|
長すぎて起こられたので分割しました。続きです。
>現に Mayr らの論文でも「鳥類の単系統性に挑む(challenges the monophyly of Aves)」という表現を用いており,
>必ずしも厳密に分岐分類にしたがってはいないようです。
上記の「鳥類の単系統に異議を唱える」という表現は内容梗概の最後の行ですね。
( 内容梗概 http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/310/5753/1483 )
結論から言いますと、彼らの論文は分岐分類の手法(形質の列挙、最節約法)に基づいて書かれています。
決して進化分類的(※3)に側系統を認める意味で書かれたわけではありません。
また、論文での彼らの結論は新聞記事とはまったく逆で「ディノニコサウルス類の全てあるいは一部が鳥類に含まれる可能性もある」ということです。
(恐竜パンテオンさんの記事:http://www.dino-pantheon.com/backyard/news/20051202Archaeopteryx.html)
では前述の「鳥類の単系統に異議を唱える」とは何を言っているかということを下記で説明します。
(1)分岐図1
ディノニコサウルス類A
├ シノルニトサウルス
└ ミクロラプトル
ディノニコサウルス類B
├ 始祖鳥、ラホナヴィス(※2)
├ 孔子鳥、エナンティオルニス類
└ ヘスペロルニス類、イクティオルニス類、現生鳥類
つまり、この場合は「ディノニコサウルス類B」を基点とする単系統です。
(2)分岐図2
ディノニコサウルス類C(DEFの共通祖先)
├ ディノニコサウルス類D
│ └ 始祖鳥、ラホナヴィス
├ ディノニコサウルス類E
│ ├ ミクロラプトル
│ └ 孔子鳥、エナンティオルニス類
└ ディノニコサウルス類F
└ ヘスペロルニス類、イクティオルニス類、現生鳥類
※論文の筆者がこういうクラドグラムを書いているわけではありません。(念のため)
分岐分類上の鳥の定義は「始祖鳥と現生鳥類の直近の共通祖先(この場合はディノニコサウルス類C)から派生した全ての種」ですから、(2)の場合はディノニコサウルス類D,E,Fおよびミクロラプトルが「鳥」ということになり、(1)で言うところの単系統ではなくなります。
【注釈】
※1 始祖鳥の含気化(pneumatization)
このサイトができて1年目くらいのニュースでした。(『ネイチャー』1998年10月24日号)
※2 ラホナヴィス
白亜紀後期のマダガスカルから産出したラホナヴィス(_Rahonavis ostromi_)という古鳥類がいまして、これは全体的に始祖鳥によく似ているのですが、ディノニクスのように第2指が自由に回転するのです。今回の発見は、始祖鳥とラホナヴィスの類縁関係をより強化されたことになります。
http://www.dinoruss.org/de_4/5c51e11.htm
>Of particular interest is the sickle-claw on the second toe - a feature characteristic of dromaeosaurids and troodontids.
※3 進化分類法(Evolutionary method)
分岐分類は「系統を基準とする」分類法で、進化分類は「形質を基準とする」分類法です。
大雑把に言えば、系統分類は「分岐」ごとに分類するのに対して、進化分類は「このレベル(あるいはこの条件)に達したら爬虫類」というような分類方法です。進化分類は動物シンプルに分類できる利点はありますが、別々の道筋をたどってそのレベルに達した生き物を一まとめにしてしまう危険を持っています。実際に爬虫網がそういう悲惨な状態ですし(現生のものに限ってもムカシトカゲとカメとヘビ・トカゲとワニはそれぞれ別系統で「爬虫類」となったと考えられます)、哺乳類では素性不明な動物はとりあえず食虫目に分類されます。
|
|