[始祖鳥生息地へ]

ツチボタルについて
(地下秘密コンテンツ)


 秋月ご夫妻のために秘密裏に作成したページです。


[始祖鳥と仲間たち(目次)へ] [始祖鳥生息地へ]
『ツチボタルについて』 1998年2月19日執筆


 ツチボタルは,ニュージーランドをはじめとするオセアニアの洞窟や薮のなかに生息する,発光性の昆虫です。
 『ホタル』と名づけられていますが,私たちが日本で目にする甲虫のホタル(鞘翅目)とは系統的に遠く,アブ,ハエやカと同じ,双翅目に分類されます。また,発光器官を持ち,実際に光るのは幼虫のみです。つまり,かれらの光は性的アピールではなく,捕食対象をおびきよせるための切実なものなのです。そして,多くの場合捕食対象となるのは,彼ら自身の成虫でもあります。
 本種はニュージーランド各地,タスマニア,オーストラリア本土の一部に生息していますが,個体群としてはテ・アナウやワイトモの洞窟のものがもっとも有名です。

 もし機会があったなら,ぜひ,ここを訪れてください。
 洞窟の天井一面に,静かな満天の星空のごとく,青白い光をはなっているかれらに出会うことができるはずです。

※なお,図版は「THE NEW ZEALAND GLOWWORM(参考文献)」から引用したものです。

Habitat of glowworms(Arachnocampa )  ツチボタル属(Arachnocampadae)の分布です。 ニュージーランドに一種(Arachnocampa luminosa),タスマニアに一種(Arachnocampa tasmaniensis),そして,オーストラリア本大陸のクイーンズランド州と(Arachnocampa flava),ニューサウスウェールズ州に(Arachnocampa richardsae),それぞれ1種が生息しています。
Incubation of glowworm(Arachnocampa luminosa)  孵化中の幼虫です。産卵から孵化までの期間は20日~24日です。  ツチボタルのライフサイクルは18ヶ月(!)で,かれらはそのほとんどの期間を幼虫の姿で過ごします。
Larva of glowworm(Arachnocampa luminosa) Larva of glowworm(Arachnocampa luminosa)  右の写真はは巣の中にいるツチボタル幼虫の実写,左はその解剖図です。実体写真でもわかるとおり,幼虫の体には色素がないため,内部器官がすけてみえます。体の後端に発光器官があり,これで獲物をおびき寄せます。
 この図版には書かれていませんが,幼虫の体長は30mm~40mmです。
 かれらの移動能力は限定されていますが,成虫になるまで20cm~30cmを移動することができます。
 かれらの発光波長は490nmにピークがあり,これは色相で言うと「緑色に近い青」となります。
Pupa of glowworm(Arachnocampa luminosa)  ツチボタルの蛹です。15mm~18mmの大きさです。  羽化までは12~13日を必要とします。

Adult of glowworm(Arachnocampa luminosa)  成虫です。左が雄,右が雌です。成虫には口がなく,食べ物をとりません。
 その多くは幼虫の餌になります。下記の表は成虫の体長,翼長を生息環境別にまとめたものです。洞窟に生息する個体群のほうが若干大きめであることがわかります。

 MaleFemale
 BushCaveBushCave
Body length9-1112-1510-1313-16
Wing length6-77-8.57.5-99-12
 millimetres

nest of glowworm(Arachnocampa luminosa)  巣の中にいるツチボタルの幼虫です。
 すだれ状にぶら下がっているのは,幼虫の体内から分泌される糸で,玉のように膨らんでいる箇所は粘着性の液体でコーティングされています。
 これは光におびきよせられてきた獲物を捕らえるときに,糊の役割を果たします。
Larva of glowworm(Arachnocampa luminosa)  ツチボタルの巣を上記の図版の角度で撮影してみました。細部がつぶれてしまいましたが,巣の全体的なたたずまいをイメージできるでしょうか。

【参考文献】
THE NEW ZEALAND GLOWWORM(FREDERIKSON:Waitomo cave museum sociaty)
※図版は全て上記からの引用です。



[始祖鳥と仲間たち(目次)へ]
始祖鳥生息地へ