七つの海のティコについて
作品の概要 |
海洋冒険アニメーション『七つの海のティコ』についての紹介です。 |
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『七つの海のティコ』について |
11歳の少女ナナミは、父親・海洋生物学者のスコット・シンプソンとその友人のアル・アンドレッティ、そして親友であるシャチのティコといっしょに、4歳のときから七つの海をめぐる旅をつづけています。かれらの生活の場である老朽船・ペペロンチーノ号は海洋調査船として活動していますが、その航海のほんとうの目的は、伝説の動物ヒカリクジラの探索をおこなうことでした。 『七つの海のティコ』は、『現代を舞台にした海洋冒険アニメーション』という、ひじょうに珍しいジャンルの作品です。わたしの知るかぎり、これに類似した設定のアニメーション作品はありませんし、今後このジャンルの作品が作られる可能性も少ないでしょう。 この『~ティコ』は、作品の空気というべきところで、ほかの作品にはとうてい真似できないものをもっていました。この作品の舞台は、わたしたちが本で見知っていたり、その気になれば実際に旅したりできる、この現代の地球です。この作品のみせてくれる果てしない大海原は、わたしたちが『行けるかもしれない世界』でもあったのです。 照りつける強い日差し、焼け付くような甲板で浴びる潮風、エンジンルームのオイルの匂い、海の中を遠く伝わるクジラの歌、切りつけるような極地の空気と鋭く光る満天の星空、低速回転でせきこむディーゼルエンジン――こういうものに胸の高鳴りを感じることのできるひとなら、きっとこの作品を気に入るのではないかと思います。 最後になりましたが、わたしの好きな小説『鷲は舞い降りた』の中で、ある登場人物がこういうことをいっていました。 『七つの海のティコ』は、かれらのための物語です。 |
同作品の製作と放映について |
『七つの海のティコ』は、日本アニメーションによって製作された、全39話の海洋冒険テレビアニメーション作品です。 本作は、歴代の『世界名作劇場』作品のなかで唯一の、原作を持たないオリジナル作品です。シリーズの構想は広尾明氏の原案に拠っています。放映開始からしばらく後に、氏自らの手によるノベライズが出版されていますが、これは『七つの海のティコ』の小説版であり、同作品の原作ではありません。 本放送はフジテレビの『ハウス世界名作劇場』枠でおこなわれ、第31話をのぞく38話が1994年1月16日~12月18日に放映されています。38話という数字は1年間のシリーズとしては少なく感じますが、これは放映当時において『~名作劇場』枠のおよそ4回に1回が野球中継などの特番にあてられていたためです。 本作は『平成6年度中央児童福祉審議会特別推薦』を受賞しており、番組中盤以降のオープニングにその旨が表示されています。 |
七つの海のティコ・第1話のあらすじ |
スコット、アル、ナナミを乗せた海洋調査船ペペロンチーノ号は、サンフランシスコ沖に停泊していました。 アルは潜水球スクイドボールで海に潜り宝捜しに興じていましたし、スコットはブリッジで何事かを考えています。いつもどおりのペペロンチーノ号でしたが、違っていたことがひとつありました。ナナミにとっての気がかりは、大の親友であるシャチのティコがここ数日のあいだ、姿をあらわしていないことでした。 そのころ、サンフランシスコ湾に一匹の巨大なホオジロザメが迷い込んできました。それを目撃したイギリス有数の石油資本、メルビル財閥の令嬢シェリルは、サメに賞金をかけ、『冒険を求めて』自らサメ退治に出港しました。 しばらくして、ホオジロザメを探索中のシェリルがサメらしきものを発見しました。しかしそれは数日ぶりに姿をあらわしたティコの姿だったのです。シェリルはティコをライフルで撃ちそうになりますが、スコットとアルの機転によってペペロンチーノ号がシェリル船の針路をふさぎ、ティコとナナミは事無きを得ました。この一件もあり、ペペロンチーノ号一行は、パナマ運河経由でカリブ海に向かうことにしました。賞金稼ぎのシャーク・ハンターたちがティコにおよぼす危険を考えてのことです。 翌日、メルビル財閥の潜水艇をつかって再びサメ退治に向かったシェリルですが、途中電気系統に起こったトラブルにより、潜水艇は海底に沈んだまま行動不能になってしまいます。そして擱坐したシェリルの潜水艇に、例のホオジロザメが襲いかかってきました。 そこを通りかかったペペロンチーノ号一行はシェリル艇の救命ブイを発見し、アル、スコット、ナナミとティコが救助に向かいます。戦いの結果、ティコに撃退されたホオジロザメは外海に泳ぎ去っていき、シェリルの潜水艇は無事救助されました。自分の求めていたものはペペロンチーノ号にこそあるのではないかと、このときシェリルは思います。 一段落ついたペペロンチーノ号の船上では、スコットが、ティコがくわえていた不思議な骨を調べていました。それは淡い光を放つ、クジラの骨でした。スコットが7年のあいだ捜し求めているヒカリクジラ――それは実在するのでしょうか。 そして同じころ、正体不明の科学者が、トロンチウム反応を検出したという報告を受け、口元に笑みを浮かべていました。この科学者は何者なのか、そして『トロンチウム』とは――。 |
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