヘンでは化石は石灰岩の板に挟まる態様で産出するが,これを剥がす際に得られる上下2枚のうちの1枚を指し,普通はポジ側をこう呼ぶ.本稿では「雄板」と訳した.「主板」という呼称もある.

カウンタースラブ(counter-slab)
前述したメインスラブの反対側の板.その性質上.メインスラブの鏡面構造となる.本稿では「雌板」と訳した.「副板」という呼称もある.

タフォノミー (taphonomy)
化石生物の死因および,その遺骸が化石となる過程を研究する古生態学の一分野.

続成作用(diagenesis)
堆積物の堆積からそれが鉱物化していくまでの一連の作用.

プレパレーター(preparator)
化石標本をクリーンナップする専門技術者.

プレパレーション(preparation)
化石標本のクリーニング作業.