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七つの海のティコ
憶測事典

『七つの海のティコ』の憶測解説コーナーです。
筆者の推定や偏見が大量に混入しています。

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トロンチウム
 『トロンチウム』はヒカリクジラが生み出す、謎の物質です。 これがあったからこそ、スコットによるヒカリクジラの探索が、GMCやルコント博士と競合することになったわけで、『七つの海のティコ』のプロットに深くかかわっているキーワードでもあります。

 さて、トロンチウムがいまだ発見されていない元素だとしたら、原子番号は115以降になるのでしょう。(1999年7月15日現在 ※1)だとすると――原子番号が大きいからといってかならずしも壊れやすい物性というわけでもないらしいのですが――素人考えでは、おそらくトロンチウムの半減期はミリ秒、マイクロ秒単位のような気がします。
 生成された直後にアルファ線やらベータ線を大盤振る舞いしたあげく、あっというまにトロンチウム以外の元素(鉛かなにか)に化けてしまったのではお話になりません。

 わたしの説は、トロンチウムとは、ヒカリクジラを宿主とする発光性の微生物ではないかというものです。植物や菌類の世界では『~ウム』という学名は、さほど珍しくありません。また、寄生者と宿主の関係ということで、生物進化にかかわっているというあたりについても、遺伝情報の水平移動を進化の原動力とする説(ウイルス進化論など)を引き合いに出せばSF的な理論武装ができそうです。

 たしかに本編の中で、はっきり『元素』と言われているシーンはありますが、英語にしてみれば『元素』と『成分』は同じ"element"ですし、GMCが機密保持のために『トロンチウム』の正体を欺瞞していた可能性もあります。

 第一時世界大戦下の英国でも戦車のことを『水槽(タンク)』と称していましたし、第二時世界大戦下の日本でも、特攻兵器『桜花』を『マル大部品(大の字をマルで囲む)』と呼んで欺瞞していた例もありますから、まったく的外れな推論というわけでもなさそうですが、どんなものでしょう。

【注釈】
※1 超重元素の合成
 ネイチャー1999年7月15日号によると、ロシアのフレロフ核反応研究所のA V Yereminたちは、原子番号114の超重元素の合成に成功したという報告がありました。この同位体の半減期はおよそ5秒ですが、これは『超重元素の世界では限りなく長い時間』であるそうです。

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